蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

2009-08-01から1ヶ月間の記事一覧

西暦2009年文月茫洋歌日記

♪ある晴れた日に 第64回 政権の交代求め民動く世が変わるとはかくのごとし理非にあらず曲直も問わず遮二無二人は旧きを倒すかねてよりのわれの望みを叶えるはわれならぬリヴァイアサンの蜂起なりしか神の手が至高の演奏を作るなりカラヤンごっこは今日も続…

叫びと囁き 網野善彦著作集第14巻「中世史料学の課題」を読んで

照る日曇る日第286回 中世の人々にとって音声や楽器などの「音」はどんな意味を持っていたのでしょう。 まず著者は、寺や神社の梵鐘や鰐口は日常と聖なる世界を結びつける役割を果たしていたのではないかと指摘します。(本書「中世の音の世界」参照)今…

白砂青松

バガテルop111明日は半世紀に一度、いやそれ以上というとっておきの楽しみがあるわけですが、今日は今日の楽しみを求めてまたもや由比が浜で泳いできました。今年17回目の海水浴です。泳ぎながらまだ出羽三山の思い出に浸っています。いずれの山でも低…

出羽三山を訪ねて

バガテルop110火曜日から木曜日までの3日間、蔵王・月山・鳥海山のツアー旅行に参加してきました。出羽三山プラス鳥海山の四山探訪というわけです。第1日は東京駅を朝の8時8分に出るやまびこに乗って福島駅まで。そこからは観光バスに運ばれて蔵王の…

ロベルト・アバド指揮の「エルミオーネ」を視聴する

♪音楽千夜一夜第78回 昨年の8月にイタリアのペーザロで開催されたロッシーニ・オペラフェスティバルで上演された「エルミオーネ」を衛星放送の収録で鑑賞しました。演奏はロベルト・アバド指揮のボローニャ市立歌劇場管弦楽団、美女ぞろいのプラハ合唱団…

アップダイク著「クーデタ」を読んで

照る日曇る日第285回 アラビアのロレンスがやったように、どこか遠いところ、たとえばアフリカのサハラ砂漠の近くの発展途上国の政治経済や社会をその国の心ある人たちとともに変革することは、冒険心豊かな先進国の男たちの野心をむやみと掻き立てるよう…

リヴァイアサンの蜂起

バガテルop109きのう由比ガ浜の海で亡くなられた2人の若者に深く哀悼の意を表します。今日その同じ海で、泳いできました。監視員が2段固めのシフトで厳重に警戒し、「膝の高さまでのところで泳いでください」と声をからして叫び、沖に出る人たちに対し…

2つの美術館

バガテルop108 今日も午後から由比が浜へ行きましたら、赤旗が立って救助用のヘリコプターが2機ホバリングしています。きっと誰かが海で溺れたのでしょう。そのまま材木座へ行くと黄色い旗が風に靡いていましたが、結局青旗の逗子海岸で泳ぎました。浜か…

幻の魚

鎌倉ちょっと不思議な物語第203回夏といえば海、海といえば由比ケ浜、由比ケ浜といえば鰹、鰹といえば徒然草と山口素堂でしょうか。兼好法師は徒然草の第百十九段に「鎌倉の海に、鰹と言ふ魚は、かの境ひには、さうなきものにて、この比もてなすものなり…

竹橋で「ゴーギャン展」を見る

照る日曇る日第284回 閉店間際で混みだす前に、と思って東京国立近代美術館で9月23日まで開催中の「ゴーギャン展」に行ってきました。出品は全部で53点とそれほど多くはないのですが、とにもかくにも彼の代表作の「我々はどこから来たのか、我々は何…

由比が浜vs逗子海岸

バガテルop107&鎌倉ちょっと不思議な物語第203回 昨日の逗子海岸行きで今年の海水浴も12回目となりました。例年ですとこの時期には土用波が押し寄せ、大中小のクラゲが現れるのですが、台風8号の余波と数匹のクラゲ攻撃はあったものの、概して今年…

平野啓一郎著「ドーン」を読んで

照る日曇る日第283回 「私小説は自慢話である。自分は絶対に書かない」ときっぱり否定するこの人。その言うや良し、です。私が最初に読んだ彼の作品は、ショパンやドラクロワやジョルジュ・サンドがまるで史実のように動き回る面白いロマンチック小説でし…

神奈川県立近代美術館葉山の「画家の眼差し、レンズの眼」展を見る

照る日曇る日第282回海水浴の前に神奈川県立近代美術館の葉山分館へ行って「画家の眼差し、レンズの眼」近代日本の写真と絵画展を見ました。高橋由一の地方の県庁などの絵がたくさん並べてありましたが、いずれもそのトーンの暗さに驚きました。ワーグマ…

月下美人咲く

♪ある晴れた日に 第63回 六人の美女訪れし月夜かな 茫洋月の下美人が戻るお盆かな 老舗滅び月下美人咲く夕べかな

西瓜の味

バガテルop106今日も今年10回目の海水浴から帰ってきました。毎日のように少し昼寝をして、午後から1時間だけ海水浴に行くのです。そして帰りには逗子池田通りのウララ果物屋さんで大きな三浦西瓜を買ってきて食後にいただきます。げに、西瓜ほど美味…

恐るべきトライアングル

♪音楽千夜一夜第77回リストのピアノ協奏曲などは最近ほとんど耳にする機会もなくなりましたが、20年ほど前にはかなり人気があって時々演奏されていました。ある日都の乾の方角にあって、教授陣の大半が2流、3流ではあるけれども、学生と演劇とオーケス…

野地蔵

鎌倉ちょっと不思議な物語第202回御所見直好という人の書いた「鎌倉路」(集英社文庫)というガイドブックほどミクロに徹した鎌倉案内書もそうざらにはないでしょう。類書などでは歯牙にもかけない名所旧跡の脇の、その奥を探訪し、そこに棲む生物や四季…

日経広告研究所編「基礎から学べる広告の総合講座」を読む

照る日曇る日第281回日経が毎年出しているこの本は、日経広告研究所が毎年開催している有料セミナー「広告の理論と実際の総合講座」の内容を1冊にまとめたものです。 最新の「2009年版」でも20名の著者が総論から各論までの20の講義を展開してい…

カラヤンの映像作品を視聴する

♪音楽千夜一夜第76回 このところNHKの衛星放送でカラヤンのベートーヴェン、ブラームス、チャイコフスキーの映像記録を放映していました。いずれも1970年代の初頭にユニテルが35ミリでビデオ収録した貴重な映像です。どこが貴重かといえば、これ…

不純な視点

♪音楽千夜一夜第75回 パソコンに向かって仕事をしながらテレビをつけていましたら、突然モーツアルトのバイオリンソナタの変ロ長調K454の有名な旋律が流れてきました。音程だけは正確な清潔で、まずは丁寧な演奏といえるでしょうが、言葉ありて心足ら…

残暑お見舞い申し上げます

♪音楽千夜一夜第74回 前回話に出てきたヨセフ・カイルベルトですが、去る8月3日の夜にブラームスの1番を聴き、その真率の気に満ちた演奏に驚嘆しました。1968年5月のN響とのライブですが、彼は帰国わずか2ヶ月後の7月に「トルスタンとイゾルデ…

続 暑中お見舞い申し上げます

♪音楽千夜一夜第73回 オペラ以外のお買い得、聞き得CDもいろいろありました。まずはドイッチエ・グラモフォンのブラームス全集全46枚組のセットです。 これまで4つの交響曲をはじめ管弦楽曲を中心にさんざん聞きかじってきたブラームスですが、このセ…

クロード・レヴィ=ストロース著「パロール・ドネ」を読んで

照る日曇る日第280回「パロール・ドネ」などという正体不明のタイトルですが、なんせあの人類学の最長不倒距離翁クロード・レヴィ=ストロースさんの名著を中沢新一選手が翻訳された「渾身の本邦初訳」とあらば手に取らずにはおられません。どこが渾身な…

暑中お見舞い申し上げます

♪音楽千夜一夜第72回拝啓H様関東地方ではずいぶん早くから梅雨明けとなり、小生も家族ともども何回か海水浴を楽しんで参りましたが、その後は晴れたり降ったり霧がかかったりでどうもすっきりしないお天気です。そちらの夏はいかがでしょうか。きっと例年…

「谷川雁セレクション2・原点の幻視者」を読みながら

照る日曇る日第279回平成天皇が百済の武寧王の子孫なら、己の出自を高麗人と宣言してはばからない南の孤高の詩人谷川雁が、これまた北の孤高の思想家宮沢賢治に透視していたもの、それは「倭」の鎮西弓張月の巨大な孤の「極北」でした。倭を形成していた…

続「谷川雁セレクション?」をめぐって

照る日曇る日第278回「私のなかにあった『瞬間の王』は死んだ」と告知して、詩人谷川雁が永久に試作を放棄し、アルチュール・ランボオのように工作者として荒々しい現実に突入したのは1960年の1月6日のことでした。 しかし遅れてやってきた後世の若…

「谷川雁セレクション?」をめぐって

照る日曇る日第277回「連帯を求めて孤立をおそれない」という言葉を発した谷川雁が、戦後を代表する天才的な詩人であることは、彼が残したごくわずかな詩篇を読んだ人にはあきらかでしょう。以下は、もう今では誰もが忘れてしまったある革命家をうたった…

「大庭みな子全集」第1巻を読んで

照る日曇る日第276回&遥かな昔、遠い所で第87回「三匹の蟹」と聞いて思い出すのは、遠い昔のある情景です。私たち三人の孫を率いた祖父は須知山だかどこかの街道筋の山峡のバス停でいつ来るとも知れぬバスを待っていました。待っても待ってもバスは来ま…