蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

2010-11-01から1ヶ月間の記事一覧

西暦2010年霜月茫洋狂歌三昧

♪ある晴れた日に 第82回 青山の高級マンションのバスの中白き骨となりし美人モデルよ千人の魔女連行し拷問したりガンビアのジャメ大統領2つのアジアが遊曳する地政学的亜細亜と観念的亜細亜と芸術の価値とは内蔵する真善美の深さと大いさで測られる政治家の…

文化学園服飾博物館で「日本の型染」展を見る

茫洋物見遊山記第48回&ふぁっちょん幻論第61回 このような展覧会を見るのははじめてです。型染は紙や木などの型を用いて文様を表現する染色技法のひとつで、わが国では古くからおこなわれ、着物をはじめ公家装飾、武家装飾、芸能衣装など多くの服飾に使用…

スチーブン・ダルドリー監督「めぐりあう時間たち」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.57私の大好きな英国の閨秀作家ヴァージニア・ウルフとその作品「ダロウエイ夫人」をモチーフに3つの時代に生きた3人の女性を主人公にした映画である。1923年のイギリス・リッチモンドで「ダロウエイ夫人」を執筆中の…

スティーヴ・マックイーンの「栄光のルマン」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.56原題はただの「ル・マン」なのにどうして栄光がつくのか。この映画の中には栄光などどこを探してもないぞ。カー気狂いのマックイーンのために作られたスピードレーサー物だが、当時のレースと会場の雰囲気が伝わって…

ピーター・イエーツ監督「ブリット」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.551968年という思い出深い年に、私がアメリカでいっとう好きな懐かしい坂の街サンフランシスコを、ずだん、ズドンとすっとばすスティーヴ・マックイーンの刑事ブリット。何回見てもハラハラドキドキします。しかし…

アレクサンダー・ヴェルナー著「カルロス・クライバー下巻」を読んで

照る日曇る日 第388回指揮者の仕事は3つある。ひとつは曲を正しく出発させること、次は曲を正しく進行させること、3つ目は正しく終わらせることであるが、いずれもことのほか難しい。開始するや否や曲のテンポも、曲想も、解釈もほぼ決定されてしまう。…

フランクリン・J・シャフナー監督の「パピヨン」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.551973年、「パットン大戦車軍団」のフランクリン・J・シャフナー監督による「パピヨン」を見るのはこれで何回目か。しかし健忘症の私はどんな映画も見るはなから忘れていくので、今回もまるではじめてのような新…

ノーマン・ジュイソン監督の「シンシナティ・キッド」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.54「夜の大捜査線」の実力派ノーマン・ジュイソンが撮った非常によく出来た1965年のギャンブル映画だ。主人公シンシナティ・キッドに扮するスティーヴ・マックイーンをはじめ、ポーカーゲームの敵役エドワード・G…

スティーヴ・マックイーン製作の「トム・ホーン」を見る

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.53スティーヴ・マックイーンが死の前年の1979年に製作総指揮を兼ねて主演した西部劇映画はいかにも彼らしい渋い味わいのにじみ出た作品。ウイリアム・ウイヤードという聞いたこともない人物に監督をやらせているが…

トマス・ピンチョン著「逆光下巻」を読んで

照る日曇る日 第387回物語の舞台は1893年のデンバーからロンドン、ベネツイア、オステンド、ゲチンゲン、中央アジア、ロサンジェルス、そして地球の成層圏を遠く離れて反地球、あるいはもうひとつの地球に達し、またしても地表に降りたつのは飛行船<…

ジョン・ギラーミン監督「タワーリング・インフェルノ」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.511974年にワーナーとフォックスが制作し、ジョン・ギラーミンに監督させた2年前の「ポセイドン・アドヴェンチャー」に続くパニック大活劇映画です。サンフランシスコに完成したばかりの超高層ビルが火災になって…

ロバート・ワイズ監督「砲艦サンパブロ」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.52海千山千のロバート・ワイズ監督が1966年に製作した本作は、1920年代の中国に進出したアメリカの軍人の生態と悲劇をえぐる問題作である。当時は日帝を含めた列強諸国が清の柔らかい横腹を食い破ってわがもの…

佐藤賢一著「フイヤン派の野望」を読む

照る日曇る日 第386回シリーズ「小説フランス革命」の第6巻は、ヴァレンヌに脱走したルイ16世がパリに連れ戻されたあとの国民議会の迷走を描いています。王の裏切りに激高する市民の怒りをよそにジャコバン・クラブの重鎮であるデュポール、ラメット、…

角田光代著「ツリーハウス」を読んで

照る日曇る日 第385回貧しい田舎で喰いつめて旧満州に飛びだした祖父とそこでめぐり会った同じような境遇の祖母。敗戦の大混乱の中を命からがら引き揚げ、誰のものとも知れない新宿十二社のバラックではじめた小さな中華料理屋翡翠飯店が、父親と母親、そ…

ジョン・スタージェス監督の「大脱走」を観る

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.50監督ジョン・スタージェスが、その持てる実力を遺憾なく発揮したハリウッドの超大作です。エルマー・バーンスタインのテーマ音楽で有名な1963年制作のこの映画。スティーヴ・マックイーンがナチの収容所から脱走…

ドナルド・シーゲル監督の「突撃隊」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.491961年制作のモノクロ映画だが、注目に値する戦争映画である。1944年の独仏国境のジークフリート線で戦闘を続ける米軍の2個小隊が主人公。帰国できるという噂が流布されていたが、一転して最前線に投入されるこ…

鏑木清方記念美術館で「鏑木清方と官展」を見て

茫洋物見遊山記第47回&鎌倉ちょっと不思議な物語第234回 鏑木清方記念美術館は観光客でにぎわう小町通りを一本入った閑静な住宅街の中にあります。どうしてそうなのかというともともと小町は30年前までほとんど人気のなかった宅地でその一角に鏑木清…

オバマ大統領が来る前に「鎌倉大仏」を見る

茫洋物見遊山記第46回&鎌倉ちょっと不思議な物語第233回高さ11メートル余の大仏で有名なこの場所は、じつは高徳院という浄土宗のお寺なのですが、開山、開基ともに不明です。その証拠に境内の奥には観月堂という小さなお堂があるのですが、あまり参…

トマス・ピンチョン著「逆光上巻」を読んで

照る日曇る日 第384回 新潮社から全集が続々ではじめたからには手にとらずにはおられないピンチョン。さきの「メイスン&ディクソン」はあまり感心しなかったが、こちらはまだ半分読んだだけだが仰ぎ見るK2のような、小説という名の一大巨峰。書きも書…

雑賀恵子著「快楽の効用」を読みながら

照る日曇る日 第384回私の郷里の旧家の冬の朝餉はいつも芋粥で、七人の家族全員が長幼の順で鍋底に杓文字を突っ込んで米に溶解したとろとろの芋を飢えた獣のように奪い合うのだった。おやつなどはなく、毎日与えられるアルミ貨の一円を原資に駄菓子屋で壱…

サム・ペキンパー監督の「ゲッタウエイ」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.481972年にサム・ペキンパーがスティーヴ・マックイーンとアリ・マッグローを起用して撮ったこれまた銀行強盗のお話です。同じ銀行強盗物でもさすがにノーマン・ジェイソンの「華麗なる賭け」のよた話とは違って骨…

ノーマン・ジェイソン監督の「華麗なる賭け」を見る

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.47ノーマン・ジェイソンなんて知らないがスティーヴ・マックイーンがフェイ・ダナウエイーと共演した珍妙なラブ&サスペンス映画。すでに億万長者である切れ者実業家のマックイーンが己と腐敗堕落した世の中に活を入れ…

鎌倉文学館で「川端康成と三島由紀夫展」を見て

茫洋物見遊山記第45回&鎌倉ちょっと不思議な物語第232回秋薔薇が咲く旧前田侯爵邸で「伝統へ、世界へ 川端康成と三島由紀夫展」を見物しました。自裁して果てた文学者たちの遺業を偲ぶ特別展です。よく知らなかったのですが、この2人は生前非常に仲の…

鎌倉国宝館で「薬師如来と十二神将」展を見る

茫洋物見遊山記第44回&鎌倉ちょっと不思議な物語第231回鎌倉の大町の辻薬師堂に置かれてきた薬師如来と十二神将像の補修が終わったことをことほぎ、それらを一堂に集めた展覧会がひらかれています。14年の歳月をかけて修理された仏像たちはこころな…

スタンリー・キューブリックの「2001年宇宙の旅」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.46スタンリー・キューブリックがアーサー・C・クラークとの協働脚本でプロデューサー、特殊撮影監督を兼ねて製作したこの映画は、何回見ても難解な作品です。猿たちの前に突如出現した巨大なモノリスという石碑だか鉄…

ラッセ・ハルストム監督の「ショコラ」を見る

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.45監督がどうこういうよりも、まあジュリエット・ピノシュ主演の映画です。かつてゴダールに見出されたピノシュは、どこまで成長するのかと期待を抱かせましたが、はじめは処女の如く終わりは脱兎の如しとはよく言うた…

スパイク・リー監督の「インサイドマン」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.44デビューしたての頃のスパイク・リーはハリウッドのユダヤ系白人文化とはまったく無縁の異界の地底人が土足で映像世界に乱入してきた感があって、1982年の「ジョーズ・バーバー・ショップ」は映像のつくりや文体は乱…

ポランスキー監督の「戦場のピアニスト」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.43ポーランド生まれで家族そろってナチスドイツにひどい目にあったポランスキー監督が己の辿った受難の歴史を深く噛みしめるようにして描き出した反戦映画です。自伝ではなく、あえて同じポーランド出身のユダヤ人ピア…

ブリジット・バルドーの「気分を出してもう一度」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.42ミシェル・ボワロン監督のどうしようもなく下らない1959年のコメデイ作品。ゆいいつの取り柄は当時売り出し中のBBの軽やかなマンボのステップとキュートな美貌と肉体を拝めることくらいか。しかし当時は次元の…

モラヴィア原作&ゴダール監督の「軽蔑」を見る

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.41 男のさすらいの人生の頼りの綱は女性です。もしも愛する女性に軽蔑されたら、男なんてどうやって生きていったらよいのか途方にくれてしまうでしょう。漂流しながらおんおん泣いて、ついでに海に飛び込んで死んでし…