2008-10-01から1ヶ月間の記事一覧
♪ある晴れた日に 第45回 小学生の女の子が 降りしきる雨の中を らあらあと大声で歌いながら 遠ざかって行った雌に食われし 蟷螂の雄 やれ嬉しや やれ悲しや戦艦長門の 停泊したる 軍港にて聴けり シエラザード嫋々と 艶なる歌を歌うなり ミストレス独奏の …
照る日曇る日第182回車谷長吉氏が伴侶の順子さんと同行二人で出かけた、はじめは読んで面白く、ときおり笑ってしまって、最後は悲しくなってしまう一大お遍路日記である。夫婦二人だけの句会が泣かせる。車谷長吉はエグイ人だ。どんくさい人だ。毎日なん…
照る日曇る日第180回本書は「日本社会の歴史」という題名になっているが、「日本国の歴史」の本ではない。「日本」とは期間限定の国制であるから、西暦7世紀後半というはじめと終りがあることを私たちは著者によってはじめて知らされた。日本が日本にな…
照る日曇る日第180回「悪い奴ほどよく眠る」の3年後、黒澤はまたしても悪の問題を取り上げた。「天国と地獄」である。丘の上の天国には、成功した資産家がたのしげに暮しており、日の当たらないその麓では、貧民たちの地獄が横たわっている。日常をあく…
照る日曇る日第179回 江戸時代の法律の適用は厳格なものだったが、仇討ちを是認するおおらかさもあった。公的権力による裁判と処刑に依存せず、決闘、私闘による最終決着を許すヒュウマニズム的な領分を残していたのである。得体のしれない裁判官やはやり…
照る日曇る日第178回&鎌倉ちょっと不思議な物語145回 私がいっとう好きな美術館が、神奈川県立近代美術館鎌倉と「ここ」です。八幡様の境内のなかの木立ちのなかにひっそりとたたずむ校倉造の小さな建物。いつ行っても人影がまばらで心ゆくまで仏像や…
照る日曇る日第177回&鎌倉ちょっと不思議な物語144回 重い木材を衝立のように並べ、その表面を岩絵具で塗りたくり、よく見ると象や魚や鳥や獅子や怪獣やらをおどろおどろしく描いたものが警備のガイド嬢のほかは無人の会場に次々現れるので驚いてしまっ…
♪音楽千夜一夜第49回これまでおよそ1か月にわたってちびちび舐めるように聴き続けてきたソニーBGMグループより限定発売の「BAROQUE MASTERPIECES全60枚」が昨夜でようとう終ってしまった。最後に残った61枚目は曲目リストで、バッハからヴィヴァルディ、ブ…
♪音楽千夜一夜第48回落ち目の米帝原子力空母によってしかと鎮護されている軍港横須賀を訪ね、まるでカーネギーホールを思わせる素晴らしい音響を誇る「よこすか芸術劇場」にて、はじめて横須賀交響楽団の演奏を聴きました。最初のチャイコフスキーの「スラブ…
♪音楽千夜一夜第47回正しく8分休止のあと、スタインウエイが軽やかに鳴り、次のトゥッティまで12小節の短いソロ楽句が、樋を伝う水のようにさらりと流れた。それはまことに息をのむような瞬間であった。思わず座り直したヴァイオリンもあれば、オーボエの…
♪音楽千夜一夜第46回 さて翌11月19日、イタリアの空は青く澄み、ローマの秋は明るい日差しの中に快く暖かい。午前10時、聖天使城の舞台にはピアノが据えられ、配置の楽員が席につき、私は指揮台に上がって、オーケストラの立礼を受けたが、独奏者の姿…
♪音楽千夜一夜第45回私の敬愛するミク友である「ぽんぽこ」さんが、吉田秀和氏やグレン・グールドについて書かれていたので、はしなくも思い出したことがある。それは偉大なる指揮者朝比奈隆氏が1974年にグールドの「ヴェートーヴェン・ピアノ協奏曲全集…
照る日曇る日第176回昔は純文学と大衆文学の区別だとか芥川賞と直木賞とではどちらがえらいかとか徹夜で議論したものだが、最近はそのどちらも大幅な平価切り下げが断行されて、我々一般大衆から見れば、いまや八百屋のキャベツかジャガイモ程度の値打ち…
照る日曇る日第175回中国の怪奇小説集「聊斎志異」を原作とする幻想的な幽霊映画である。青年が死んだはずの美しい女性の幽霊に恋をしたり、幽霊の大王と戦ったりする荒唐無稽なホラームービーであるが、洋の東西を問わず数多くの幽霊映画が製作されるの…
照る日曇る日第174回誰にしても学生時代の交友関係は、相当あとを引くようだ。その当時の仲間と時を経ながらも浅く、深く付き合い、時に憎み合い、たまさか愛し合い、稀に結婚したり、時折は別れたりもする。そうして終生貴重な友情を保ちながら、歳月と…
♪バガテルop71先日突然刑事がやってきた。若い体育会系の男性なので、大嫌いな読売新聞の勧誘員かと思ってドアを閉めようとすると、K県警の警察手帳と名刺を出したので、仕方なく玄関口に入れた。聞けば振り込め詐欺の捜査をしているという。話せば長くなる…
照る日曇る日第173回2007年のベルリン国際映画祭やチェコ金獅子賞を獲得したイジー・メンツェル監督の最新作「英国王給仕人に乾杯!」を試写会で見ました。原作はミラン・クンデラと並ぶチェコ現代文学の巨匠ボフミル・フラバルだそうですが、私はま…
照る日曇る日第172回 濃い金木犀の匂いに誘われるように上野公園を歩いて「フェルメール展」をのぞいてきました。会期ももうすぐ終わりそうだし、なんと本物を7点もまとめて見られるそうだし、連日のように新聞が特集しているので、急いで駆けつけてはみ…
♪バガテルop70新約聖書のコリント書だかヨハネ伝に「信と望と愛のうちもっとも大いなるものは愛である」と書いてあったように記憶している。どうして覚えているかというと、私の郷里の墓地の標識の古い石に、祖父の字で「信望愛」と書かれているからだ。しか…
照る日曇る日第171回久しぶりにドストエフスキーを手に取った。話題の光文社版ではない。手垢のついた米川版である。昔から雑誌は改造、文庫は岩波、浪曲は廣澤虎造、小唄は赤坂小梅、沙翁は逍遙、トルストイは中村白葉、ドストは米川正夫と相場が決まってい…
照る日曇る日第169回「ベン・ハー」はこの作品だけだと思っていたが、1907年と1925年の2回にわたって映画化されており、ウイリアム・ワイラー監督による1959年製作の本作が3回目だというので驚いた。とにもかくにもあの血わき肉踊る戦車競…
照る日曇る日第168回 雨上がりの月曜日の午後、心ゆくまでピカソの2つのピカソ展を堪能しました。いつどこで鑑賞しても私の目と心を楽しませてくれるピカソですが、今回の国立新美術館&サントリー美術館あわせて200点以上の大回顧展は、1901年か…
照る日曇る日第167回平成万年失業者じゃによって今月も仕事にあぶれているものだから、BSで放送されていた「男たちの挽歌」という香港映画を3本も見てしまった。チョウ・ユンファを一躍スターダムに押し上げたホンコン製フィルム・ノワールだそうだが、…
照る日曇る日第167回93年の第1作は東京の夜間中学に通う国籍、年齢、性別もさまざまな生徒と熱血教師(西田敏行、竹下景子)が繰り広げる教育愛の物語。田中邦衛演じるイノさんの話が中心だが、中国からやってきた若者の就職口に悩む竹下の演技や突然…
♪音楽千夜一夜第44回2001年5月にミラノ・スカラ座で行われた公演。伯爵のリチートラと女占い師が立派に歌っている。クレギナのアメリアは最初は不調だが、徐々に乗ってくる。演出は女性映画監督のリリアナ・カヴァーナだが特にどうということはない。強…
♪音楽千夜一夜第43回05年12月5日、ミラノ・スカラ座におけるモーツアルトのオペラ「イドメネオ」の公演記録である。指揮はこれもたまたまダニエル・ハーディング。古楽の奏法を要所要所で世界一のオーケストラに強いて、いわゆるひとつの現代風の演奏に…
♪音楽千夜一夜第42回2002年のモーツアルト・イヤーに南仏エクサン・プロバンスの大司教館の中庭で行われたライブ公演である。 若き俊才ダニエル・ハーディングが古楽演奏のマーラー室内管弦楽団を勢いこんで振るのだが、ティンパニーの強打も夏の夜空に…
照る日曇る日第166回大東亜戦争当時の日本は、国も国民も異常だったが、広告も異常だった。「撃ちてし止まん」、だの「欲しがりません勝つまでは」、だの「七生報国」などという大政翼賛会のおかかえコピーライターが書いた見事な?檄文に産業界は一斉に…