蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

2014-06-01から1ヶ月間の記事一覧

なにゆえに第6回~西暦2014年水無月蝶人花鳥風月狂歌三昧

ある晴れた日に第246回 なにゆえにあなたは微笑みながら眠ってる九十四歳なのに少女の貌で なにゆえにわが子のシリトリは続かないの頭の中が尻切れトンボだから なにゆえにこのジャムの蓋は固いのか老人年寄りばかりの世の中なのに なにゆえに日記に符牒…

鎌倉文学散歩―長谷方面―に参加して

茫洋物見遊山記第151回 &鎌倉ちょっと不思議な物語第317回 恒例の春の文学散歩に参加して長谷方面を歩きました。今回は高徳院の大仏様、川端康成邸のすぐ近所の甘縄神明宮、稲瀬川周辺を経て鎌倉海浜ホテル跡までの短い半日コースです。 鎌倉大仏の後ろ…

トム・ハンクス監督・主演の「アポロ13」をみて

bowyow cine-archives vol.655 かのアームストロング船長のように月を歩きたいと願った宇宙飛行士が、飛行船の突発事故に出遭って、地球で待つ愛する家族の元へ無事に帰還したいとそれだけを望み、スタッフの超人的努力によって奇跡的な生還を果たすという、…

2001年~2014年のファッション・トレンドを振り返る その10

ふぁっちょん幻論 第90回 12年春夏イタリア・メンズコレ=ピッティ・ウオモ、ミラノも色押さえ、加工から「素材」へ。 12年春夏パリ・オートクチュール=はかなく、ロマンチックに。繊細に匂い立つフェミニン。シャネル、ヴァルサーチなど豪華さよりも…

「MOZART 111 MASTERWORKS」を聴いて

音楽千夜一夜第331回 モーツアルトが好きな人にはお薦めの、なんと111曲55枚組CDの選集です。 生きていても正体不明の怪人アーノンクールの「フィガロの結婚」のように生命力皆無の青菜に塩の駄作もあるけれど、死んでもなお元気なベーム翁の「魔…

「ロッタちゃんと赤いじてんしゃ」をみて~「これでも詩かよ」第90番

ある晴れた日に第245回&bowyow cine-archives vol.654 ロッタちゃんは嫌味な女の子 ロッタちゃんはいじっぱりな女の子 ロッタちゃんはジコチュウな女の子 でもロッタちゃんはやっぱり可愛い女の子 ロッタちゃんは嫌味な女の子 家族やおばさんから素敵な…

小嵐九八郎著「我れ、美に殉ず」を読んで

照る日曇る日第714回 久隅守景、英一蝶、伊藤若冲、浦上玉堂というある意味では江戸時代を代表する 四人の画家の創作的伝記小説です。 江戸時代の社会と文化、日本美術史、そして所謂奇想の美術家について広く深く研究した成果の上に、それぞれの画家にい…

アリス・マンロー著「林檎の木の下で」を読んで

照る日曇る日第713回 カナダのノーベル賞作家による2006年執筆の短編小説ですが、ここでは彼女の一族の歴史をモチーフに、なんと短編の輪でつながれた壮大な長編小説を試みていて、アッと驚かせてくれます。 ウオルター・スコットが生きた時代のスコ…

ジャン=ジャック・アノー監督の「セブン・イヤーズ・イン・チベット」をみて

bowyow cine-archives vol.653 最近どんどん耄碌してきて、これはてっきりベルトリッチの映画ではないか、それにしては劇伴音楽がないなあと思って見物していたのだが、別の監督の作品だった。 しかしもう少し眺めていたいヒマラヤ山脈の絶景をわずか数秒で…

トム・フーバー監督の「英国王のスピーチ」をみて

bowyow cine-archives vol.652 吃音に悩むジョージ6世(コリン・ファース)とその治療に挑んで勲章をもらったオーストラリア人(ジェフリー・ラッシュ)との交情の物語です。 他の医者は吃音を外部から物理的にアプローチして治そうとして失敗するのですが…

佐倉の雨~「これでも詩かよ」第89番

ある晴れた日に第244回 雪子さんから、父方の叔母が亡くなったと知らされたので、 千葉県の佐倉というところまで、お通夜に行きました。 その日は、一日中雨でした。 佐倉へ行くのは初めてです。 佐倉の駅前は無人でした。 この世から忘れられたような、…

2001年~2014年のファッション・トレンドを振り返る その9

ふぁっちょん幻論 第90回 11春夏ミラノ・メンズ6月中旬=着易さと洗練の両立。強いデザインや色柄少ない。硬いドレスアップでもゆるい着崩しでもない新しい着こなしの提案。 11春夏パリ・メンズ6月下旬=着易さにも明確なテーマ。作品より着られる服。デ…

夢は第2の人生である 第16回

西暦2014年弥生蝶人酔生夢死幾百夜 引越しをした。現地につくと段ボールから出された荷物が全部家の前に並んでいる。驚いた。机も椅子も本もピアノもお皿もまるでその空き地が居住空間であるかのように配列されているので、パソコンに向かって日記を書い…

「ジャクリーヌ・デュプレEMI全集」を聴いて

音楽千夜一夜第330回 哀れ大資本のワーナーに吸収された、いまはなき名門EMIから発売された17枚組CDです。 デュプレのチェロは生命力に満ち、鳴るべきところを隆々と鳴らす思いっ切りの良さで、どこかピアノのアルゲリッチを思わせるところがあります…

ダニー・ボイル監督の「スラムドッグ$ミリオネアー」をみて

bowyow cine-archives vol.651 インドのボンベイ、いまはムンバイというそうだが、の貧民窟に生まれ育った少年が、ひょんなことからテレビのクイズ番組に出場して巨額の懸賞金を勝ち取るがそれが正当な実力ではなくインチキだとする疑いで警察に連行される。…

すべての言葉は通り過ぎてゆく 第8回

西暦2014年如月蝶人狂言畸語輯&バガテル-そんな私のここだけの話op.180 「歌人とか俳人とかいふのは、たいていひどい俗物ですからね。何しろ歌の結社の御大が地方にゆくときには、人身御供の娘を一人、あたかじめ用意しておくなんて言ひますもの。」丸…

真っ赤な果実のビタミーナ再び~「これでも詩かよ」第87番

ある晴れた日に第243回 去年の夏、突如私は詩を書くのが面白くなり、 忘れもしない7月11日に、詩一篇が生まれた。 それは熱い夏の日差しの中で、あっという間に出来てしまった。 * 「真っ赤な果実のビタミーナ」 「真っ赤な果実のビタミーナ、ビタミン…

ジョン・ヒューストン監督の「女と男の名誉」をみて

bowyow cine-archives vol.650 ジョン・ヒューストンの作品を選んで観たことはないが、あまり駄作のない監督ではないだろうか。「アフリカの女王」「キ・ラーゴ」「荒れ馬と女」「許されざる者」「火山のもとで」「黄金」「勝利への脱出」みな面白かった。 …

2001年~2014年のファッション・トレンドを振り返る その8

ふぁっちょん幻論 第89回 10春夏パリコレ=久々の活気、アレキサンダー・マックイーンなど巨大映像で劇的演出。ウエブで実況。 パリコレは1910年代に巴里の高級衣装店が年に2度のオートクチュール新作を発表したのがはじまり。60年代からプレタポル…

夢は第2の人生である 第14回

西暦2014年如月蝶人酔生夢死幾百夜 はげ山の頂上に「トリスタントイゾルデ」の愛の死が鳴り響く。劇伴はカラヤン指揮のウイーンフィル。歌っているのは私の隣にすっくと佇立するジェシーノーマン。私はその巨大な体躯から流れ出る太い歌に震撼させられた…

ジャック・ドゥミ監督の「ローラ」をみて

bowyow cine-archives vol.649 1960年製作された白黒の仏蘭西映画であるが、ヒロインの踊子ローラに扮したアヌーク・エーメがとても美しくチャーミングなり。同じ彼女を起用した「男と女」のアホ莫迦監督ルルーシュとの違いが名人ジャック・ドゥミによる…

鎌倉市長と鎌倉市は、「神奈川県立美術館鎌倉館」を美術館として保存する運動の先頭に立つべし!

「これでも詩かよ」第88番「駆込み訴えその2」&ある晴れた日に第243回 鎌倉の鶴岡八幡宮が所有する土地に立つ世界の名建築、神奈川県立美術館鎌倉館が危急存亡の淵にあることは、テレビ、新聞、ネットで報道されているとおりであります。 八幡宮と県と…

「丸谷才一全集第2巻」を読んで

照る日曇る日第712回 さきの大戦に徴兵拒否をして全国を逃亡していた主人公の半生を描いた「笹まくら」はこの作家の代表作のひとつだろう。 頼まれもしないのに大日本国帝国が亜細亜諸国に武装侵略をして、無辜の民の生命や財産や自由を毀損し、簒奪し尽…

蛍の歌~「これでも詩かよ」第86番

ある晴れた日に第242回 ホータル来い ホータル恋 光光光光光光光光 ホータル来い ホータル恋 ピカピカピカピカ 点滅点滅点滅点滅 雄雌雄雌雄雌雄雌 電光影裏斬夏風 点滅点滅点滅点滅 闇の奥より現れて 強く弱く強く弱く かわるがわる愛を囁く 17歳の恋…

小島信夫著「ラヴ・レター」を読んで

照る日曇る日第711回 小島選手の最晩年のはちゃめちゃ短編集を読みました。 この小説家ほど自由奔放に小説の可能性を徹底的に追究した人はいないのではないでしょうか。 物語の中に物語が挿入されたり、主語が切り替わったり、講演が小説に変容したり、結…

内田吐夢監督の「飢餓海峡」をみて

bowyow cine-archives vol.648 はじめにお断りです。この映画をまだご覧になっていない方は、ここでこの駄文を読むのをやめてくださいね。はい、さよなら、さよなら、さようなら。 水上勉の原作を読んだことはないが、三国連太郎扮する殺人犯の主人公の故郷…

夢の中で~「これでも詩かよ」第85番

ある晴れた日に第241回 自転車に乗ってどんどん進んでいく。 どこまで行っても道路に車はない。 道路も周囲も行けども行けども無人である。 午前10時の太陽は、17歳の少年の欲望のようにぎらついている。 走りに走り続けて正午になった。 はらっぱの…

サム・ペキンパー監督の「砂漠の流れ者/ケーブル・ホーグのバラード」をみて

bowyow cine-archives vol.647 原題は「ケーブル・ホーグのバラード」で砂漠の流れ者ケーブル・ホーグをジェイソン・ロバーズがしたたかに演じている。 ルンペンプロレタリアートのケーブル・ホーグは、悪者に水を奪われ砂漠に置き去りにされるが九死に一生…

2001年~2014年のファッション・トレンドを振り返る その7

ふぁっちょん幻論 第88回 09春夏ミラノ・コレ=08/9/27シンプル主流、現実からの逃避。金融危機による世界経済の深刻さ反映。 あえてファッションの享楽性見せたドルチエ&ガバーナのぞいてグッチ、プラダ、ボッテガ・ヴェネタ、ジルサンダーなど控え目。 …

夢は第2の人生である 第13回  

西暦2014年睦月蝶人酔生夢死幾百夜 ヴェネチアのサンマルコ広場にマーラーの交響曲の楽譜が落ちていたので、リアカーに乗せて自分の家まで持ち帰った作曲家は、それっきり部屋から出てこようとはしなかった。1/31 サーカス団の6人の子供たちが、観客席で…