蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

2011-05-01から1ヶ月間の記事一覧

西暦2011年皐月 茫洋狂歌三昧

♪ある晴れた日に 第92回 連休やB級映画の愉楽かな子等揃い菖蒲湯に浸かるめでたさよ蛇苺小さな朱と生まれけり美女が棲む隣家に紅しチューリップ万人を悼むがごとし万花咲く雨の月曜日は歌なんか歌えないパンクがわからないやつはパンクしろ!無より生まれ無…

小澤征爾指揮「賢い女狐の物語」を視聴して

♪音楽千夜一夜 第201夜オケはサイトウキネン、松本市文化会館で2008年に収録されたビデオだが、小澤の指揮は相変わらず単調だ。いつものように音色は透明であり、音譜の前後左右をまるで神経質な植木職人のように刈り込んであるが、いつものようにリズム…

小津安二郎監督の「東京物語」を視聴して

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.125血のつながっている子よりもつながっていない義理の子のほうがよく親に尽くすという話は昔からよくあるが、そんなありふれた世間話を野田東梧の脚本で前者を杉村春子が、後者を原節子が演じると映画史上不朽の名作…

梟が鳴く森で 第2部たたかい 第43回

bowyow megalomania theater vol.1 さらに頭蓋異常、眼球突出、視力障碍、重度知的障碍を併せ持つクルーゾン病の大本三郎、精神機能低下、興奮性、衝動性、不随意運動、痙攣等のハンチントン病患者の塩田安子も、「はあーい!」と明るく皆にあいさつしながら…

梟が鳴く森で 第2部たたかい 第42回

bowyow megalomania theater vol.1 まわりは星の子学園の仲間たちでいっぱいです。およそ百人はいたでしょうか。いや、もっとです。身体や精神に欠陥のある子供たちばかりです。ロイシン、イソロイシンの過剰排出、ケト酸尿、尿の楓糖臭、重度知的障碍、痙攣…

梟が鳴く森で 第2部たたかい 第41回

bowyow megalomania theater vol.1 二人、三人、四人と、殺意に満ちた警官たちが次々にバリケードを飛び越えて僕たちのとりでの内部に侵入してきました。血に飢えた体格の良い男たちは、僕と文枝と洋子の上から見境なく警棒を力任せに打ちおろし、僕たちの頭…

梟が鳴く森で 第2部たたかい 第40回

bowyow megalomania theater vol.1 「ズン!」と鈍い音がして、ジャイアント馬場はずってんどおとあおむけにひっくり返り、額の真中から真っ赤な血潮が薔薇の泉のようにこんこんと噴き上げるのを上目づかいに見上げてからすぐに息絶えました。公平君が次に襲…

梟が鳴く森で 第2部たたかい 第38回

bowyow megalomania theater vol.1 先頭に立って右手に拳銃を掲げたジャイアント馬場みたいな大男が、右手でハンドトーキーをとりあげて大声で怒鳴りました。 「お前たちはもはや完全に包囲されている。すみやかに武器を捨ててそこから出てきなさい!」 晩秋…

ご参考までに http://www.autism.or.jp/

軽々と青葉若葉を超えてゆくアオスジアゲハの秘かな哀しみ 茫洋

拝啓 日野原重明様

バガテルop135昨日、朝日新聞の日曜日の「be」の連載コラム「99歳私の証、あるがままに行く」で、「病名のつけ方を見直そう」という記事を拝読いたしました。そのおもな内容は、「認知症」はよく意味がわからない病名なので、英米がすでにそうしているよ…

ケータイ紛失余話

バガテルop134五月晴れの昨日、横須賀の歯医者さんの帰りに軍港の傍の公園に咲く満開の薔薇を夢中になって撮影しているうちにバカチョン携帯を失くしてしまった。こんな下らない文明の利器のおかげで我等の生活はまっとうなユマニテとクルチュールを紛失して…

トマス・ピンチョン著「?.」上巻を読んで

照る日曇る日第431回 おそらくは最初にプロットの組織図を前後左右、上下にB2の鉛筆で方眼紙に摸写するのだ。時代はいつ? 1955年、あるいは1922年その他その他。場所はどこ? ヴージニアの軍港ノーフォーク、NYのタイムズスクエアの地下5メート…

天皇の歴史04「天皇と中世の武家」を読んで

照る日曇る日第430回前半の「鎌倉幕府と天皇」は河内祥輔氏、後半の「古典としての天皇」は新田一郎氏の担当。桓武天皇の死後、平安時代の摂関期には平治の乱など全部で4つの不安定期があったようで、それらを「朝廷・幕府体制」を基調とした皇室の「正統」…

サイモン・ラトル指揮「マーラー全集」を聴いて

私がいくらロバの耳を澄ませても、いったいどういう音楽をやりたいのかさっぱり分からない音楽家は、アーノンクールや小澤やケント・ナガノやサバリッシュやブロムシュテットなどたくさんいるが、若くしてサーに功成り遂げたラトルもその一人だった。ところ…

カルロス・クライバーの1991年のウィーン・フィル演奏会ヴィデオ

♪音楽千夜一夜 第199夜 これはモーツアルトのハ長調K.425とブラームスのニ長調Op.73の2つの交響曲が楽友協会ホールで演奏されたもので、1993年にレーザーディスクで発売されましたが、現在はD?Dになっています。リンツの第1楽章ではクライバーの動き…

ダニス・タノヴィッチ監督の「ノーマンズ・ランド」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.1241992年〜95年のボスニア紛争をテーマにした戦争映画。ボスニア、セルビア両軍が対峙する塹壕の中で起こった小さくて大きな事件を描く。今となってはどちらがどう悪くて起こった戦争なのかもはや誰も論じよう…

林望の「謹訳源氏物語五」を読んで

照る日曇る日第429回庇護者の源氏や朝廷の名だたるイケメンたちから愛を乞われた内大臣の隠し子玉鬘だったが、結局は髭もじゃのださいオッサンの手中に墜ち、こんなはずではなかったと後悔するのだがもはや後の祭り。あっという間に赤子を孕ませられてしまう…

カルロス・クライバーのドキュメンタリー「目的地なきシュプール」を

♪音楽千夜一夜 第198夜今宵もクライバーのドキュメンタリーを視聴しました。昨年オーストリアで製作されたばかりの「Traces to Nowhere」という原題の映像で、エリック・シュルツという人が演出して不世出の天才指揮者の軌跡を辿ります。出演はブリギッテ・…

カルロス・クライバーのドキュメンタリー「ロスト・トゥー・ザ・ワー

♪音楽千夜一夜 第197夜 惜しまれつつ瞑目した史上最高の指揮者の一人の生涯の軌跡を関係者の証言で辿った音楽ドキュメンタリー。証言者のなかには、それにバイエルンのオペラでの凡庸な同僚サバリッシュなども登場してちょっと辛口のコメントを吐くが、それ…

フリードリッヒ・グルダの「DOCUMENTS盤10枚組」を聴いて

♪音楽千夜一夜 第197夜 グルダはかつて三馬鹿ならぬウイーンピアノ界の三羽烏の一羽と呼ばれていたが、どうして3羽はカラスなのだろう? 他の二羽はデムスとパドラスコダであるが、私は昔は最後の烏を一等愛していて彼がオイストラフと入れたベートーヴェン…

METによるロッシーニのオペラ「アルミーダ」を視聴して

♪音楽千夜一夜 第196夜もうロッシーニもルネ・フレミングもこりごりだ、と思っていたのに、2010年5月1日に上演されたこの演奏はだんだん良く鳴る法華の太鼓、最後はかなりの竜頭蛇尾ですが、もうもう見あきたセビリアの理髪師よりよっぽど新鮮で見ごたえがあ…

文化学園服飾博物館にて「ヨーロピアン・モード展」を見る

茫洋物見遊山記第58 回&ふぁっちょん幻論第63回 これぞ欧州200年モードの決定版。18世紀のロココ時代から、モーツアルトの時代のローブ・ア・ラ・フランセーズ、19世紀の英国のデイドレス、20世紀前半のイブニングドレスを経て、1969年のマリークワントのエ…

ジュリアン・ジャロルド監督の「キンキーブーツ」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.123 2005年製作の英国映画です。監督はジュリアン・ジャロルド、俳優もなんたらかんたらちという未知の人たちですが、ノーザンプトンに実在する老舗靴メーカーが生き残りを賭けてニッチの女男靴マーケットへの転身を図…

「田村隆一全集」第5巻を読んで

照る日曇る日第428回&ある晴れた日に第91回 鎌倉村の小学校の前に小さな文房具屋さんがあって、その隣には樹齢百年は優に越えた巨大なユリノキ、別名ハンテンボクがそびえているが、小学校の校庭の中にも大きな樹木がそびえていて当時この学校に通っていた…

鎌倉国宝館にて「鎌倉の至宝展」を見る

茫洋物見遊山記第57 回&鎌倉ちょっと不思議な物語第240回 なんでも平成21年から2年間にわたって修理されていた建長寺につたわる中国元朝の「白衣観音図」が今回の目玉のようですが、私がいちばん面白かったのは近所の光触寺の所蔵にかかる「頬焼阿弥陀縁起…

METによるトマ作曲のオペラ「ハムレット」を視聴して

♪音楽千夜一夜 第195夜 2010年3月27日にNYのメトロポリタン歌劇場で開催されたこれまで聴いたこともないオペラでしたが、基本的にはシェークスピアの原作をベースにしたお話で、主役のハムレット役のサイモン・キーンリーサイドとオフェリア役のマルリ…

高橋源一郎著「さよなら、ニッポン」を読んで

照る日曇る日 第427回かつて夏目漱石はその文学論の中で「およそ文学的内容の形式は(F+f)なることを要す。Fは認識的要素、fは情緒的要素なり」という有名な定義からあの快刀乱麻の独断と偏見を開始し、かの泰斗小西甚一は雅と俗のキーワードであの膨大な…

東博にて「写楽展」を見る

茫洋物見遊山記第56回 総数160点を超える東洲斎写楽の作品を一堂に集めた、これぞ空前にして恐らくは絶後であろう展覧会を見物してきました。 作品の大きさに対して会場の空間が広すぎるという問題はありますが、黄金週間いな大震災に見舞われた本年度一…

根岸吉太郎監督の「探偵物語」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.122 1983年に角川春樹が「遠雷」の根岸監督、脚本の鎌田敏夫、主演に薬師丸ひろ子。松田優作を起用して制作した赤川次郎原作の探偵ごっこラブムービー。音楽の松本隆や加藤和彦、大滝詠一を含めて当時のタレントを…

ギイ・ハミルトン監督の「地中海殺人事件」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.121前作が興行的に成功したからでしょうか、1982年にまたしてもアガサ・クリスティ原作の同工異曲の観光探偵映画が制作されました。しかもピーター・ユスチノフ扮するポアロやジェーン・バーキンなどが本作にも登…