蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

梟が鳴く森で 第2部たたかい 第38回

bowyow megalomania theater vol.1

先頭に立って右手に拳銃を掲げたジャイアント馬場みたいな大男が、右手でハンドトーキーをとりあげて大声で怒鳴りました。
「お前たちはもはや完全に包囲されている。すみやかに武器を捨ててそこから出てきなさい!」
晩秋の静けさをいっきに破るスピーカーからのだみ声に驚いて、ケヤキの上のブッポウソーと杉の木の上のカラスとモミジの樹上で眠っていたジョウビタキがあわてて空高く飛び出していきました。

僕は一瞬、それらの鳥たちになりたい、と思いましたが、そう思っただけで卑怯者になったような気がして、「くそおー」と声に出して立ちあがりました。

くそおー、来るなら来てみろ。お前ら、みんな皆殺しにしてやる!

と大声で怒鳴っている自分が、自分で信じられないのですが、しかし自分は確かにそれらの言葉を警官たちに向かって喚いたのです。

ジャイアント馬場がスピーカーを投げ捨て、ピストルを大空めがけて1発発射すると、それを合図に数百人の警官隊が不思議なお家まがけて一斉に突撃してきました。



この頃日本全国死ぬ人多しそろそろ自分の番かと思う 茫洋