蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

2006-10-01から1ヶ月間の記事一覧

宗教的情熱について

宗教的情熱について政治と宗教に熱中することほど危険なことはない。政治と宗教は敵に寛容ではない。「汝の敵は、殺せ!」という恐ろしい呪文を胸に、あのオウムも、クロムウエルもルターも、ジャン・カルバンもブッシュも、ビンラディンも、キリスト教の新…

大森望・豊崎由美著「文学賞メッタ斬り!リターンズ」を読む

前作の「文学賞メッタ斬り!」が芥川賞や直木賞の内幕を暴露して面白かったので、その続編にもつい手が伸びてしまった。ともかく渡辺淳一や石原慎太郎、津本陽とか宮本輝などの審査委員がいかにでたらめな審査をしているのかがよくわかる。直木賞担当の津本…

都築響一著「夜露死苦現代詩」を読む

まずは、本書の第11章「少年よ、いざつむえ」に掲載されている友原康博氏の「くさった世の中」という作品を紹介しよう。「くさった世の中」くさった 世の中は 身を 生じない 反発の ゆれみが のし かかって くる のだ だから きびしく 追求する 激しい なぞ…

「芥川龍之介展」で思ったこと

今日は、ははとつまとわたしの3人で鎌倉文学館の芥川龍之介展に行きました。旧前田侯爵邸でかつて佐藤栄作首相の別荘でもあったこの英国調の洋館の歴史は古く、三島由紀夫の最後の作品にインスピレーションを与えた建物としても有名です。広い前庭にはさまざ…

開運祈願

鶴岡八幡宮の本殿に登って祈祷が始まるのを待っていると、七・五・三で家族と一緒にやってきた少年の声が聞こえた。「ねえ、神様はどこにいるの?」すると彼の父親がおぼつかない声で答えた。「奥のほうだよ」少年が「あそこらへん?」と、指差しながらまた…

死刑囚たちの歌

死刑囚たちの歌 綱 よごすまじく首拭く 寒の水布団たたみ 雑巾しぼり 別れとす叫びたし 寒満月の 割れるほど梅雨晴れの 光を背負い ふりむかず秋天に 母を殺せし 手を透かす桜ほろほろ 死んでしまえと 降りかかるつばくろよ 鳩よ雀よ さようなら絵を 描いて…

こんな夢を見た

こんな夢を見たおれはその会社で干されていて、毎日暗い日々を送っていた。永代橋の近くにあるその会社の「サンプル現売所」(会社の製品見本を社員や株主に安く販売する)に配置転換されていた。ある日人事課長の竹内から「いまから大株主のお嬢さんと一緒…

Joseph Jaffe著「テレビCM崩壊」(翔泳社)を読む

消費者主権がますます声高に叫ばれ、消費者自体の個衆化、ミクロ化、多価値複雑分裂化現象が進行すれば、当然マス媒体とマス広告の価値と効果は減少するだろう。本書はそのマス媒体の中でも特に米国のテレビCMに焦点をあてて最近の動向をレポートしていて…

「ジョー、満月の島へ行く」を観る

いかにもスピルバーグの製作会社アンブリン・エンターメント映画好みのハート・ウオーミングドラマ。 前半の名曲「16トン」をBGMにした暗く悲壮な始まりと、後半からの「マッスケナダ」などを劇伴にしたユーモラスでロマンチッックな展開が好コントラス…

ムクの歌

OH!アデュー 人語をはじめてに口にして 老犬ムクは いま身罷りぬネンネグー 阿呆ムク 可愛ムク 処女のムク 盲目のムク いま昇天す鎌倉の 山野を駆けし細き脚 そのマシュマロの足裏を ぺろぺろ舐めおりここで跳べ ザンブと飛び込む滑川 ウオータードッグよ…