蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

2012-07-01から1ヶ月間の記事一覧

西暦2012年文月 蝶人狂歌三昧

ある晴れた日に 第112回 われらは生きている1$79円99€の明るい living hellに どこからきてどこへゆくのか誰ひとり知る者はなく日々は流れやがてわれらも去る 夕間暮れ君と歩けば茜雲消えゆく空にカナカナ鳴きたり けふ大暑「退会したユーザー」が妙に気…

「ザ・デッカ・サウンド50枚組CD」を聴いて

♪音楽千夜一夜 第272回 50枚で8000円ということは1枚160円で名門デッカの名演奏が楽しめるというまるで夢のようなCD選集です。ケルテスのドボルザーク、ウイーン八重演奏団のベートーヴェンやメンデルスゾーン、リンカーンセンターにおけるサザ…

ビリー・ワイルダー監督の「七年目の浮気」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.284結婚七年目を迎えたトム・イーウエル選手が、妻子をリゾートに送り出した夏の盛りにマリリン・モンローによろめくウエルメイドのリーマン・コメディ一幕物。冒頭、妻子を避暑地に送り出した先住民のマンハッタン族…

片山杜秀著「未完のファシズム」を読んで

照る日曇る日第526回 「持てる国」英米ロと「持たざる国」日本の余りにも大きなギャップ、これが本書のキーワードです。国土に資源なく、人こそ満ちたれどそれを養い育む科学技術産業も剰余豊かな文化文明もない日本を、いかにして文武両道を兼備した欧米並…

舛田利男監督の「二百三高地」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.283駄優、あおい輝彦を主人公に、往年の有名スターがどっさり出演している日露戦争夜話であるが、演出がひどすぎる。恋人を戦地に送り出した新婚ほやほやの夏目雅子をフューチャーしながら、さだまさしの聴くだに恥ず…

ビーバン・キドロン監督の「ブリジット・ジョーンズの日記きれそうな

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.283 ヒロインのレネー・ゼルウィガーとヒーローダーシー役のコリン・ファース、そしてその強力なライヴァル役であるヒュー・グラントは前作に引き続き出演しているが、なぜか監督が変わった。でも変わっても演出がとく…

シャロン・マグアイア監督の「ブリジット・ジョーンズの日記」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.282 ちょっとおでぶでちょっと可愛らしい女子ブリジット・ジョーンズ(レネー・ゼルウィガーが好演)を主人公とするうれしかなしいトタバタ恋愛物語です。男(女)はどうしても顔が綺麗で体がスリムな女(男)に惹かれ…

相米慎二監督の「お引っ越し」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.281 1993年に製作された夫婦の離婚とその波紋を描いた人情噺。父親が中井貴一、母親がなんと桜田淳子、彼らの一人娘に田畑智子という異色のキャスティングが面白い。ちなみに田畑智子は本作が映画デビュー、桜田淳…

森史朗著「ミッドウェイ海戦第二部」を読んで

照る日曇る日第525回 第2部ではいよいよ決戦の時を迎えた日米両軍の死闘が膨大な資料を読み込み、最新の取材を駆使して分刻みで「事実」が詳細に再現・検証されるが、ここでも特徴的なのは日本側の指導者たちの油断であり脳天気であり白痴的な思い込みと非…

森史朗著「ミッドウェイ海戦第一部」を読んで

照る日曇る日第524回真珠湾の奇襲で大戦果を挙げたばかりの世界に冠たる大日本帝国艦隊が、そのおよそ半年後の1942年6月5日の中部太平洋沖でいったいどうして主力空母4隻撃沈という惨憺たる敗北を喫したのかかねがね疑問に思っていたので手に取ったの…

川西政明著「新・日本文壇史第8巻」を読んで

照る日曇る日第523回「女性作家の世界」と題された本巻に登場するのは、佐多稲子、岡田嘉子、田村俊子、伊藤千代子、杉山智恵子、西沢あさ子、平林たい子、林芙美子、宮本百合子、野上弥生子、湯浅芳子、森茉莉、幸田文、井上荒野、岡本かの子、宇野千代、金…

東京新宿文化学園服飾博物館で「アフリカの染織」展を見て

ふぁっちょん幻論第71回&茫洋物見遊山記第89回 ここのところ、アフリカの政治経済文化活動はいちじるしく停滞低迷を続けていますが、欧米とアジアの繁栄が終息する半世紀後にこの現生人類を生んだ母なる大陸の存在がふたたび輝かしい光彩を放つであろうこと…

ソウル・ディブ監督の「ある公爵夫人の生涯」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.280レイ・ファインズ演じる公爵とキーラ・ナイトレイが演じる公爵夫人の問題コンビが何と言っても素晴らしい。むかしこういうオキャンな同級生がいたが今頃どうしているのやら。それにしても17世紀後半の英国社会っ…

クリント・イーストウッド監督の「インビクタス」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.279 27年間投獄されていたネルソン・マンデラが、南ア共和国の大統領になる。白人と黒人の対立解消に心を砕き、いろいろ苦労するのだが、1995年のラグビー世界選手権に奇跡の優勝を遂げることを通じて国内の敵対…

古澤憲吾監督の「ニッポン無責任時代」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.278 植木等が自称日本一の無責任男になって大活躍するといいう1962年製作のアホ馬鹿映画だが、根本的なアホ馬鹿映画ではなくてその背後に通底する暗さとその全体を覆う妙に背伸びした強勢感、圧迫感が最後まで気に…

アナトール・リトヴァク監督の「さよならをもう一度」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.277&♪音楽千夜一夜 第271回 歌を忘れたカナリアのような夫イヴ・モンタンのつれなさにいたく傷つき、「踊れないダンボ」のような鈍い演技を見せるイングリッド・バーグマンが、神経衰弱患者のようなエキセントリック…

トマス・ピンチョン著「LAヴァイス」を読んで

照る日曇る日第523回 ロスの私立探偵が70年代の洛陽悪徳都市で例によって例のごとく繰り広げるという、まあんずアホ馬鹿パラノイア物語だなあ。ここでは60年代の明るい歌と踊りは影をひそめ、ニクソン流の新資本主義と現実主義が新たな法と秩序の締め付…

ヴィクター・フレミング監督の「オズの魔法使い」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.276 主人公のジュディ・ガーランドが愛犬を意地悪ばあさんにいじめられて行き場所がないといって、いきなり『オーバー・ザ・レインボウ』を少女なのか大人なのかわからない声で歌い始める。それがかの「虹の彼方に」と…

マーク・ローレンス監督の「噂のモーガン夫妻」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.2772009年製作のいかにも最近のハリウッド出来の軽佻浮薄な即席コメディ。NYでテロリストに命を狙われた元夫婦がワイオミンングの田舎に緊急避難しているうちにだんだん鞘が戻るというお粗末な一席。原題は「Did…

シェーカル・カブール監督の「エリザベス」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.276 エリザベス女王をケイト・ブランシェットが、スコットランドのメアリー女王をファニー・アルダンが演じているが、後者は前者より年齢が若いのでこの配役はおかしい。むしろ逆にした方が良かったかもしれない。それ…

ポール・オースター著「ブルックリン・フォリーズ」を読んで

照る日曇る日第522回 朝日新聞の朝刊で、もはや何の噺だったのかも分からず意味不明の学校ネタと自動車ネタを小林秀雄の晩年の講演会の如く垂れ流している奥田英朗、伊坂幸太郎。そして吹けば飛ぶよなこんにゃく文体で下らないヨタ噺を書き飛ばして原稿料を…

森崎東監督の「時代屋の女房」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.275 村松の原作は読んだことがないが、渡瀬恒彦が演じた映画の主人公と違って、私は夏目雅子が演じた女房のキャラクターの流動性と不確定性にまったく魅了されなかった。野良猫のように野性的で気まぐれな女はそれなり…

根岸吉太郎監督の「ウホッホ探検隊」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.274この監督で私がいたく感じいったのは「ひとひらの雪」(津川雅彦の名演!)だったが、出来不出来もある人で、「探偵物語」とかこの作品ではその実力はほとんど発揮されていないといえよう。 そもそも田中邦衛が藤真…

山崎貴監督の「ALWAYS三丁目の夕日」正続編を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.272&273 あんまり世間ラアラア騒ぐのでずっと見ないでいたのですが、どこか生理的快感が湧きだす不思議な映画でした。昭和30年代の東京に生きる人々を主人公にしたお話だからそうなるのではなくて、原作者や製作ス…

「ロリン・マゼールの芸術」30枚組CDを聴いて

♪音楽千夜一夜 第270回昔むかし音響効果が犬小屋のように最悪なNHKホールの、しかも3階席で、N響を振る内外の指揮者たちの演奏を聴いていましたが、弱音はほとんど届かない。仕方なく2時間丁度居眠りをしてから立ち去っておりました。ところがある時、…

ジェームズ・アイボリー監督の「日の名残り」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.271カズオ・イシグロの小説をハロルド・ピンターが脚色し、ジェームズ・アイボリーが映画化した威風堂々の文芸映画。主人公の執事を演じるアンソニー・ホプキンスと女中頭役エマ・トンプソンの好演でいにしえの英国貴…

スティーヴン・フリアーズ監督の「クイーン」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.270ダイアナ妃の交通事故死への対応を誤ったために危機に陥った当代の英国エリザベス女王(ヘレン・ミレン)を、当時のブレア首相(マイケル・シーン)が献身的に救助するという感動?の物語。 皇室には冷淡であってよ…

山田洋次監督の「馬鹿まるだし」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.269ハナ肇が無法松のような役回りで桑野みゆきのご新造さんを恋い慕うというどこかで見たり聞いたりしたような人情ヨタ噺。演技以前のハナの周囲をクレイジーキャッツの面々が取り囲んで観客を笑わせようとするが、た…

アンドリュー・マクラグレン監督の「大いなる決闘」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.268原題は「最後の硬派男」なので、こういう訳のわからない邦題はやめてもらいたい。かつて保安官のチャールトン・ヘストンによって逮捕されたならず者のジェームズ・コバーンが、牢屋から出てきてヘストンの娘を誘拐…

栗山富夫監督の「釣りバカ日誌3」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.267 わたしのようにそれなりのリーマン生活を送った人間としては、いかに釣りの師匠と弟子とはいえ、同じ会社の中で社長と社員がプライベートな場面で上下関係が逆転とはいかずともほぼ対等になれるという関係性に驚く…