蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

2015-07-01から1ヶ月間の記事一覧

西暦2015年文月蝶人花鳥風月狂歌三昧

ある晴れた日に 第325回 泉水橋医院で呉れた薬をみな飲めば下痢吐気で二日間眠れず お月さまと土星金星木星を夜の地球から眺める贅沢 筆跡を見ればだいたい分かるはずあんたがなんぼのものであるかは 漱石君即天はたして去私なるや挙止虚私清私にして巨私…

真夏の夜のラプソディー「これでも詩かよ」第155番 その3

ある晴れた日に 第324回 すると別の学生の一隊が、「これからは国産ドッグファイトからグローバル・キャット・ファイトの時代じゃ!」と叫んで、ドラえもんやのび太と一緒に真っ白な衣裳に身を包んで「猫じゃ猫じゃ」と歌いながら、講堂の舞台の上で踊り…

真夏の夜のラプソディー「これでも詩かよ」第155番その2

ある晴れた日に 第323回 私の目の前には仏文5年生の怒りのチビ太やイヤミや蝶の好きな多田さん、グラン佐々木、それに六つ子なども勢ぞろいしていて、徒党を組んで階段教室を下りながら全員が黒づくめの犬になってしまって、「なんだ坂、こんな坂」と大…

真夏の夜のラプソディー~「これでも詩かよ」第155番

ある晴れた日に 第322回 その1 私は長い間この街に来たことがなかったが、ふとこの街の大学をまだ卒業していなかったことに気付いた。 急いで教務へ行くと3つの教科のレポートと卒論を提出すれば証書を授与するというので、しばらく当地に滞在して長年の…

猛暑に西部劇!!! その3

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.874、875、876 ○アンソニー・マン監督の「ララミーから来た男」をみて 弟の敵討ちをするために遥々ララミーからやって来た男は何を隠そうジェームズ・スチュアートである。 スチュアート選手はその町でカワイ子ちゃん…

猛暑に西部劇!! その2

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.872、873 ○ジョージ・キューカー監督の「西部に賭ける女」をみて なんといってもソフィア・ローレンのやわらかくくねる女体が妖艶。お相手はアンソニー・クインだが、んなもんぶっ飛ばすほどのお色気を拡散しつつ、映…

猛暑に西部劇! その1

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.870、871 ○フィリプ・カウフマン監督の「ミネソタ大強盗団」をみて 西部劇をみているとワイアット・アープとビリーザキッドを扱った映画が多いことに気づかされるが、ジェシー・ジェイムズが登場するを映画もかなり多…

日本文学全集22「大江健三郎」を読んで

照る日曇る日第802回 「人生の親戚」「治療塔」「鳥」「狩猟で暮らしたわれらの先祖」のほかに短いエッセイを盛り沢山に収めた、切れ味鋭い池澤夏樹版健三郎セレクションずら。 「人生の親戚」は、どこかマルケスやリョサなどの影響を受けたところもある…

国立新美術館で「マグリット展」をみて~「これでも詩かよ」第152番

ある晴れた日に 第321回 Ⅰ 君も知るように、「巨人の時代」には「飢餓」と「呪い」と「禁じられた書物」が欠かせない。 これこそが「永遠の明証」と「終りなき認識」の「生命線」なのだから。 「哲学者のランプ」が「自由の入り口で」照らすのは「弁証法…

新潮日本文学古典集成「萬葉集一」を読んで

照る日曇る日第801回 萬葉集という本邦最大最高の詩歌集を編んだのは大伴家持とされるが、その家持がどれくらい女性にもてたのか、この一冊を読めばよく分かります。 本妻は従妹に当たる大伴坂上大嬢(おおともさかのうえのおおいらつめ)で、この幼馴染…

四方田犬彦著「わが煉獄」を読んで

照る日曇る日第800回 映画や文芸評論の本を読んだことはあるのだが、詩集も数冊出している著者の最新版をちょっと読んでみましたが、なかなか難しい、というかコメントしずらい作品です。 ダンテを思わせるいかめしい表題につづくのは、なんだか途方もな…

ちょいと前の日本映画ずら

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.867、868、869 ○原田眞人監督の「クライマーズ・ハイ」をみて はじめは処女の如く終りは脱兎のごとし。主人公の高嶋や小澤との登山と航空機の遭難事故とが有機的に接合されているとは思えない。 むしろ遭難現場にスー…

「インクを買うより最新プリンターを買おう」という奇妙な広告について

広告戯評第22回&バガテル-そんな私のここだけの話op.204 エプソンが「インクを買うより最新プリンターを買おう」というネット広告を盛んに露出している。いったいいかなる意味かとクリックしてみたが、同社のプリンターがぞろぞろで出てくるだけ。 イン…

ちょいと昔の日本映画ずら

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.865、866 ○木下恵介監督の「お嬢さん乾杯」をみて 原節子が没落した貴族のお嬢さんに扮してじつに奇妙な味を出している。 彼女に恋した自動車経営者役の佐野周二は喜劇のノリで演じているのに、節子さんは妙に深刻がが…

三谷幸喜監督・脚本の「ザ・マジックアワー」をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.864 才人三谷は映画でもいい作品を作ってきたが、最初期に比べるとだんだん質が低下してきたような気がする。最新版の「清州会議」でもそうだったが、役者の数や物語の材料をバンバン詰め込むので渋滞した道路のように…

されど観て良かった映画もあるずら

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.860,861,862,863 ○ロバート・ロッセン監督の「コルドラへの道」をみて ゲイリー・クーパーとリタ・ヘイワースが共演している珍しい西部劇だが、バズ・クリーク監督の「戦うパンチョ・ビラ」を敵対する米軍側から見た映…

それにしてチャールズ・ブロンソンは悪くない

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.858&859 ○セルジオ・レオーネ監督の「ウエスタン」をみて 無残なやり方で兄を殺された弟チャールズ・ブロンソンがにっくき殺し屋ヘンリー・フォンダに復讐する話で、この2人とジェイソン・ロバーズにからむのがなん…

この糞暑いのにブルース・リー

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.856&857 ○ロー・ウエイ監督の「ドラゴン危機一髪」をみて ブルース・リーの技は相変わらずすんごいけれど、映画としてのプロットなどあって無きがごとく幼稚なもので、彼が出演していなかれば誰ひとりこんな下らない…

色川武大著「友は野末に」を読んで

照る日曇る日第799回 表題作を含めて9つの短編、2つの対談をを収めているが、いちばん印象に残ったのは対談相手の立川談志の自由奔放な語りだった。物故した落語家や講談師の名前が出てくるとたちどころにその噺を口にする抜群の記憶力と頭の回転の早さ…

残念な映画大特集

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.851、852、853、854、855 ○ロベルト・ベニーニ監督・主演・脚本の「ライフ・イズ・ビューティフル」をみて ロベルト・ベニーニに才能があることは認めるが、演技の味付けが濃厚すぎるので見物していて疲れる。 それに…

吉野弘著「吉野弘全詩集」を読んで

照る日曇る日第798回 昨年亡くなった詩人の業績をしのびつつ1055頁におよぶ巨大な詩集を謹んで拝読いたしました。 詩人の中にはことさら難解な言葉や隠喩や暗喩を駆使して、なにやら高尚な哲学や観念を鼓吹する人もいるのですが、それでなくても頭の…

夢は第2の人生である 第26回 

西暦2015年睦月蝶人酔生夢死幾百夜 地域巡回員の私は、その名の通りのルートセールスに従事していたが、いつまでたっても「ルートセールス」というネーミングの語感にうっとりしているだけで、日本全国どこへ行っても自分がなにをすればいいのか分からな…

夢の女~「これでも詩かよ」第151番

ある晴れた日に 第320回 名古屋近鉄の電器売り場で、キャンバスを立ててスケッチを描き始まると、忽ち人だかりができた。私は「あら、これはダリよ」「これはゴッホよ」と持て囃す女たちとどんどんデートの約束を取りつけながら、売り場主任と大型テレビ…

出光美術館で「田能村竹田展」をみて

茫洋物見遊山記第185回 田能村竹田は江戸時代後期、というより幕末の南画の画家で、今年が没後180年に当たるそうです。 会場に彼のお得意の山水画がたくさん並んでいましたが、私は山水画は好きですが、その山水をものような「精妙無窮」の細密画筆致…

鎌倉国宝館で「常盤山文庫展2015」をみて

茫洋物見遊山記第184回鎌倉ちょっと不思議な物語第346回 すでに6月28日に終了してしまいましたが、「常盤山文庫」というのは鎌倉山の開発に尽力した故菅原通濟が1943年に創始した美術コレクションの名前です。 通濟が住んでいたのは鎌倉笛田の…

池澤夏樹編「日本文学全集20吉田健一」を読んで

照る日曇る日第797回 昔なんだこれ日本語かよと往生しながらようやっと読んだ「ヨオロッパの世紀末」に加えて「文学の楽しみ」という2冊の単行本を柱にあれやこれやの短編やエッセイ、シェイクスピアの14行詩の翻訳のおまけまでつけた吉田健一てんこ盛…

クリント・イーストウッドの映画3本立

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.848、849、850 ○クリント・イーストウッド主演・監督の「荒野のストレンジャー」をみて 1973年製作の奇妙な味わいの作品なり。さすらいの流れ者イーストウッドはいきなり寄って来た色女を強姦するが、「嫌よイヤヨ…

井上ひさし著「井上ひさし短編中編小説集成第9巻」を読んで

照る日曇る日第796回 著者は大学1年生の夏休みに、戦争中に山奥に疎開されていた江戸時代の「黄表紙」30冊を釜石市の市立図書館に運ぶアルバイトをしたそうだが、その抱腹絶倒の面白さ、驚天動地の素晴らしさに魅了され、その時の貴重な体験がその後の…

プルースト著吉川一義訳「失われた時を求めて8」を読んで

照る日曇る日第795回 いくら作家でも書きたくないことはあるものだろう。それが自分の欠点や不利になること、世の中のタブーとされていることならなおさらだ。たいがいの作家は意識してか無意識にかそれを遠避けたり、曖昧にしてしまう。 しかしプルース…

Les Petits Riens ~三十五年はひと昔

蝶人五風十雨録第3回「六月三十日」の巻~バガテル-そんな私のここだけの話op.203 1981年6月30日 火曜 記事欠落。 1982年6月30日 水曜 巴里Rue de Carneの Hotel Stellaに宿す。 1983年6月30日 火曜 AddendaのCM。CⅩのアナウンサ…