蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

マイク・ニコルズ監督の「ワーキング・ガール」を見て


闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.211&勝手に建築観光第48回&ふぁっちょん幻論第68回

1988年公開のアメリカ・キャリアウーマン格闘物語であります。

メラニー・グリフィス扮する低学歴のウオール街のオフィスガールが、上司のシガニー・ウイーバーの陰謀をハリソン・フォードと結託して打ち破り鼻をあかすという他愛もないサクセウスストーリーだが、この頃はまだ国や個人の未来の成長への夢があったことに驚かされる。

ドラマの内容はともかく、今は亡き世界貿易センタービルの威容や、バブルが沸騰するアメリカの女性のビジネス環境とファッション&ライフスタイルを懐かしく回顧することができる。

メラニー・グリフィスなどの一般職は、ど派手なメイク、クジャクが羽をおっぴろげたようなカーリーヘア、肩パッドの入ったビッグシルエットのジャケットという出で立ちだが、一流大学出役のシガニー・ウイーバーはショートヘア、シンプルなアルマーニ風スーツでびっしっと決めているのが興味深い。

 また世界貿易センタービルは、インド・イスラム建築を代表するタージ・マハール寺院の立柱にインスパイアーされた日系アメリカ人ミノル・ヤマサキによって設計されたが、その名建築が、この映画が撮影された5年後に狂信的なイスラム教徒のよって爆破された。アジアの知性がアングロサクソンに注ぎ込んだイスラムの叡智が、同じイスラムの憎悪に燃える血に因って解体されたことは、もっと興味深い歴史の皮肉である。


イスラムの文化遺産の末裔をイスラムびとが自爆させたり 蝶人