蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

2009-06-01から1ヶ月間の記事一覧

西暦2009年茫洋水無月歌日記

♪ある晴れた日に 第59回 大船駅のさびた線路のすぐ傍に昼顔の花咲きいたり余を馘首せし銀行屋を馘首せし銀行屋をまた馘首せんとする鳩山総務相わが首を切りしバンカーの首を切りしそのバンカーの首を切らんとする人隠れたってすぐ分かるぞヘイケボタル今宵…

さようなら眞木準

遥かな昔、遠い所で第84回既にして旧聞に属すかもしれませんが、去る22日にコピーライターの眞木準氏が急性心筋梗塞で亡くなられたことを私は読み残しの新聞を整理していてはじめて知りました。彼の最新にしておそらく最後の作品は、宣伝会議社の「内定取…

続々 拝啓鎌倉市長殿

バガテルop103&鎌倉ちょっと不思議な物語第196回 「朝夷奈切通における自転車通行問題」について3度目の市長への手紙を書きました。最新の回答と要望書はずっと後ろのほうにあります。○5月14日付要望時下貴職ますますご健勝のこことお喜び申し上…

新聞広告の中身

茫洋広告戯評第8回 朝日新聞に掲載される週刊誌の広告のなかには、しばしば朝日新聞本紙の記事の内容や会社の姿勢を非難攻撃するのみならず、誹謗中傷する見出しがデカデカと躍っています。けれどもこの新聞社は平然とこれらの広告を掲載してなんの反論や発…

サントリーの優れた広告

茫洋広告戯評第7回昔からサントリーという会社はCMが上手でしたが、最近は「ボス」の宇宙人ジョーンズ、「ウーロン茶」などをのぞいてかなりクリエイティブのレベルが下がっていたと思います。おそらくは会社か社長の方針が営業至上主義になってクリエー…

網野善彦著作集第8巻「中世の民衆像」を読んで

照る日曇る日第266回昨日正宗について少し触れましたが、おそらく彼も回船鋳物師と呼ばれる中世前期の代表的な職人であり、一流の刀鍛冶として鍋・釜・鍬・鋤などの鋳物師ともども、畿内を起点に瀬戸内海を経て九州、あるいは山陰・北陸に回り、琵琶湖を…

本覚寺を訪ねて

鎌倉ちょっと不思議な物語第195回鎌倉駅からほど近いこのお寺は、もとは源頼朝が幕府の守り神として建立し、天台宗系の夷堂があったのですが、永亭8年1436年に日出が日蓮宗のお寺として再建しました。2代目住持の日朝はのちに身延山久遠寺の住持に…

アーサー・ペン監督の「アリスのレストラン」を見て

闇にまぎれて bowyow cine-archives vol. 5 原作と主演はフォーク歌手のアーロ・ガスリー。彼のヒット曲Alice's Restaurant Massacreを題材にしてアーサー・ペンが二度と帰らぬ青春の想い出を歌いあげました。ギター、ハモニカ、バンジョー、フォークミュー…

茫洋広告戯評第6回

いよいよ裁判員制度が開始されました。法務省や最高裁の裁判員制度キャンペーンも最近はかなり円熟の度を深め、当初の堅苦しさがいくぶん和らいできたような印象を受けます。いずれにしても行政、立法のみならず司法制度にも平成平民が直接参加して自由に意…

アルベルト・モラヴィア著「軽蔑」を読んで

照る日曇る日第267回男のさすらいの人生の頼りの綱は女性です。もしも愛する女性に軽蔑されたら、男なんてどうやって生きていったらよいのか途方にくれてしまうでしょう。漂流しながらおんおん泣いて、ついでに海に飛び込んで死んでしまうしかないでしょ…

ミルチャ・エルアーデ著「マイトレイ」を読んで

照る日曇る日第265回これは、ルーマニア生まれの宗教学者ミルチャ・エルアーデが、若き日にインドを訪れたときの体験を赤裸々につづった大恋愛小説です。イタリア・ルネサンス哲学の研究のためにインドを訪れた作者は、インド各地を旅行し、タゴールに会…

青木美智男著「日本文化の原型」(小学館日本の歴史別巻)を読んで

照る日曇る日第264回日本文化の原型は普通は室町時代にできたと考えられているようですが、著者はそれを江戸時代に求めて、民衆の視座から見た文化、とりわけ衣食住の基礎の確立のありようを事実に即して、生活の現場に即して、実態的に見定めています。…

「岩船地蔵堂」を訪ねて

鎌倉ちょっと不思議な物語第194回 亀が谷切通を下った扇が谷の辻にぽつんと立っているのがこの地蔵堂です。ここに祀られているのは源頼朝・政子の長女大姫の持仏と伝えられています。大姫は政略結婚で木曽義仲の息子義高と結ばれ、相思相愛の仲だったので…

海蔵寺の「底脱の井」を覗く

鎌倉ちょっと不思議な物語第193回幸いにも観光客があまり訪れない海蔵寺ですが、その閑寂な趣をさらに情趣豊かにしているのが寺院の外の2つの井戸です。まずお寺の入口の右側に「鎌倉十井」のひとつである「底脱の井」と明治二七年五月に建立された歌碑が…

扇ヶ谷に海蔵寺を訪ねて

鎌倉ちょっと不思議な物語第192回扇ヶ谷のどんづまりにある瀟洒なお寺が海蔵寺です。このお寺は四季折々にさまざまな山野草が咲く鎌倉随一の花の寺として有名です。海蔵寺は応栄元年1394年に鎌倉公方足利氏満の命を受けて、元は真言宗の寺があった跡…

阿仏尼の墓を訪ねて

鎌倉ちょっと不思議な物語第191回 夜もすがら涙もふみもかきあえず磯越す浪にひとり起きゐてこれは鎌倉時代に「十六夜日記」を書いた阿仏尼の歌ですが、私たちの時代ときわめて似通った近代的な心の動きを感じ取ることができます。阿仏尼は夫が遺してくれ…

続 村上春樹著「1Q84」を読んで

照る日曇る日第263回 村上春樹がこの小説で描こうとしたのは、リトル・ピープルによって代表される眼には見えない陰険で邪悪な敵意、世界全体を覆う殺意と反感と無関心、冷酷なニヒリズムと問答無用の暴力の氾濫、狂信と原理主義の愚かさではないでしょう…

村上春樹の「1Q84」を読んで

照る日曇る日第262回この本を読み終わったあと、自転車に乗って涼しい風の吹く外に出てみました。梅雨に入ったばかりの夜空はとっぷりと暮れ深い藍色に染まっています。私は小説に何度も出てくる2つの月、大きな黄色い月と小さな緑の月を探しましたが見…

ジョージ・マーシャル監督「砂塵」を視聴して

闇にまぎれて bowyow cine-archives vol. 4マレーネ・ディートリッヒとジェームズ・スチュワート主演の西部劇映画を、FM放送でシューマン、CDでブラームスのリートを聞きながら見物しました。1939年アメリカ ジョー・パスターナク・プロ制作のモノク…

流れ出るわが涙よ

バガテルop102以前ある若い女性が、「私のお父さんがね、娘が結婚するシーンが出てくるCMを見ていたら、もう泣いているの。いやになっちゃうわ」と語っていたのを聞いて、私は彼女の父親の気持ちがなんとなくわかるような気がしていたのですが、その私…

「まんだら堂跡」を訪ねて

鎌倉ちょっと不思議な物語第190回名越切通の近くにまんだら堂の旧跡がありますが、ここは最近発掘調査が行われており、残念ながら立ち入り禁止となっています。お堂の正体は不明であり、周辺には数多くのやぐらが散在しています。四季折おりの草花が咲き…

「釈迦堂切通」を訪ねて

鎌倉ちょっと不思議な物語第189回時々この空気がひんやりと行きかうおおきな洞を訪れると鈴木清順監督の「ツィゴイネルワイゼン」を思い出します。あの映画は長く鎌倉に住んでいた鈴木清順によってまさにこの場所で撮影されたのですが、その鈴木氏の長谷…

「唐糸やぐら」と「日月やぐら」を訪ねて

鎌倉ちょっと不思議な物語第188回釈迦堂の周辺には数多くのやぐらがあります。これらは釈迦堂口やぐら群と称されていますが、その代表的なものが「唐糸やぐら」です。唐糸の逸話は「御伽草紙」「唐糸草子」で語られているお話です。唐糸は木曾義仲の家臣…

「伝北条時政邸跡」を訪ねて

鎌倉ちょっと不思議な物語第187回北条時政は政子の父で頼朝の義父。鎌倉幕府の実権を源氏から北条氏へと簒奪するために全知全能の限りを尽くした知恵者です。彼は頼朝の子頼家の乳母父となって権勢を振るった比企能員を自邸に呼び出して暗殺したと「吾妻…

高橋源一郎著「大人にはわからない日本文学史」を読んで

照る日曇る日第261回文学の母は人間であり、人間が生きてきた社会ですから、その母体が地殻変動すれば文学のありかたも変わってしまいます。著者は最近のそんな文学のありようの変化を、パソコンのOSの転換にたとえて語っています。近代小説の元祖であ…

続 拝啓鎌倉市長殿

バガテルop101 去る5月14日、私は鎌倉市長に次のような要望書を提出したところ、別記のような回答が届けられました。ある程度評価できるに内容もあったものの、納得がいかない点もあったので、再度市長への手紙を書きました。○5月14日付要望時下貴職ま…

公共広告機構の広告の公共性

茫洋広告戯評第5回たとえばサントリーが「ダカラ」の広告をするのはなんの不思議はありません。だからといって同じ会社の同じブランドが、「初夜の節電お忘れなく」とか「早寝早起き3文の得」とか「贅沢は敵だ」などというCMを流し始めたら妙なものです…

森まゆみ著「女三人のシベリア鉄道」を読んで

照る日曇る日第260回 「女三人」とは与謝野晶子と中條(宮本)百合子、そして林芙美子です。この有名な文学者が時は異なるけれども同じようにシベリア鉄道に乗ってモスクワ経由でパリまで行きました。そこで著者も同じルートで彼女たちの足跡を、そのそれ…

アジェンデ著「精霊たちの家」を読んで

照る日曇る日第259回 花も嵐も踏み越えて恩讐の彼方から立ち上がるこの力強い言霊の威力時代は2つの大戦をはさんで現在まで。舞台は南米最南端の国チリ。持てる者と持たざる者とが決定的な対決を迎えたこの国に、激しく生きた伝説の祖父母、父母、そして…

鎌倉文学館の特別展「有島三兄弟」を見る

鎌倉ちょっと不思議な物語第186回鎌倉文学館の「有島三兄弟 それぞれの青春」展をのぞいてきました。ここはいつも平日はガラガラなのですが、この日は異常な混みようです。聞けば例の新型インフルエンザで遠出できなくなった関東一円の観光客がバラ園のあ…