蝶人戯画録

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ドナルド・シーゲル監督の「突撃隊」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.49

1961年制作のモノクロ映画だが、注目に値する戦争映画である。

1944年の独仏国境のジークフリート線で戦闘を続ける米軍の2個小隊が主人公。帰国できるという噂が流布されていたが、一転して最前線に投入されることになり、ふたたび死地に赴く米軍兵士の孤独な局地戦をじっくりと描いて見る者の耳目をくぎ付けにする。

おそらくこのような局面に遭遇すれば誰もがこのような恐怖と絶望と無我夢中の殺人行為の世界に蹂躙されるほかないであろうと思わせるクールなタッチが空恐ろしい。ことにも恐ろしいのは登場した瞬間から狂気と死の気配を漂わせるスティーヴ・マックイーンの底光りする存在感とあちらの世界にいってしまったような迫真の演技。

結局彼は18キロ爆弾もろともドイツ軍のトーチカに身を投じて壮絶な自爆を遂げるのだが、これほど救いのない、しかしそれゆえに戦争の無意味と無惨さを伝える映画も数少ないだろう。全篇をひたひた覆い尽くす激烈なリアリズムとセットになった

死とニヒリズムの忌まわしき祝祭。さすがペキンパーとイーストウッドが師と仰いだ名匠ドナルド・シーゲルの作品である。

政治家の使命とは国民の利害から遠ざかっても普遍の正義に殉ずることである 茫洋