蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

2014-01-01から1ヶ月間の記事一覧

「続なにゆえに」~ある晴れた日に第198回

西暦2004年睦月蝶人花鳥風月狂歌三昧 なにゆえに「ごちそうさん」を日に2回も見るのかそれほど暇人ではないはずなのに なにゆえに同じ水曜日に休むのか向かい同士のイタリ アンレストラン なにゆえにかくまで美味なるや藤沢爽風舎がつくる安価な食パン …

2001年~2014年のファッション・トレンドを振り返る その1

ふぁっちょん幻論 第80回 01秋冬「米同時テロの影響」でNYコレ中止。ジュリアーニ市長、ラルフローレンなど参加して「ファション・フォー・アメリカ」キャンペーン開始。 マンハッタン・チャイナタウン付近の縫製業に解雇吹き荒れる。 01冬「コクーンニン…

クイケン&ラ・プティット・バンドBOⅩ10枚組を聴いて

音楽千夜一夜第323回 正直いうてシギスヴァルト・クイケンとその一党の演奏に感動したことは、あの怪異な顔つきのせいもあって一度もないのですが、例によって1枚276円也のコスト・パフォーマンスの良さに惹かれて、ついつい衝動買いしてしまいました…

すべての言葉は通り過ぎてゆく 第2回

西暦2013年葉月蝶人狂言畸語輯 さすがは「徹子の部屋」だ。もっぱら黒柳徹子が喋りまくっている。 全国津津浦浦まで張り巡らされている安倍自民党のポスターをはがせ。顔は笑っても眼は笑っていないあの虚ろな表情はそうとう不気味だし、そもそももう参…

ヴォルフガング・リーベンアイナー監督の「菩提樹」「続菩提樹」をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.618 あの有名なトラップファミリーの自伝を1956年に映画化した西ドイツ作品で、私は後年の「サウンド・オブ・ミュージック」よりこちらをとる。ジュリー・アンドリュースよりルート・ロイヴェリクのほうが圧倒…

夢は第2の人生である 第3回

西暦2013年睦月蝶人酔生夢死幾百夜 70)中国の戦地で孤立した私たちは、手榴弾を投げ尽くしてしまった。しかたなく地の果てまで逃亡すると雪が激しく降って来た。その場にうずくまって雪がやむのをまったが、しばらくして私はとうとう梶上等兵になった。…

K義兄 ~「これでも詩かよ」第61番

ある晴れた日に第197回 新宿駅西口のいちばん代々木に近いトイレから、下のボタンをはめながら出てくるK義兄さんと出くわした。 「おお」、と「おお」、「久しぶり」と「お久しぶり」とが期せずしてぶつかった。 折しもラッシュアワーで大混雑する駅構内…

アルフレッド・ヒッチコック監督の「逃走迷路」をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.617 原題は仏語でサボタージュ。敵国のスパイが自国に紛れ込んでいるのでそれをやっつけるというキナ臭いお話ですが、にもかかわらず映画の自由さ、楽しさ、面白さが120%発揮されたヒッチの傑作です。 ヒッチの演…

セルジオ・レオーネ監督の「夕陽のガンマン」「続夕陽のガンマン」をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.615&616 イタリアンで料理したマカロニ・ウエスタンは本番ハリウッドの西部劇の不振につけこんで大ヒットしたようだが、演出よりもタイトルデザインや音楽によるB級シネマ的味付けで関心を呼んだのではなかろ…

ロバート・スティーヴンソン監督の「メリー・ポピンズ」をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.614 どうにもミュージカルとミュージカル映画はどこがばかばかしいのかよく分からないくせにばかばかしくて見る気にもならないが、でもまあ我慢してみてしまったわけだが、思うにかの有名な「チムチムチエリ」の歌…

ダリル・F・ザナック製作の「史上最大の作戦」をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.613 ご存知連合軍のノルマンディー上陸作戦を描いた一大ドキュメンタリー風歴史映画である。 この作品はなんと4人の映画監督を使っているが、それらを一手に束ねている実質的な監督は、あのジョン・フォードも泣か…

HAPPY BIRTHDAY TO YOU!~「これでも詩かよ」第60番

ある晴れた日に第196回 月曜から金曜までは障がい者ホームで過ごし、土日は自宅で暮らす君。 土曜日はミニストップでお弁当を買って、自販機でお茶を買ってから、家中の100円玉を製造年別に整然と並べる君。 日曜日にはミニストップでお弁当を買ってか…

プルースト著・吉川一義訳「失われた時を求めて6」を読んで

照る日曇る日第651回 全14冊の真ん中手前の1冊です。 主人公の「私」がヴィルパジリ夫人のサロンに出入りするようになり憧れのゲルマント公爵夫人と淡い交わりを結びようになるのですが、ドレフェス事件に興味のある一握りの奇特なご仁を除いて、おお…

ドナルド・キーン著作集第9巻「世界のなかの日本文化」を読んで

照る日曇る日第650回 キーン翁の講演「世界のなかの日本文化」、司馬遼太郎との対談「日本人と日本文化」、「世界のなかの日本」を3本柱に、安部公房、梅棹忠夫、井上ひさし、星新一、山崎正和、芳賀徹、小西甚一、辻邦夫との対談をおまけにつけたボリュ…

パンツと人世~「これでも詩かよ」第59番

ある晴れた日に第195回 パンツをはけば、君は、もっともらしい君になる。 「やあこんにちは、ごきげんよろしゅう」 「お砂糖は1杯にしますか、2杯にしますか?」 とか、なんとか言っている。 パンツを脱げば、君は、とつぜんいやらしい君になる。 「良…

英EMI盤「ザ・グレート・オペラズ~ヴェルディ主要オペラ全曲集」を聴いて

音楽千夜一夜第322回 つい最近消滅した英EMI盤によるヴェルディ・オペラ全集35枚組CDを聴き終わりました。 この1枚153円也の超廉価版ボックスセットは、全集ではありませんが、ヴェルディの代表的な16のオペラ作品が収録されているので、彼の記…

熊谷久虎監督の「智惠子抄」をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.612&鎌倉ちょっと不思議な物語第309回 いよいよ原節子特集が終わりに近づき、満員御礼の川喜多記念映画館で、本作を鑑賞しました。高村光太郎を山村聡、智惠子を原節子が熱演する1957年の東宝映画であるぞ…

カール・ズズケ&ヴァルター・オルベルツの「モーツアルトのヴァイオリンソナタ集」を聴いて

音楽千夜一夜第321回 私がモーツアルトのヴァイオリンソナタの演奏で求めるのは、夢のような儚さとこの世を遠く離脱したようなある種のはるかさである。 そうなるとやはりグリュミオーとハスキルのデユオにとどめをさすが、この独逸人二人による演奏も捨…

冬の日の朝夷奈峠

「これでも詩かよ」第58番&ある晴れた日に第194回 朝夷奈峠を登って、熊野神社を通って麓まで戻ってくるあいだに、いろんなことが起こる。 春まだ浅い日の朝まだき、水たまりに忽然とあらわれて交尾し始めたカエルたち。 ある夏の日、大発生して狂ったよ…

佐々木正美他著「わが子が発達障害と診断されたら」を読んで

照る日曇る日第649回 医療の立場から(我が家の恩人でもある)佐々木正美氏、療育の側から海老名わかば園の諏訪利明氏、自閉症者の家族&専門職の立場から横浜市総合リハビリセンターの日戸由刈氏がそれぞれの視点から発言されているが、重度の自閉症者の…

静かな海と楽しい航海

「これでも詩かよ」第57番&ある晴れた日に第193回 朝はコーヒーとトースト、 昼は「笑っていいとも」を見ながら生協の関西風キツネうどん、 夜は肉じゃがとご飯とみそ汁とデザートにイチゴを食べて、 寅さんの映画を一本見てからお風呂に入り、 「いろ…

橋本征子著「青い魚」を読んで

照る日曇る日第648回 「夏の呪文」「闇の乳房」「破船」「秘祭」に続く北の詩人の最新作が届けられました。 冒頭の「青い魚」を皮切りに「キャベツ」、「そら豆」、「カブ」、「サラダ菜」、「みょうが」、「歯」、「ルピナス」、「メークイン」、「ラ・…

逗子の「岩殿寺」を訪ねて

茫洋物見遊山記第144回&鎌倉ちょっと不思議な物語第308回 ここは鎌倉ではありませんが、限りなく鎌倉に近い逗子の山の上に立つ曹洞宗の古刹、海雲山岩殿寺で、境内からはかつて泉鏡花が賛嘆した逗子湾の絶景をいまも眺めることができます。 このお寺…

ドナルド・キーン著作集 第八巻「碧い眼の太郎冠者」を読んで

照る日曇る日第647回&音楽千夜一夜第320回 谷崎潤一郎が序文を書いている表題作、外国人向けの本邦案内書である「生きている日本」、各地の訪問記である「日本再見」、そしてクラック音楽についてのエッセイ「わたしの好きなレコード」他一篇の三冊の…

安丸良雄著「出口なお」を読んで

照る日曇る日第646回 女性教祖と救済思想と副題されたこの本を、とても興味深く親近感を持ちながら読んだ。 大本教の教祖としてあまねく世に知られることになったこの女性は、私の祖父の同時代のひとで、当時最底辺、最下層の貧民であった彼女が、質山峠…

ジェームズ・ブルックス監督の「愛と追憶の日々」をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.611 ジャック・ニコルソンがなんと宇宙飛行士役でシャーリー・マックレーンと悪乗りして丁々発止、嫌み寸前の名演怪演を繰り広げるのが見ものの映画だが、マクレーンの娘役のデブラ・ウインガーが3人の子供を抱えて…

泉下の人

「これでも詩かよ」第56番&ある晴れた日に第192回 ことしは、むかし私が勤めていた会社の同僚が他界された。 安永和代さん。 ことしの五月に八〇歳で儚くなられたという。 満州から引き揚げてこられた方で、詳しくお尋ねしなかったが、きっといろいろ…

ある修道女

「これでも詩かよ」第55番&ある晴れた日に第191回 山の麓の公園で、ひとりの修道女が携帯電話をかけていた。 声を潜めて話していた。 修道院に入るにはお金が要る、と誰かから聞いた。 お金の額で待遇が決まるというのだ。 地獄の沙汰のみならず 天国…

鎌倉でいちばん美味しくて、良心的なイタリアンは?

バガテル-そんな私のここだけの話op.171 &鎌倉ちょっと不思議な物語第307回 たまたま鎌倉に住んでもうすぐ40年になんなんとしているわけですが、当時は昔ながらの商店や食べ物屋さん以外にほとんどなにも無かった田舎町に東京資本のいろいろなお店がど…

「マニフィカト~500年の合唱音楽」を聴いて

音楽千夜一夜第319回 ルネッサンスからバロック、古典派、ロマン派の時代を経て現代へと至る過去500年の中で歌われてきたさまざまな合唱音楽の中から、代表的なものを中心に50枚のCDにまとめたお買得なボックセット。2012年度グラミー賞合唱部門受…