蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

「まんだら堂跡」を訪ねて


鎌倉ちょっと不思議な物語第190回

名越切通の近くにまんだら堂の旧跡がありますが、ここは最近発掘調査が行われており、残念ながら立ち入り禁止となっています。お堂の正体は不明であり、周辺には数多くのやぐらが散在しています。四季折おりの草花が咲き乱れるお花畑としても知られ、またお堂の下を走る逗子トンネルは昔からお化けの名所として有名です。

私の想像では、おそらくここは鎌倉時代の武将や貴族、僧侶などを葬った集団墓地であり、まんだら堂はそれらのエリートたちの一大葬祭センターだったのではないでしょうか。というのは私が住んでいる朝夷奈切通の麓に同じような中世墳墓葬祭場跡が存在しているからです。おそらく、異界へ通じる鎌倉の7つの切通のすべてに、共同墓地とそれに付属する葬式場があったに違いありません。

たとえば釈迦堂切通には以前ご紹介した「唐糸やぐら」と「日月やぐら」、そしてつい最近公開されたばかりの大町大やぐら群が横たわっています。また化粧坂切通には瓜ヶ谷やぐらと西瓜ヶ谷やぐら、巨福呂坂切通には浄光明寺やぐらと東林寺やぐら、そして亀ヶ谷切通には相馬師常やぐらがすぐ近くに存在しているので、私の想像もまんざらでたらめではないのではないでしょうか。

私は青いビニールシートに包まれたまんだら堂の旧跡を横目で眺めながら、私の残り少ない人生をこれらの切通周辺に必ず存在するはずの葬祭場捜索に捧げることを誓い、あわよくばそれらの墳墓の底深く埋葬されることを夢見たことでした。


♪カラスアゲハが無心に太刀洗川の水を吸うておる 茫洋