蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

2012-03-01から1ヶ月間の記事一覧

西暦2012年弥生 蝶人狂歌三昧

ある晴れた日に 第105回 電気消え信号が消え車消え星無き空に人語絶えたり凍水に呑まれ息絶え流されて魚に喰われし人をし思ほゆお前なんかに頼まれたから黙祷しているんじゃないぞ鎌倉市役所この次の大震災では大佛様は溺れてしまうでせうと皆が囁く来るとき…

ローレンス・カスダン監督の「シルバラード」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.216 大リーグの開幕戦が行われているのを忘れて録画した映画を観ていたら、なんとイチローが4安打もしていたのだった! で、見たのはどういう映画だったかというと、役者だけはケヴィン・クラインやケヴィン・コスナ…

チューリッヒ歌劇場の「ファルスタッフ」と「道化師」を見て

♪音楽千夜一夜 第255回 ヴェルディのオペラは作曲された順番に完成度が上がると誰かが語っていたが、その最後の最高峰がシェークスピアの原作をオペラ化した「ファルスタッフ」です。同い歳のワーグナーがアリアが無く朗唱が果てしなく続く楽劇への道を辿っ…

バレンボイム指揮スカラ座の「ドン・ジョヴァンニ」をビデオで鑑賞す

♪音楽千夜一夜 第254回2011年12月7日、世界の一流オケとオペラハウスを渡り歩いた舞酢吐露馬連母威武がついにミラノのスカラ座を射止め、このモーツアルトがそのお披露目となりました。なんせ大統領と首相臨席のスカラ座でイタリア国歌を振るのだから…

ちくま日本文学全集「尾崎翆」を読んで

照る日曇る日第506回 裏日本の山村の野良仕事には、弁当を忘れても雨具が欠かせない。晴れ間を縫ってたちまち驟雨が落ちてくるからだ。そんな山陰の陰鬱な風土に逆らうように、一輪の清新な花が咲いていた。それは泥田に咲いたポップでシュールなダダの花。…

英EMIの「カラヤン声楽全集1946-1984」を聴いて

♪音楽千夜一夜 第253回なんたってオペラはヘルベルト・フォン・カラヤン。そのカラヤンが指揮したオペラをこれでもか、これでもかと聴かせてくれる71枚のCDだ。小澤なんぞと違って凡庸な演奏はただの1枚もない! おまけに録音も音質も最高でしかも1枚…

英EMIの「カラヤン管弦楽全集1946-1984」を聴いて

♪音楽千夜一夜 第252回これはヘルベルト・フォン・カラヤンが、英国のEMIに録音したすべての管弦楽曲を87枚のCDに収めたもの。戦後まもなくの1946年のウィーン・フィルとのモノラル録音「アイネ・クライネ」を皮切りに、名プロデューサー、ウオルタ…

日経広告研究所編「基礎から学べる広告の総合講座2012」を読んで

照る日曇る日第505回これは毎年夏に開催されるセミナーの内容を採録した、非常に面白くて為になる宣伝広告販促のガイドブックです。本邦を代表する研究者や代理店、企業の専門家、実践家たちがカテゴリー別に続々登場、テレビ、新聞、雑誌、ネットなどのメデ…

鎌倉高徳院裏の「故早乙女貢邸」を訪ねて

鎌倉高徳院裏の「故早乙女貢邸」を訪ねて鎌倉高徳院裏の「故早乙女貢邸」を訪ねて茫洋物見遊山記第82回&鎌倉ちょっと不思議な物語第261回鎌倉文学館が主催する文学散歩に着いて行ったら、大佛様の裏手の閑静な住宅街に連れて行かれました。大佛を見下ろす鬱…

鎌倉国宝館で「ひな人形」を見る

茫洋物見遊山記第81回&鎌倉ちょっと不思議な物語第260回 &ふぁっちょん幻論第69回 年年歳歳花相似 年年歳歳人不同。あれからもう1年が経ったのですね。私は今年もまた、春近い朝、鶴岡八幡宮の片隅にある国宝館のひな人形を見物に行きました。享保時代に…

県立近代美術館鎌倉で「藤牧義夫回顧展」を見る

茫洋物見遊山記第80回&鎌倉ちょっと不思議な物語第259回 1935年9月、新進芸術家として各方面からの期待を集めていた弱冠24歳の藤牧義夫が失踪してから76年が経過した今、神奈川県立近代美術館でモダン都市の光と影と題する生誕100周年の回顧展が…

鎌倉地獄谷成就院付近を歩く

茫洋物見遊山記第79回&鎌倉ちょっと不思議な物語第258回 春は名のみ。梅はようやくにして咲いたが桜はまだ河津桜だけというこの時期、東京に出かける元気はないので、地元で長く地獄谷と呼ばれた辺をちょっと散歩しようということになりました。早朝江の電…

小澤征爾指揮ウイーンの「マノン・レスコー」を視聴して

♪音楽千夜一夜 第251回まだこの指揮者が元気だった05年6月13、17日のライヴ演奏です。舞台を現在のアミアン、パリ、ルアーブル、ニューオリンズに移し、モデルやカメラマン、ウインドウディスプレーなどのファッション性を大胆に取り入れた才人ロバート…

パール・バック著「つなみ」を読んで

照る日曇る日第504回パール・バックといえば「大地」を書いたノーベル賞作家ですが、かつて本邦に滞在した折、海辺の丘の中腹の小さな家屋に滞在したんだそうです。そしてある夏の日に津波がやって来て浜辺の漁村が流され、その貴重な体験をもとにして書いた…

川西政明著「新・日本文壇史第七巻」を読んで

照る日曇る日第503回「戦後文学の誕生」という副題がついた本巻では、太宰治、埴谷雄高、大岡昇平、福永武彦、金石範、金時鐘、野間宏の人生と作品を取り扱っている。 太宰の巻では、彼の妻美知子宛ての遺書「あなたをきらいになったから死ぬのでは無いので…

フェリーニ監督の「甘い生活」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.215表層のにぎやかしとは裏腹に、ただ一人で生きていて、ただ一人で死んでいく人間の哀歓と虚妄をマストロヤンニ扮するトップ屋の寄る辺なき生をつうじて描き出した巨匠の不朽の名作です。それにしてもこのモンクロー…

木下恵介監督の「楢山節考」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.214深沢七郎の原作を木下恵介が1958年に最初に映画化した作品である。むかし極貧にあえぐ山村では、口減らしのために70歳になればいくら頑健で歯が丈夫でも村の果てにある楢山に捨てられ、哀しくも残酷な最期の…

喜劇映画「トッツィー」と「ミセス・ダウト」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.213前者は1982年にダスティン・ホフマン主演でシドニー・ポラックが、後者は1993年にロビン・ウイリアムズ主演でクリス・コロンバスが監督した上質のコメディ映画である。しかしてその共通点は、いずれも主演…

ベルリン・フィルのデジタルコンサートを視聴して

♪音楽千夜一夜 第250回最近は世界中のオーケストラがインターネットを通じて彼等の演奏をライヴ中継しているが、その白眉はやはりベルリン・フィルのそれだろう。しばらく前から始まったこの放送は1年間邦貨15000円程度で過去の膨大なアルヒーフを含めて自…

リナルド・アレッサンドリーニ指揮スカラ座の「オルフェオ」を視聴し

♪音楽千夜一夜 第249回モンティヴェルディの「オルフェオ」は生まれたてのオペラということでアリアはただの1曲もなく、全篇にわたって詠唱が延々と続くのだが、これはまたなんと美しくも雄弁な神話語りであろうか。リナルド・アレッサンドリーニによって率…

バレンボイム指揮スカラ座「ワルキューレ」を見て

♪音楽千夜一夜 第248回東洋の一視聴者の声を聴き届けたのか、二〇一〇年一二月七日に上演されたワーグナーの「指輪」の第二作ですが、指揮者も出演者も圧倒的な名演を繰り広げています。第一幕ではウオータンの双子の兄妹が敵役のフンディングが寝入った隙に…

バレンボイム指揮スカラ座「ラインの黄金」を見て

♪音楽千夜一夜 第246回ロンドンやパリで振っていた頃はピアニスト上がりの新進気鋭のごんたくれ指揮者だったのに、あれよあれよという間にシカゴ響、ベルリン国立響、ウエスト・イースタン・ディヴァン管を手中に収めたと思ったら最近はミラノ座で押しも押さ…

森本恭正著「西洋音楽論」を読んで

照る日曇る日第502回&♪音楽千夜一夜 第247回 クラシックに狂気を聴け、という副題が付いているのだが、全体をつうじてこの人がいったい何を言いたいのかさっぱり分からなかった。この人がライブやCDを聴くと演奏を聴くと、欧州人の音楽はアフタービートで…

是枝裕和監督の「ワンダフルライフ」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.212何も知らずに見物し始めたのだが、中陰の状態にある死者に対して「あなたの一番大切な思い出をセレクトしてください。それを映像化してあげますから、それを見てから成仏してください」というサービスを提供する団…

円城 塔著「道化師の蝶」を読んで

照る日曇る日第501回 飛行機の中で昆虫網を振り回したら、架空の新種の蝶アルレキヌス・アルレキヌスなる「道化師のような蝶」が採れました。これは本書の引用ではありませんが、例えばこーゆーよーな内容のフレーズがビシバシ登場して参ります。普通なら我…

北杜夫著「巴里茫々」を読んで

照る日曇る日第500回 どくとるマンボウ氏の落ち穂拾い2作です。「巴里茫々」では著者が夢の中で仏蘭西語など全然知らないのに、仏蘭西の国歌「ラ・マルセイエーズ」を歌ったというくだりが出てきます。それはそれで面白いのだが、改めてこの歌詞を読んでみ…

田中慎弥著「共喰い」を読んで

照る日曇る日第499回この人の作品を初めて読んだが、褒めるとすれば、なんといっても語り口に強烈な陰影があるのがよい、ということになるんだろう。何を書いても奇妙なエグさと野蛮さがそこはかとなくどぶの臭いのように立ち上っているぜ。次に題名の「共喰…

マイク・ニコルズ監督の「ワーキング・ガール」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.211&勝手に建築観光第48回&ふぁっちょん幻論第68回1988年公開のアメリカ・キャリアウーマン格闘物語であります。メラニー・グリフィス扮する低学歴のウオール街のオフィスガールが、上司のシガニー・ウイーバー…

ジェームズ・ブルックス監督の「恋愛小説家」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.210 流行作家のジャック・ニコルソンが行きつけのレストランのウエイトレス、ヘレン・ハントと『As Good as It Gets』になるという典型的なハリウッドのファッキンアホ馬鹿映画だ。ハントは確かにちょっと可愛い女優だ…

マルセル・カミュ監督の「黒いオルフェ」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.209 1959年にギリシャ神話の「オルフェオとエウリディーチエ」にヒントを得て製作されたブラジル版の愛の物語である。ギリシャ神話でエウリディーチエが毒蛇に咬まれて落命したように、この映画でも薄命の美女が謎…