蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

ムーティ指揮ヴェルディ「仮面舞踏会」を観る


♪音楽千夜一夜第44回

2001年5月にミラノ・スカラ座で行われた公演。伯爵のリチートラと女占い師が立派に歌っている。クレギナのアメリアは最初は不調だが、徐々に乗ってくる。

演出は女性映画監督のリリアナ・カヴァーナだが特にどうということはない。強いて言えば3幕の墓場の装置がシンプルで良いのと、2場の舞踏会の群衆シーンの処理くらいか。ポネルやゼフィレッリに比べるとなんと凡庸な演出であるかと思うが、最近のあほバカ演出家どもと違って英国から独立して間がない米国という歴史的現実を踏まえた舞台なので安心して見ていられる。

ムーティの指揮は例によって立派だが、いささか退屈である。

最後に昨今のクラシック界についてひとこと。
のだめだかくそだめだか知らないが、猫も杓子もクラシックにまたたびのように寄り付いてうっとりするのはいい加減にやめてほしい。昔は非国民しかこの種の音楽を聴かなかったものだ。モーツアルトの音楽であなたの息子の頭が突然良くなったり、ねむの木の葉っぱがぐっすり眠ったりするわけがないのだ。それからモーツアルトを歯医者やデパートでBGMで気安く流すな。あれは癒しどころか死霊の音楽である。うかつに耳にすると祟られて霊魂を彼岸に持っていかれるぞよ。

それから中欧の聞いたこともない寄せ集めオペラや世にも怪しい管弦楽集団の来日金稼ぎ公演にいくら金持ちだからというてみだりに大枚をはたくな。この外国かぶれの耳なし芳一め。そんなに朝青龍を見たいか。もっと価値のある国内公演がどっさりあるぞ。特に各地のアマチュアオケの演奏は腐敗堕落したNHK皇居楽団の何層倍も心を撃つぞ。ニャロメ。


帝国と己を癒着させ強き日本を呼号する人 茫洋