蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

2008-02-01から1ヶ月間の記事一覧

2008年亡羊如月詩歌集

♪ある晴れた日に その22雪深しわれは昭和の子供なり 立春哉窓一面乃銀世界 ギョウザより大事な問題があると思いつつ中国製の餃子を喰らうぴらかんさ千両の順に食われけりその日の午後西郷どんの首の如き橄欖樹の枝を斬った生きておっても死んでおっても空の…

自閉症を知る 第4回

♪バガテルop46自閉症には3つの大きな特徴があり、その悲しい特徴はだいたい3歳までに現われます。 その3つの特徴とは、1) 人とうまく付き合えない。 2) 人とうまくコミュニケーションがとれない。 3) 奇妙なものに対してこだわりがある。に大別されます…

続々 自閉症とは何だろう

♪バガテルop45前回述べたように自閉症の人は知恵遅れなど別の障碍をともなうケースも多く、また人によって現われ方が違っていたり、同じ人でも成長していくうちにその症状が変化したりします。また自閉症のある特徴は顕著でも、別の特徴はあまり発現しない人…

続 自閉症とは何だろう

♪バガテルop441943年にアメリカのカナーという精神科医が11人の子供の特徴をまとめて世界ではじめてその障碍についての研究成果を発表しました。これが世界で初めての自閉症についての報告です。しかしカナー以降二十年ほどは自閉症は主に「情緒の障碍…

スピルバーグの「シンドラーのリスト」を観る

照る日曇る日第102回激突、ジョーズ、未知との遭遇、1941、E.T、トワイライト・ゾーン、カラーパープル、太陽の帝国、インディジョーンズ、ミュンヘンと常に話題作を撮り続けてきた世界の人気監督の93年の作品である。彼の本領はなんといってもインディジ…

自閉症とは何だろう

♪バガテルop43自閉症が「病気」や「性格」ではなく生まれながらの「脳の障害」であることは、近年になって世間から少しずつ理解されてきたようです。30年前の神奈川県立こども医療センターのように、「親の育て方に原因がある「母原病」です!」と私たちの…

古くて暗いモノクロ映画を見る

照る日曇る日第102回「陽のあたる場所」はセオドア・ドライサーの原作を51年にジョージ・スティブンスが映画化したもの。田舎育ちの青年がふとしたはずみで隣の女と関係し妊娠させるところから悲劇が始まる。そのまま地味な家庭を築けばよかったろうに、偶…

萩原延壽著「陸奥宗光下巻」を読む

照る日曇る日第101回陸奥宗光は明治10年の西南戦争の際土佐立志社系の一部が企てた政府転覆、要人暗殺計画に陰謀に加担したかどで逮捕され、禁獄5年の判決を受けて明治11年9月から15年12月まで山形と仙台で獄中生活を送ったが、その間独学の英語で…

愛犬ムク六周忌

♪ある晴れた日に その21OH!アデュー 人語をはじめて口にして 老犬ムクは いま身罷りぬネンネグー 阿呆ムク 可愛ムク 処女のムク 盲目のムク いま昇天す鎌倉の 山野を駆けし細き脚 そのマシュマロの足裏を ぺろぺろ舐めおりここで跳べ! ザンブと飛び込む…

市川崑追悼の「細雪」を観る

照る日曇る日第100回先日私の大好きなマイミクのぽんぽこはんが映画「細雪」について書いておられたので私も負けてへんでとぐあんばってDVDで見てみたんや。谷崎はんの原作もそら素晴らしいけど、さすがに市川崑はんの代表作に恥じへん代表的な日本映画ど…

見捨てられた墓地

鎌倉ちょっと不思議な物語100回ここは私が住んでいる十二所のガソリンスタンドがある交差点の、すぐ袂にある小さな墓地です。鎌倉駅から八景方面のバスに乗って、まっすぐ行くと鎌倉霊園、右に曲がると鎌倉逗子ハイランドという交通の要地なのに、誰も見向き…

映画「アマデウス」を視聴する。

♪音楽千夜一夜第33回先日かつて大ヒットした映画「アマデウス」がNHKのBSでデイレクターズ・カット版という長尺版で放送されたので久しぶりに再見したのだが「ドン・ジョバンニ」の序曲の冒頭の和音から始まり、k467のピアノ協奏曲のアンダンテで終わるこ…

蔵で暮らす

勝手に建築観光28回&鎌倉ちょっと不思議な物語99回鶴岡八幡宮の東側の小道に気になる蔵があります。外壁の周囲は緑の分厚い蔦に覆われ、四季折々の変容を見せくれます。昔ながらの蔵なのですが、その中に住んでいる人がいるのです。私は駅から家までの帰り…

萩原延壽著「陸奥宗光上巻」を読む

照る日曇る日第99回萩原延壽は朝日新聞に連載したアーネスト・サトウの伝記「遠い崖」で知られる歴史家であり、かの大仏次郎に優に比肩する当代一流の評伝作家でもあった。その精緻を極めた資料の渉猟と長期にわたる膨大な調査研究からもたらされた知見に基…

蕪村のアイドルをさがせ

♪バガテルop42俳人にして画家の与謝蕪村は、一休のように65歳になっても若い女たちとうたを詠み交わし、精神と肉体の愛の生活にふけっていた。らしい。「蕪村七部集」の「花鳥篇」のなかの「花櫻帖」を見ると彼女たちの名前と俳句が載っている。おそらくは…

レイモンド・カーヴァー著「象」を読む

照る日曇る日第98回これは村上春樹が翻訳したレイモンド・カーヴァー最後の短編集である。レイの短編の特徴は見事に完成されたばかりのキャンバスをその瞬間にナイフでざっくりと切り裂いたような放埓なラストであろう。表題作の象における稲妻のごとく疾走…

続・元コピーライター、かく語りき

♪バガテルop42&照る日曇る日第97回消費者に商品を売る一介のテクノクラートであり、商品の宣伝の召使であるはずの広告文案作成屋が、なにを勘違いしたのか社長に代わっておのれの個人的な思想や感慨を語りはじめ、天下の公器を私物化し、あまつさえ1行のコ…

元コピーライター、かく語りき

♪バガテルop41&照る日曇る日第96回宣伝会議という出版社から最近発売された「コピーがひもとく日本の50年」という2095円もする分厚い本を頂いた。私はかつてコピーライターという仕事をしていたことがあり、宣伝会議社が主催するコピーライター講座の…

DVDには寿命がある!?

♪バガテルop409日の旭日新聞の夕刊トップに「DVDディスク寿命格差」という大見出しで、いま使われているDVDディスクの中には数年で劣化してデータを読み出せなくなるかもしれないと警告する記事が出ていた。DVDディスクなら孫子の代まで大丈夫と思…

小島信夫の「月光」を読む

照る日曇る日第95回依然としてさっぱり仕事が来ない私は、またしても小島信夫の小説を読んで、みずから無聊を慰めることしかできない。私が思うに、この人はまあ「書く自動機械」に似たようなものであるなあ。小島信夫のなかにもう一人の小島信夫、あるいは…

40年前の幻の「トリスタンとイゾルデ」

♪音楽千夜一夜第32回冬来たりなば春遠からじ。私はその春の足音に耳を澄ましながら、もはや過去の遺物と化しつつあるヴィデオテープに収められたクラシック音楽の演奏を少しずつDVDに変換に変換している。昨日は1967年に初来日したピエール・ブーレー…

古井由吉著「白暗淵」を読む

照る日曇る日第94回それは夢なのか、それとも夢見る前なのか、夢を見た後の想いなのか、と著者に尋ねても答えは返ってこないだろう。とりとめのない父母未生以前の記憶、突然の爆撃と機銃掃射、一瞬にして町と川と人間の景色を消し去った戦争の悪夢、よみが…

冬の自画像

♪バガテルop39&鎌倉ちょっと不思議な物語98回 駅前を歩いていたら裏駅と表駅を結ぶ地下道に市内の中学生の自画像が張り出してあった。精密なモノクロームの描線が写実的でいずれも巧みなクロッキーであるが、全体の印象がどことなく暗く、陰鬱であることが…

常楽寺詣

鎌倉ちょっと不思議な物語97回大船という地名は3代将軍実朝が宋に渡航する大きな船を材木座あるいは由比ガ浜で作らせたことに因んでいると勝手に想像していた。 ところがいつもお世話になっている「鎌倉の寺小事典」によれば、ここ大船の常楽寺の山号である…

萩原延壽著「馬場辰猪」を読む

照る日曇る日第93回&勝手に建築観光28回馬場辰猪は「明治の東京」の著者で西脇順三郎によって“日本のアナトール・フランス”と称された明治時代の文人馬場孤蝶の兄で、嘉永3年1850年土佐中島に生まれ、明治21年1888年米国フィラデルフィアで結核…

我輩は犬である。

♪バガテルop38名前は探偵犬クロである。さる探偵会社で大切に育てられた現役の探偵犬である。生まれながらに探偵犬として訓練されているから、尾行や張込みはもちろん、人捜し、また同類項の動物捜しにも大活躍、探偵犬ならではの類い稀な能力を遺憾なく発揮…

降れ降れ小雪

けふ鎌倉に初雪が降った。♪雪深しわれは昭和の子供なり 亡羊

ねじめ正一著「荒地の恋」を読む

照る日曇る日第93回何の期待も予備知識もなしに読んだのですが、とてもよく出来た小説なのでいたく感心いたしました。著者はまるで三遊亭円生の落語の一席のようによどみなく「詩人の恋」と荒涼たる「冬の旅」を一気呵成にカタって聞かせるのです。それは詩…

小島信夫著「各務原、名古屋、国立」を読む

照る日曇る日第93回 小島信夫の小説は普通の小説とは違う。あきらかに違う。では普通の小説なんかあるのかと聞かれたって、素人の私がここでにわかに普通の小説の定義をすることなんかてんでできないが、そもそも普通の小説は、作者の語りたいテーマが最初に…