蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

静かな海と楽しい航海

「これでも詩かよ」第57番ある晴れた日に第193回

 

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朝はコーヒーとトースト、

昼は「笑っていいとも」を見ながら生協の関西風キツネうどん、

夜は肉じゃがとご飯とみそ汁とデザートにイチゴを食べて、

 

寅さんの映画を一本見てからお風呂に入り、

「いろいろあったけど、今日もなんとか一日終わったね」

などと言いながら、親子三人枕を並べて寝てしまう。

 

「たまには朝の七時までぐっすり寝ていたいね」

という声も確かに聞こえた。

「いつまでこうしていられるのかしらね」という声も。

 

ああ、静かな海と楽しい航海。

われらは今夜も船に乗る。

三々五々で宙に舞う。

 

しかし波一つない海岸には、

大きく傾いた一本の松の木だけが、

しきりに北風にそよいでいるだけ。

 

私こと今日もいろいろありまして、それなりに楽しかったのですが、

そのいろいろが突然無くなる日が、

誰にも訪れると改めて知った。 


神と仏の不在は、いつまでも続くのであるか。

やはりこの世には神は再臨せず、

無量千万億の菩薩は地上に湧出しないのであろうか。

 

私の驚き。

それは、あれだけ人世と神様にシニカルだった伯母さんが、

いよいよとなるとガバと祭壇にぬかずいたこと。

 

けれども、彼女はほんとうに神様を信じていたのだろうか?

迫りくる死の恐怖に耐えきれず、

目の前を流れてきた木の十字架に縋り付いただけではなかったのか?

 

ここで皆さんに質問。

もしもこの世に神仏のご一人ご一体もいまさずば、

あなたの人世 寂しいですか? 空しいですか?

 

そう訊かれたら、私だっていくぶんは寂しく空しい気持ちに襲われるが、

その寂しさと空しさにじっと向き合うことが

われらの人世を、より実直なものに仕上げることになるのではなかろうか。

 

人間は神仏なき世にあって

ただ一匹の動物として生まれ、一匹の動物として黙って死んでゆく。

それでいいのだ。それでいいのだ。

 

ああ、静かな海と楽しい航海。

われらは今夜も船に乗る。

三々五々で宙に舞う。

 

 

なにゆえに出したメールをシカトする無礼じゃないかなんとか言えよ 蝶人