蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

2014-05-01から1ヶ月間の記事一覧

なにゆえに第5回~西暦2014年皐月蝶人花鳥風月狂歌三昧

ある晴れた日に第240回 なにゆえにいともたやすく卒業するのか宝塚AKB私の卒業は私が死ぬ時 なにゆえにいともたやすく人は死ぬたやすくは死なぬと思いこみしに なにゆえにこの障がいを治せぬか医学はなにをしているこの30年間 なにゆえにいってらっしゃ…

サマセット・モーム著金原端人訳「月と六ペンス」を読んで~「これでも詩かよ」第84番

ある晴れた日に第239回&照る日曇る日第710回 金原氏の新訳が出たので読んでみたが、旧訳よりもすらすら読める。 しかしすらすら読めるのはいいことなのか悪いことなのか、 本当はよく分からない。 聖書のことが頭にあるからだ。 「新約聖書」でも「旧…

すべての言葉は通り過ぎてゆく 第7回  

西暦2014年睦月蝶人狂言畸語輯&バガテル-そんな私のここだけの話op.179 今度のNHKの会長のアホ莫迦発言には驚いた。政府が右に行きすぎたら、急いで左に走ってバランスをとるのが中立で公正な「皆様のNHK」の仕事だろう。世論調査の無作為抽出と…

夢は第2の人生である 第12回

西暦2013年師走蝶人酔生夢死幾百夜 久しぶりに大学を受験した。5科目のうちひとつでも成績が良かったら合格できると勝手に思い込んで、ろくに問題が解けなかった数学や生物の答案はださなかったら、落第してしまった。失敗、失敗。耄碌、耄碌。12/31 長…

「Rudolf Serkin plays Beethoven11CD」を聴いて

音楽千夜一夜第329回 ルドルフ・ゼルキンが弾いたベートーヴェンの5つの協奏曲と全曲に近いソナタを収めたお馴染みの激安セットですが、どのCDもすこぶる聴きごたえがあります。 ゼルキンという人は「謹厳実直」を絵にかいたようなピアニストで、ひと…

ジェシー・ネルソン監督の「I Am Samアイ・アム・サム」をみて

bowyow cine-archives vol.645 「オール・ザ・キングスメン」で狂気の独裁者を不気味に演じおおせたショーン・ペンが、ここではなんと小学5年生程度の知能しかない知的障がい者を演じている。 ペンには愛する娘がいて2人は一緒に暮らしたいのだが、世間や…

平成桃太郎音頭 ~「これでも詩かよ」第83番

ある晴れた日に第238回 一、桃太郎さん桃太郎さん 海に浮かんだ歯舞、色丹、国後、択捉 全部わたしにくださいな 二、やりましょうやりましょう これから北の征伐に ついて行くならあげましょう 三、行きましょう行きましょう あなたについてどこまでも 仲…

国立劇場で「七世竹本住大夫引退公演」をみて

茫洋物見遊山記第150回 名人竹本住大夫丈が引退すると聞いたので、終日糠雨そぼ降る半蔵門まで駆けつけ、風薫る皐月人形浄瑠璃の饗宴に列することができました。 住太夫丈の引退狂言は「恋女房染分手綱」の「沓掛村の段」の後半「切」の部のみでしたが、…

「山本周五郎長編小説全集」第13巻を読んで

照る日曇る日第709回 黒澤監督によって映画化された「五辦の椿」と「山彦乙女」から構成されている。 「五辦の椿」は薬種屋「むさし屋」の一人娘しのが実の父母、母と性的交渉のあった男たちを次々に簪で刺殺していく復讐譚であるが、いかに薄情な父母で…

フランク・ダラボン監督の「グリーンマイル」をみて

bowyow cine-archives vol.644 怪異や奇跡や天変地異を本や映像で見聞きすることと、実際に体験することとは全然違う。 この映画では無実の罪で収監された謎の黒人が病気を治したり、死んだはずの鼠を蘇らせるのであるが、私がもしそういう場面に遭遇したら…

丸谷才一著「丸谷才一全集第八巻」を読んで

照る日曇る日第708回 柳田国男と折口信夫によってとなえられた「御霊」を基軸にして、忠臣蔵という敵討事件と「仮名手本忠臣蔵」という歌舞伎を、政治的社会的背景のもとで解読しようと試みた「忠臣蔵とは何か」はじつに読み応えがある。 権力によって非業…

「ウエストミンスター・レガシー室内楽編」59枚CDを聴いて

音楽千夜一夜第328回 むかしLP時代に大層お世話になったウエストミンスター・レーヴェルの室内楽がどっさり収録された選集である。 私がこの世の中でいっとう好きなバリリ四重奏団のモザールを聴きたくて購入した膨大な組物だったが、いかんせんバリリ…

2014年春、新宿の街角で~「これでも詩かよ」第81番

ある晴れた日に第221回 新宿の学校で例によって白墨とマイクと髪振り乱しての授業を終え、 ヘロヘロになって、JRの南口に向かって歩いていたら、 前田さんとおぼしき女性が、2人の男性となにやら話しあっている姿をみかけた。 2人が真剣な面持ちで、…

ジョン・フォード監督の「長い灰色の線」をみて

bowyow cine-archives vol.643 ヘンリーフォンダが主演する南太平洋の日本軍との激戦の話かと思っていたのだが、出てきたのはタイロン・パワーがアメリカNY州のウエストポイントにある陸軍士官学校の名物教官になって長く活躍するという物語であった。 題…

「レオポルド・ストコフスキー・コロンビア・ステレオ・レコーディング」10枚組をきいて

音楽千夜一夜第327回 レガートを効果的に滑らせるとカラヤンの演奏になり、そいつに輪をかけてさらにポルタメントを惜しみなくばらまくとスットコドッコイ、ストコフスキーの演奏になる。のだろうか。 一時代前のバッハ、ベートーヴェン、チャイコフスキ…

スティーヴン・フリアーズ監督の「あなたを抱きしめて」をみて

bowyow cine-archives vol.642 なんという安易な邦題だろう。原題は誘拐された息子を探す母親(ジュディ・デンチ)の名である「フィロミナ」で、どうしてこんな訳の分からぬタイトルがつけられているのかさっぱり分からない。そのままでいいじゃあないか。 …

新宿の文化学園服装博物館で「ヨーロピアン・モード展」「千のブラウス展」をみて

ふぁっちょん幻論第87回& 茫洋物見遊山記第149回 来たる24日まで開催されている同展では1770年代から1990年代の欧州のレディスモードが時代別に陳列されていて勉強になる。 18世紀のモザールが生きていたロココ時代のドレスから、20世紀…

「神奈川県立美術館鎌倉館」を美術館として保存しよう!

鎌倉ちょっと不思議な物語第316回& バガテル-そんな私のここだけの話op.178 風薫る皐月となったが、鎌倉の鶴岡八幡宮が所有する土地に立つ世界の名建築、神奈川県立美術館鎌倉館が危急存亡の淵にあることは、テレビ、新聞、ネットで報道されているとお…

武内英樹監督の「テルマエ・ロマエ」をみて

bowyow cine-archives vol.641 元は漫画が原作だったらしい。昔からタイムトラベル物は数多いが、ローマ帝国のハドリアヌス帝時代と現代の平成ニッポンを結びつけた着想の妙に驚く。 しかも主人公ルシウスがローマの大浴場の設計技師で、これがタイムトラ…

家が沈む~「これでも詩かよ」第80番

ある晴れた日に第220回 リビングを歩くたんびに あっちもペコペコ こっちもペコペコ ああ 家が沈む 家が沈む 築三十五年のわが家が 毎日毎晩どんどん沈む いったいどうしてこんなことになったのか おそらくはミサワホームの広告のせいだ 「天井の高い家だ…

村上春樹の「女のいない男」を読んで

照る日曇る日第707回 どうもこの人の小説が出るとほおっておけなくて困ってしまいます。他の仕事が手につかないので仕方なく読みはじめたら、これが想定内だか想定外だか知らないが非常に面白いので、竹の子ご飯を食べるようにお代わりしながらずんずん読…

丸谷才一著「丸谷才一全集第十巻」を読んで

照る日曇る日第706回 この巻では、林達夫、井伏鱒二、横光利一、舟橋聖一、伊藤整、高見順、大岡昇平、松本清張、武田泰淳、吉田健一、吉田秀和、福永武彦、中村真一郎、司馬遼太郎、吉行淳之介、辻邦夫、色川武大、開高健、井上ひさし、大江健三郎、村上…

ローレンス・カスダン監督の「白いドレスの女」をみて

bowyow cine-archives vol.640 そりゃあ1981年当時のキャスリーン・ターナーが超絶色っぽいスエクスイー美女には違いないが、どうしてあんな賢いプレイボーイ、ウィリアム・ハートが一途にのめり込んで殺人まで犯してしまったのかきちんと描かれてい…

ギッチョンチョン~「これでも詩かよ」第79番

ある晴れた日に第219回 あ、ギッチョンチョン や、ギッチョンチョン ママがレモンなら パパはザボン 2人一緒でレモン・で・ザボン ママレモンとパパザボンは いつもなかよし 2人一緒でレモン・で・ザボン ところがところがギッチョンチョン 2人はわけ…

丸谷才一著「丸谷才一全集第九巻」を読んで

照る日曇る日第705回 漱石、漱石と関連した英米文学、鷗外、紅葉、荷風、白鳥、潤一郎、菊池寛、里見、かの子、春夫、寒村、基次郎を縦横無尽に論じ来たり、論じ去った著者会心の文学評論集で、どこを開いても著者の博覧強記と才気渙発に驚かされ、啓発さ…

岡井隆著「木下杢太郎を読む日」を読んで

照る日曇る日第704回 著者とおなじく医師であり詩歌の人であった杢太郎の足跡を、あるときは鷗外、龍之介、あるときはホフマンスタール、またあるときは宮廷のご進講なぞに寄り道しながらとぼとぼと辿ってゆく。 のではあるけれど、そのおぼつかなげにみ…

高橋源一郎・辻信一著「弱さの思想」を読んで

照る日曇る日第703回 世に所謂グローバリゼーションと新自由主義の進行によって、貧富の差はますます拡大し、持てる者と持たざる者との階級的軋轢は、日本の社会の安定的基盤をゆるやかに崩壊させようとしている。 寄る辺のない老人たち、幼くして死ぬゆ…

朝夷奈峠の春~「これでも詩かよ」第82番

ある晴れた日に第233回&鎌倉ちょっと不思議な物語第315回 まいとし春が近づくと心配になるのが、カエルどもの産卵である。 1月の終わりから2月の頭にかけて、朝夷奈峠の3か所の産卵スポットにスコップ持参で駆けつけて、小枝や枯れ葉などで埋まっ…

四月の歌~「これでも詩かよ」第76番

ある晴れた日に第232回 四月は お花見の季節 ニッポン、ラリラン ニッポン、ラララン ニッポン、チャチャチャ ニッポン、チャチャチャ 四月は 感傷的な季節 ニッポン、ウルウル ニッポン、ジュルジュル ニッポン、チャチャチャ ニッポン、チャチャチャ 四…

美神たちの黄昏 最終夜~西暦2014年卯月蝶人花鳥風月狂歌三昧

ある晴れた日に第231回 おそらくは誰にも知られず身籠らむかのガラパゴスの大亀のごと ウォーホル描きし<サンフランシスコ・シルバースポット>なる絶滅危惧蝶サンフランシスコのいずこに舞うならむか いにしえの鎌倉人は現在の水道局あたりでイルカを食…