蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

2015-11-01から1ヶ月間の記事一覧

西暦2015年霜月蝶人花鳥風月狂歌三昧

ある晴れた日に 第348回 われもまた一匹の獣であるMGMのライオンとなりて吠えておれば 友ありて利他だ利他だと叫んでいたが今頃どこでどうしているか 北海道には棲息しないのになぜヤマトシジミ 家の中でくたばっておる文月尽 また朝日は昇る頭領を無…

十一月の歌

ある晴れた日に 第347回 朝から晩まで風が吹き ムクロジの葉っぱが落ちる 実も落ちる 太郎には太郎柿、次郎には次郎柿、 宮部みゆきには太郎次郎柿 ゲゲゲの鬼太郎には輝太郎たもれ 紫式部には西村早生柿、清少納言には高瀬柿 和泉式部には越前柿 熟熟熟…

西暦2015年霜月蝶人花鳥風月狂歌三昧在庫処分編その5

ある晴れた日に 第346回 屁理屈で捻くり回した歌詠んでいったいなにが楽しいんじゃ なにゆえに男性ダンサーのあそこはあんなに大きいいったい何が入ってるんだ なにゆえに数字の1をiと書くイッヒMozart電話も一番 セッテンバー紅葉が燃える歩道橋の上で君…

国立劇場で通し狂言「神霊矢口渡」をみて

茫洋物見遊山記第193回 あまりに書斎に座ったきりでは心身が腐ってしまうと危惧して寒さと雨を冒して半蔵門まで辿りつき、平賀源内作の「神霊矢口渡」全4幕を見物してきました。 近年では大詰めの「頓兵衛住屋」がよく単独で上演されるそうですが、今回…

原節子死す

そんな私のここだけの話op.215&鎌倉ちょっと不思議な物語第361回 原節子嬢が9月5日に95歳で亡くなっていたというニュースを聞いて、ああついに来るべきものが来た、という感慨に襲われた。このひとだけはいつまでも死なないのではないかとひそかに考…

西暦2015年霜月蝶人花鳥風月狂歌三昧在庫処分編その4

ある晴れた日に 第345回 瑠璃蜆また瑠璃蜆てふてふてふ瑠璃子と瑠璃男の瑠璃色ダンス 蝶よりも蛾を低く見るそのこころ人種差別のはじまりなるか 何気なくを何気視線を目線と平気で書く奴等とは今日を限りに絶好じゃなくて絶交 失せ物ありシャープの液晶テ…

西暦2015年霜月蝶人花鳥風月狂歌三昧在庫処分編その3

ある晴れた日に 第344回 午前零時銀座通りの真ん中で黄色いウンチが湯気を立ててる カバライキンカバライキンと叫んでる君も私もバイキン仲間 年に二度寺尾家にやってくる富山ナンバーの薬売りのおじさん 果樹園のてっぺんに立ち眺むれば西に富士山東に東…

中央公論新社の「決定版谷崎潤一郎全集」について

照る日曇る日第829回 げんざい中央公論新社の創業130周年記念事業として同社から刊行されている文豪谷崎潤一郎の最新版全集を毎号楽しみにしている今日この頃ですが、前からちょっと気になっていることをレポートしておきたいと思います。 谷崎の全集…

速報! 生誕100周年記念「柿本幸造 絵本原画展」in鎌倉のご案内

鎌倉ちょっと不思議な物語 第360回 鎌倉に55年間住んだ絵本作家、故柿本幸造さんの絵本原画展が開催されます。 誰もが知っている「どうぞのいす」や「じゃむじゃむどんくまさん」から隠れた名作まで、錦秋の3日間に限り、貴重な原画が勢ぞろいしていま…

三谷幸喜千選手をどう評価するか?

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.945&946 初期の映画はみな面白かったが、だんだん化けの皮がはがれてきたような気もする。 しかし才能はある人なので、来年の五郎丸、じゃなかった真田丸に期待してるずら。 ○三谷幸喜監督の「THE有頂天ホテル」をみ…

谷崎潤一郎著「谷崎潤一郎全集第17巻」を読んで

照る日曇る日第828回 この巻に収められたのは「蘆刈」、「春琴抄」、「陰翳礼讃」を含めた「摂陽随筆」、単行本未収録の「夏菊」他計2編などであるが、なんといっても「蘆刈」が圧倒的に素晴らしい。 著者自身を思わせる主人公が、ある日ふと思いついて…

西暦2015年霜月蝶人花鳥風月狂歌三昧在庫処分編その2

ある晴れた日に 第343回 ノアという箱車ボックスカーが走り去る選ばれし家族とプードル乗せて 要するにただの白い車じゃないかライムホワイトパールクリスタルシャインカラー 車などみな似たりよったりなれど買う人が無理矢理個性をつける 或る夜に大イノ…

西暦2015年霜月蝶人花鳥風月狂歌三昧在庫処分編その1

ある晴れた日に 第342回 一冊の書物を遺しこの世から立ち去らんとする人の原稿を直す 目を閉じて髭を剃らるるわが息子大仏に似た顔となりけり ニッポンはアメリカと組んで中国を抑えつけようとしているわれら民草の頭越しに 何匹も犬や猫を飼う人を「犬猫…

戦争映画をみる

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.941、942、943、944 ○ケヴィン・マクドナルド監督の「第九軍団のワシ」をみて 英国に侵入したローマ軍第九軍団がワシの軍旗を奪われて全滅。その軍団長だった父親の敵を息子がうつ歴史戦争ものずら。 当時はイタリアが…

家族の肖像 その8~「これでも詩かよ」第161番

ある晴れた日に 第341回 「お母さん、輸血ってなに?」 「怪我をしたときに他の人の血を入れることよ」 「宇宙戦艦ヤマトの島大介さん、輸血したお」 「そうなの?」 「マコトさんとファミリーナの田中さん、好きだお」 「マコトさんってお父さんのこと?…

クラウディオ・アバドの独グラモフォン交響曲全集を聴いて

音楽千夜一夜第351回 ついこないだ亡くなったばかりの指揮者を偲んで全41枚のCDを聴いてみました。 収められているのは順番にモーツアルト、ハイドン、ベートーヴェン、メンデルスゾーン、ブラームス、ブルックナー、マーラーで一番多いのは彼がシェ…

デヴィッド・フランケル監督の「マーリー 世界一おバカな犬が教えてくれたこと」をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.940 世界一だか日本一だか知らないがおバカどころかアホバカな犬は世界中、日本中にごろごろいるようだ。 隣のアホ犬などは朝の六時から無駄吠えをして、向こう三軒両隣のみならず町内の善男善女を叩き起こしているの…

秋の鎌倉文学散歩

茫洋物見遊山記第192回&「鎌倉ちょっと不思議な物語」第359回 鎌倉文学館の主催で年3回行われているこの催しですが、今回は「鎌倉文士の足跡」を辿るウオーキングでした。 というても行動半径は駅の周辺の近場ばかり。午前10時に裏駅の時計広場に…

保坂和志著「遠い触覚」を読んで

照る日曇る日第827回 この本をデビッド・リンチの映画「インランド・エンパイア」や「マルホランド・ドライブ」を見ながらの感想を綴ったエッセイだと云うたら、それはそうかもしれない。 あるいは小島信夫やカフカやベケットやランボオや聖アウグスティ…

鎌倉国宝館で「鎌倉震災史」展をみて

茫洋物見遊山記第191回&「鎌倉ちょっと不思議な物語」第358回 いつも仏像や御雛様の展示をしている国宝館が異色の展覧会を来る12月6日まで開催しています。題して「鎌倉震災史」。歴史地震と大正関東地震という副題がつけれれているとおり、当地に…

内田光子のシューベルト8枚組CDを聴いて

音楽千夜一夜第350回 一聴すればたちまち分かるように、これまでのどんなピアニストのどんな演奏とも鋭く一線を画する恐るべき音楽が鳴っている。 内田光子は死んだシューベルトの霊を呼び出し、彼になりかわって白鳥の歌をうたい、鎮魂の真心を捧げてい…

高橋源一郎選手独演会

「鎌倉ちょっと不思議な物語」第357回&バガテル-そんな私のここだけの話op.214 秋日和の昨日は、商工会議所で鎌倉文学館開館30周年記念の「鎌倉文士前夜とその時代」という講演会があり、高橋源一郎、館長の富岡幸一郎両氏の対談があった。 富岡と云…

偶には映画でもみようっと

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.937、938、939 ○パトリス・ルコント監督の「髪結いの亭主」をみて 相思相愛の一方の若妻が、年配の夫に性交を挑んだあと、激流に身を躍らせる。 もうこれ以上の至福の時はないだろうから、その絶頂で身を絶とうという…

「谷崎潤一郎全集第13巻」を読んで

照る日曇る日第826回 「潤一郎犯罪小説集」(「日本におけるクリツプン事件」、「或る罪の動機」「黒白」)、「卍(まんじ」を中心に、芥川龍之介の思い出噺などを交えたコンピレーションである。 谷崎の小説では、男は女への奉仕者であり、女たちはいき…

がんの歌~「これでも詩かよ」第162番

ある晴れた日に 第340回 川島なお美は、がんだった。 坂東三津五郎も、がんだった。 この国の、ふたりにひとりが、がんになる。 アンパンマンも、がんだった アンパン、ジャムパン、クリームパン 胃がん、肺がん、食道がん 乳がん、舌がん、子宮がん カレ…

Les Petits Riens ~三十五年もひと昔

蝶人五風十雨録第7回「十月三十日」の巻 1982年10月30日 土曜 午前中、裏庭の整理をする。日本シリーズ、4勝2敗で西武勝つ。 1983年10月30日 日曜 はれ 寒 みかん狩りなれど長男は行かぬと主張して行かぬ。妻は映画を何年振りかで観たり…

西暦2015年神無月蝶人花鳥風月狂歌三昧

ある晴れた日に 第339回 お土産はすぐき八橋五色豆何回行っても京都旅行は 仙人草も薄も怨んでいるだろう草刈り爺さんに全部刈られて ハロウィンなるかぼちゃ祭りを持て囃す軽佻浮薄な日本人かな 死ね死ね死ね手前こそ死ね死ね死ね死ね今日も吠えてる平成…

すべての言葉は通り過ぎてゆく 第28回

西暦2015年神無月蝶人狂言畸語輯&バガテル―そんな私のここだけの話 op.217 握った右手の強さを上回る力で握り返さない人間は本当の友ではない、と考えるマッチョなインテリが多いので驚く。 いかなる正論にも異論の余地はあり、反論の出来ない立論はな…