蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

鎌倉ちょっと不思議な物語 第二話

鎌倉ちょっと不思議な物語 第二話

数日前に山道を歩いていたら、見慣れぬ赤土が眼に飛び込んできた。

おそらく誰かがここで半日がかりで深い穴を掘って、新鮮なヤマイモを手に入れたのだろう。

この辺はヤマイモが自生している。毎年この近所でヤマイモを掘っているので、あちこちにポコポコ穴が開いている。

数年前、たぶんその人と思われるおじいさんが、スポーツカブの後に、長いヤマイモと真っすぐな鉄の棒を乗せて家に帰っていくところを見たことがある。鉄棒の先は鑿のように尖らせてあった。

しかし私は、そのおじいさんを全然うらやましくはなかった。なぜなら、私の三大苦手のひとつがトロロだから。