蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

2006-11-01から1ヶ月間の記事一覧

鎌倉の鯨が泳ぐ梶原屋敷

鎌倉ちょっと不思議な物語14回 この小さな谷戸に、鎌倉時代の有名な武将梶原景時が住んでいました。(この物語の「第1回太刀洗篇」で平広常を斬ったあの景時です)しかし正治元年1199年、梶原景時が小山朝光を将軍の頼家に讒言したことに怒った60名の…

「不都合な真実」の試写を見た。

史上最悪の大統領ブッシュに敗れた「一瞬だけの大統領」、アル・ゴアのスライド講演をほぼそのまま映画化したのがこの作品である。過去60億年にわたって2酸化炭素の排出と気温の上昇がシンクロしてきたこと、最近その度合いが急速にエスカレートしてきた…

夢は第2の人生である。

*1997/3/25の2週間前の夢若い米国の青年である私は海で漁をしていた。えいっとばかりに銛を突き立てると、網の中から金粉で覆われた半魚のアフロディーテが血を流しながら姿を現した。 *2005/3/25の夢俺は集英社か小学館の広告の人(たぶん梅沢さん )と銀…

勝手に東京建築観光・第2回

双頭のメデューサ あるいはゴッダムシティのツインタワー 世界のタンゲが、1986年に日本に帰還し、あの新都庁舎コンペに劇的に勝利したとき、当時72歳の孤高の建築家には、すでに分かっていたのだ。自分がゴッダムシティにつくった新都庁ビルが、その後史上…

勝手に東京建築観光・第1回

沈黙の弔鐘 まず私が大好きな高層ビルから始めよう。東京タワーの賞味期限が切れたいま、00年代の東京のランドマークといえばなんといってもこのNTTドコモ代々木ビルであろう。このビルにはオフィスがなく、携帯電話の巨大な乾電池プールのような役割を…

鎌倉ちょっと不思議な物語12回

とても危険で観光どころではない鎌倉 家の近くに温泉?がある。 といっても熱海や箱根のような迫力はない。ドラム缶の中に地面から湧くお湯が溜まっていく天然の自噴井らしい。 もしかすると鎌倉唯一のミニ温泉かもしれない。(写真1)あまり温度は高くない…

鎌倉ちょっと不思議な物語 第十一話

小さな橋の上で 数年前、近所に突然ウクレレの店ができた。ウクレレといえば牧伸二か高木ブーだが、店長さんはそのいずれでもなく50代半ばの赤ら顔のおじさんだった。Tシャツに短パン姿でパイプをくわえながらハワイアンを弾いたり、透明なビニールハウスの…

鎌倉ちょっと不思議な物語 第一〇話

鴨たちはこうしたもの 今日、散歩の途中で滑川をのぞいてみたら、鴨が二つがい浮かんでいた。 ということは、全部で4匹である。彼らはカップルごとに移動するが、二つのカップル同士が接近して多少の混乱を招くときもあるようだ。私はなんとなくモーツアルト…

鎌倉ちょっと不思議な物語 第九話

今日はトリの話です。 昨日ご紹介したヘビが出没する川の土手にはカワセミが巣を作っています。猛烈な勢いで狭い流域を飛び回っては、また巣に戻る。私はこのカワセミを、かの大作家ジュール・ベルヌとかの大映画作家エリック・ロメールに敬意を表して「緑の…

鎌倉ちょっと不思議な物語 第八話

熊野神社付近に出没する謎の人物 熊野神社は北条泰時が開鑿した朝比奈切通しの交通安全を祈願して紀州熊野から勧請されたという。山腹に上下2つの社殿が築かれているが、最近下の本殿の左側に時々アマチュアの修験者が出没して無念無想の業に耽っている姿を…

鎌倉ちょっと不思議な物語 第七話

蛇、長すぎる。 と、言ったのは博物誌を書いたルナールだが、最近あまり身近にこの「長モノ」を見る機会が減ったような気がする。しかし実際にはそうでもないようで、つい2、3週間に私の妻が太刀洗で短いやつ、それから左の写真の細長い道で2メートルになん…

鎌倉ちょっと不思議な物語 第六話

小早川家にも佐々木家にも秋が来た。O家の秋は、芸術の秋である。長く続く塀に長い蛇のようなツタが絡み付いて独特の風情がある。O家は江戸時代の名主の家で、この付近で切り出される鎌倉石の石切り場でもあった。もっと遡ると中世鎌倉時代にはこの地点が…

最近気になる日本語

○敬愛なるベートーヴェン今日の夕刊に「敬愛なるベートーヴェン」という映画の広告が出ていた。キャッチフレーズによれば、「第9誕生の裏に耳の聞こえないベトちゃんを支えた女性がいた」」という楽聖物語らしい。まだ見ていないのでその内容はともかく、気に…

拝啓 安倍内閣総理大臣殿

教育基本法の国会審議等にてご多忙のところ、誠に恐縮でますが謹んで一筆啓上奉ります。 総理はご存知かどうか分かりませんが、最近世界で一番目か二番目に卑猥な古典音楽がわが神国ニッポンにて頻繁に上演され良識あるわが帝国のインテリゲンちゃんおよび婦…

静子さんの思い出

静子さんの思い出 最初は確か小学生が死んだ。 次に、中学生が死んだ。 それから、高校生が死んだ。 校長先生も死んだ。 今度は、赤ちゃんが死んだ。 いや、殺された。毎日毎日誰かが死んでいく。 毎日毎日誰かが殺されていく。いったいぜんたいどうしてこん…

月曜日記

朝電車の中で冠雪した富士山が見え、「ああ今日はもうこれを見ただけでよし」と、満足した。 それでも引き返さずに新宿まで行って学食でまたしても650円の「海鮮丼」なるドンブリを頼んだら、なんとなんと魚のほかに私の大嫌いな納豆とやまいもをおろした奴…

昔の歌

昔の歌☆西本町の歌西本町の路地裏の遊び場で、3人の少年が地べたに座っていた。「でんばら、でんばら、でべそ」と、小学3年生の長井まことが歌うようにしていった。すると、同じ3年生の出原ひでおが、同じメロディで「なーがい、なーがい、あ、そ、こ」と、…

嵐山光三郎著「昭和出版残侠伝」を読む

嵐山氏の本はほとんどすべて読むに値する。本書は上司の「ババボス」が不当な仕打ちを受けて退社したために義によって名門平凡社を腹きり退社した嵐山バガボンをはじめとする「仁義礼編集屋兄弟」たちが日夜繰り広げた文字通りの「昭和出版残侠伝」である。…

鎌倉ちょっと不思議な物語 第五話

☆少年時代に耕君が作った愛犬ムクの歌♪ムクムクムク、ムクムクムク、ムクは犬だよ〜。 ☆今日私が作った亡き愛犬ムクの歌道の上には、山がある。山の上には、神社がある。神社の上には、空がある。空の上には、ムクがいる。ムクの上には、神様がいる。ムクは…

鎌倉ちょっと不思議な物語 第二話

鎌倉ちょっと不思議な物語 第二話数日前に山道を歩いていたら、見慣れぬ赤土が眼に飛び込んできた。おそらく誰かがここで半日がかりで深い穴を掘って、新鮮なヤマイモを手に入れたのだろう。この辺はヤマイモが自生している。毎年この近所でヤマイモを掘って…

理想の死に方 

また日経からの引用で申し訳ないが、今日の夕刊の「プロムナード」欄に出ていた話。著者の伊藤礼氏は、父親に似て、“朝寝して宵寝するまで昼寝して時々起きて居眠りをする”人であるようだ。そして氏の父親である小説家・詩人の伊藤整氏ももちろん稀代の眠り…

私の名前の謎

今日の日経の文化欄に谷川健一氏が最近亡くなった偉大な独学者、白川静氏の追悼文を書いていた。白川氏を吉田東吾、南方熊楠、折口信夫というアンチ・アカデミズムの偉大な「狂気の人」の系譜に位置づけ、その巨大な喪失を悼む見事な文章であった。谷川氏に…

鎌倉ちょっと不思議な物語 第一話

鎌倉ちょっと不思議な物語 第一話今日から「鎌倉ちょっと不思議な物語」を不定期で連載いたします。 どこが不思議なのかは誰にも分からない、というかなりへんてこりんな内容になるはずなので期待しないでね。私の家の近所に「太刀洗」という井戸があり、そ…

ある晴れた日に

「ああ、中央線の空を飛んであの子の胸に突き刺され!」 と、いまさっき友部正人が叫んでいたね。ちょうど20年前の昨日も東京は晴れていた。その日、渋い2枚目俳優のケイリー・グラントが82歳で死んだ。ちょうどその日、同じ英国生まれの女優ジェーン・…

Itの降臨

今日は、まず出光美術館の国宝「伴大納言絵巻」をざっと見物してから(超満員)、文化の文化祭に行きました。今年のファッションショーは「中心軸を広げよう」というテーマのもとで遠藤記念館にて開催されました。この記念館はいまでは再建されてふつうのコ…

音楽が聴こえ、演劇が見えてくる批評

音楽が聴こえ、演劇が見えてくる批評私は、あまり他人の文章を読んで感激しない非人情な人間だが、例外もある。先日畏友、北嶋孝氏(マガジン・ワンダーランド編集長)の『千秋残日抄』“第5回 青い鳥「夏の思い出」の思い出”を読んでとても心をうたれた。劇…