蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

2009-05-01から1ヶ月間の記事一覧

西暦2009年茫洋皐月歌日記

♪ある晴れた日に 第58回 春夏秋冬人生宇宙循環すサムライとおだてられしが異国で討ち死に両足が伸びたるおたまを池に返す今年また蛍光りしうれしさよ春暗し男共皆縞縞背広妻と子の鼾楽しも春の夜左後ろ振りさけ見れば左肩根元に走るその痛さかないつのまに…

葉山「日影茶屋」と新宿「大戸屋」のランチを比較して飲食業のサービ

バガテルop100雨の金曜日、横須賀の素晴らしい歯医者さんで定期健診をして頂いてから葉山海岸沿いに建つ日影茶屋で遅めのランチをとりました。ここはその昔伊藤野枝さんに恋人を奪われた神近市子さんが、恋に狂って大杉栄氏を刺した現場として有名ですが、当…

花咲地蔵と花咲爺

鎌倉ちょっと不思議な物語第185回ここは大町の山から下りてきた一角で花を飾られた小さな地蔵尊があります。鎌倉時代から室町中期まで、この谷に足利直冬が祖先の菩提を弔うために建立した慈恩寺がありました。その直冬の法号にちなんだ慈恩寺ですが、禅…

「大切岸」を望む

鎌倉ちょっと不思議な物語第184回法性寺のすぐ近くには逗子側に屏風のように立ちはだかっている垂直に削られた崖があり、「おおきりぎし」と呼ばれています。この崖は鎌倉の覇権を確立した北条氏が三浦半島を拠点とする三浦市の侵入を防ぐ目的で築かれた…

法性寺を訪ねて

鎌倉ちょっと不思議な物語第183回このお寺はじつは私の家から直線距離にすればそれほど遠くありません。鎌倉逗子ハイランドの坂道を下って、横須賀線の線路にぶつかった右側に馬頭観音があり、そこが入口になっているのです。ところがこの日は海側からで…

5万円パソコンの意義

茫洋広告戯評第4回昨日と同じ新宿西口広場をどこかでフォーク集会でもやっていないかなとねぼけ眼で探していたら、台湾のパソコンメーカーの「パソコンは5万円で買う時代」という広告が目に入りました。やたらグリコにおまけをつけて10万、20万で売り…

ロバート・デ・ニーロと「レガシー」

茫洋広告戯評第3回今日もまたくたびれ果てて新宿西口の交番を左折してまっすぐスバルビルに向かってよたよた歩いていると、これまたくたびれ果ててぐちゃぐちゃになった中年男の顔とぶつかりました。大きな柱を巻くようにして、だから柱巻といわれている電…

ウエザーメスト指揮モーツアルトの「皇帝ティトゥスの慈悲」を視聴し

♪音楽千夜一夜第67回モーツアルト最後のオペラである「皇帝ティトゥスの慈悲」を視聴しました。1791年12月5日にこの天才作曲家は35歳で亡くなりますが、その死の年の夏から秋冬にかけてまるで自分の死と競争するように同時進行で取り掛かっていた…

佐藤賢一著 小説フランス革命3「聖者の戦い」を読んで

照る日曇る日第258回名もなきパリの民衆、とりわけ下町の女性や弁護士デムーランなどの大活躍でベルサイユの国王や王妃をパリに「奪還」したわけですが、貴族たちが国外に逃亡した後の三部会、いや国民議会は肝心の憲法を制定するどころか右派と左派、そ…

いにしえの鎌倉砦「名越切通」を歩く

鎌倉ちょっと不思議な物語第182回「名越切通」は鎌倉七切通のひとつで国の指定史跡となっています。この切通は鎌倉と三浦を結び、峠は鎌倉と逗子の市境になっています。仁治元年一二四〇年、三代執権北条泰時の治世の際に私の近所の朝比奈切通の工事が行…

緑薫る「安国論寺」を訪ねて

鎌倉ちょっと不思議な物語第181回名越四つ角交差点を左に入ると松葉ヶ谷。その突き当りに日蓮が安房から鎌倉に入って最初に庵をむすんだ「安国論寺」があります。彼は53歳の時に身延山に移りますが、およそ20年をこの地ですごし、その跡がこの寺にな…

ユニクロの新宿西口店と広告

茫洋広告戯評第3回&勝手に建築観光35回鳴り物入りでオープンした新宿西口のメガショップですが、なんせ元は家電のサクラヤがあった場所。構造はそのままに真っ白なペイントを施し、かっこよさをきどってみせたものの、入口のサイコロブロックのがさつさ…

愛の昼下がりにいざなう「ピーチ・ジョン」

茫洋広告戯評 第2回伝説の経営者野口美佳が経営する若い女性のおしゃれな下着の会社「ピーチ・ジョン」は全国で12店舗を運営していますが、現在は同じ下着の大手ワコールの傘下に入りました。 最近沈滞気味のワコールは、苦手な若い女性のニーズをうまく…

上野榮子訳「源氏物語第八巻」を読んで

照る日曇る日第258回 私のように平安時代の日本語に不案内な読者にとっては、紫式部の自筆原稿を自力で読みこなすことなど到底できません。そこでやむなく翻訳書に手を出すことになるわけですが、これが訳者によって読後感がまるで異なるので、いったいど…

山本兼一著「利休にたずねよ」を読んで

照る日曇る日第257回戦国時代の人物像がくっきりと浮かび上がってくる手腕は見事お茶の大家である千利休さんが太閤秀吉さんに殺されるまでの顛末を、利休の運命的な恋をふとい縦軸に据え、信長、秀吉、家康、堺の茶人衆など多彩な同時代人をほそい横軸に…

ル・クレジオ著「黄金探索者」を読んで

照る日曇る日第256回インド洋に浮かぶモーリシャス島はセーシェル諸島のさらに南に下がったところにあり、マダガスカル島のすぐ東にあります。モーリシャス島といえば、誰でもこの美しい南海の島を舞台にしたサン・ピエールの小説「ポールとウィルジニー…

東勝寺橋を訪ねて

鎌倉ちょっと不思議な物語第180回東勝寺は太平記にも記されているように北条政権が最後の日を迎えたところです。稲村ケ崎、稲瀬川方面からアサリを押しつぶして突入した新田義貞の軍勢が、最後の執権北条高時の軍勢千余騎をここ葛西が谷に追い詰め、暗い…

拝啓 鎌倉市長殿

バガテルop99&鎌倉ちょっと不思議な物語第179回 時下貴職ますますご健勝のこことお喜び申し上げます。さて小生は市内に居住する者です。毎日のように朝比奈峠から熊野神社、果樹園に至るハイキングコースを散歩しているのですが、最近よくマウンテンバ…

ミシェル・トゥルニエ著「フライデーあるいは太平洋の冥界」を読んで

照る日曇る日第255回デフォーの1719年「ロビンソン・クルーソー」は後続の1726年の「ガリヴァ旅行記」に大きな影響を与えた18世紀の冒険物語ですが、この有名な海洋漂流譚を今度は1967年になってフランスの作家ミシェル・トゥルニエが換骨…

大判小判の山から逃げ去る「ほんたうの幸福」

荒川章二著「豊かさへの渇望」を読んで照る日曇る日第254回小学館版「日本の歴史」の最終巻である本書では、1955年から現在までのおよそ半世紀のわが国とわが民衆の歩みをいっきに振り返っている。私の頭の中では縄文時代とか鎌倉室町時代や江戸時代…

09年鎌倉市議会議員選挙始末記

バガテルop98&鎌倉ちょっと不思議な物語第178回先月26日に行われた鎌倉市議選の結果、新しい顔ぶれが決まりました。定数28名のところ立候補したのは36名でしたが当選者は28名。その内訳は現職18、新顔10名。党派別は自民1名、民主4名、公…

ビリー・ワイルダーの「昼下がりの情事」を見る

闇にまぎれて bowyow cine-archives vol. 3日本の男のオードリーは大嫌いですが、ベルギーで生まれた英国人女性のオードリーは大好きで、時々その映画を楽しんでいます。ヘプバーンの代表作はなんといってもウイリアム・ワイラー監督の「ローマの休日」です…

ヴィスコンティの「白夜」を見る

闇にまぎれて bowyow cine-archives vol. 2ドストエフスキー原作、ルキノ・ヴィスコンティ監督による「白夜」を鑑賞しました。これは57年に製作され、日本では翌年に公開されたモノクロ映画ですが、はじめて見たとときには運河を滑るように流れる船に乗った…

サラ金CMに出演するタレントたち

広告戯評 第1回サラ金の広告というのは、さまざまな規制もあるので、これまでその表現も露出も、多少とも遠慮がちのところがあったような気がします。やはり仕事が仕事ですし、かつて暴力団まがいの強引な取り立てを行ってお役所から営業停止をくらった会社…

ベルリオーズのオペラ「トロイ人」を視聴する

♪音楽千夜一夜第66回休日の雨の日、ベルリオーズの4時間になんなんとするオペラの超大作「トロイ人」をビデオで鑑賞しました。この長大なオペラの原作はローマの詩人ヴェルギリウスの「アエネイス」です。これはギリシア神話に出てくるトロイ戦争をめぐる…

さよならレーニン、こんにちはスウィトナー

闇にまぎれて bowyow cine-archives vol. 1「グッバイ、レーニン!」という02年にドイツで製作された映画を、衛星放送の録画で観ました。なんでもドイツで大ヒットしたそうです。これは89年にベルリンの壁が崩壊して東西ドイツが統一する前後の物語なの…

ゴールデンウイークに「私たちの隣人、レイモンド・カーヴァー」を読

照る日曇る日第254回「黄金週間」とはよく言ったものだ。僕たちはゆっくりと朝寝して、ブランチを食べたあとで近所の公園や遊園地まで散歩に出かけたりする。ベンチに座って深呼吸すればまぶしいほどの新緑に包まれた樹木が太陽に向かってすべての腕を伸…

ネクタイの歴史

ふぁっちょん幻論 第50回ネクタイは、17世紀にクロアチアの兵士が布を首に巻いたのが発祥だといわれています。 幅広スカーフ状の初期のものは、まずフランスのルイ14世が取り入れて欧米で流行したようです。これを日本にもたらしたのは幕末の1851年に遭難…

島田雅彦著「小説作法ABC」を読んで

照る日曇る日第253回法政大学における著者の講義を録音・加筆・編集して誕生したのが本書だそうです。じつは私は、最初こいつは世間によくある中身の薄い即席マニュアル本か、とたかをくくって読みはじめたのですが、最後の「私が小説を書く理由」のとこ…

朝日と日経と鎌倉朝日

バガテルop97&鎌倉ちょっと不思議な物語第177回 郷里の親がずっと朝日と日経を取っていたので、その惰性というわけでもないが、読売や産経や前進や赤旗や聖教よりはましだと思っていまも2紙を購読している。昔の朝日は漱石以来の伝統で文芸欄、それに…