蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

梟が鳴く森で 第9回


9月22日

星の子学園からの帰り、三平君がいっしょにトイレへ行こうと言いました。
僕はあんまり行きたくなかったけれど、三平君が無理矢理言うので仕方なくついて行きました。駅の上のトイレです。
僕たちの他には誰もいませんでした。

大の方のトイレにいっしょに入ると、三平君はオチンチンを出してナメロと言いました。
僕はいやだと言いました。嫌だお、嫌だお、と何度も言いました。
三平君は、おっかない顔をして、いいからナメろ、ナメないとぶんなぐるぞ、と言いました。僕はこわいし、逃げられないし、お父さあん、お母あさん、助けて、助けて、嫌だお、嫌だお、と何度も叫びましたが、誰も助けてくれませんでした。

とうとう僕は三平君のオチンチンをナメさせられました。とてもいやな臭いでした。吐き気がしました。
いやだ、いやだ、死にたいおう、と、僕は泣きましたが、三平君は許してくれませんでした。もっとナメロと言いました。またナメました。変な味、気持ち悪い味がしました。

やっと三平君はトイレのドアをあけて僕を出してくれました。絶対に誰にも言うなよ、言ったらひどい目にあわせるぞ、と三平君は言ったので、僕は、分かったおう、誰にも言わないおう、と、泣きながら約束しました。

家に帰ったら、お母さんが、岳君顔色悪いね。どうかしたの。と聞きました。
僕は、どうもしないおう、と答えました。何もなかったおう、と言いました。お母さんは黙って僕の顔をじっと見ました。

僕は、駅のトイレが嫌いです。三平君が嫌いです。あんな奴は死んでしまえ。



♪1か月分の日経朝日が1巻きのトイレットペイパーに換わる金曜日 茫洋