蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

2015-03-01から1ヶ月間の記事一覧

西暦2015年弥生蝶人花鳥風月狂歌三昧

ある晴れた日にある晴れた日に第298回 ようやつと去んでくれけり如月尽 明治大正昭和平成人間皆迷羊 蛇長しされど我らが人世ほど長くはない 蛇長く長長き夜をひとりCOME ON寝む 冬去りて春来たりなば夏遠からじ お玉が滅ぶか私が滅ぶかどちらが先に駈けつ…

なにゆえに第13回~西暦2015年弥生蝶人花鳥風月狂歌三昧

ある晴れた日にある晴れた日に第297回 なにゆえに物価がどんどん上がり行く安倍蚤糞めどですかでん なにゆえに安倍蚤糞は知事を避ける沖縄の最新民意が怖いから なにゆえに線路はどこまでも続いてる僕らの旅がまだ終わらないから なにゆえに自衛隊を海外…

吉田秀和述西川彰一編「モーツァルトその音楽と生涯」第5巻を読んで

照る日曇る日第771回 今宵出舟はお名残り惜しや。 モザール最後の年の最後の曲k626を放送する吉田翁の双眼には、さぞかし潤沢なドロプスが頬を伝わり流れたであろう、そのような最終回の最終巻なりき。 ついに未完に終わったレクイエムに至るまでに翁に…

国立劇場で「梅雨小袖昔八丈=髪結新三」千穐楽をみて

茫洋物見遊山記第174回 傾きかけた商家のお嬢さん(中村児太郎)。手代の忠七(市川門之助)と言い交わしていたのだが、んなこと委細構わず五〇〇両の結納金のかたに母親は嫁入りを決めてしまう。折良くだか悪くだか来合わせた髪結の新三(中村橋之助)が…

母を偲びて~西暦2015年初春版

ある晴れた日に第296回 天ざかる鄙の里にて侘びし人 八十路を過ぎてひとり逝きたり 日曜は聖なる神をほめ誉えん 母は高音我等は低音 教会の日曜の朝の奏楽の 前奏無みして歌い給えり 陽炎のひかりあまねき洗面台 声を殺さず泣かれし朝あり 千両、万両、億…

青い水平線~「これでも詩かよ」第133番

ある晴れた日に第295回 波波波波波波波波波波波波波波波波波波波波波波波波波波波波波波波波波波波波波波波波 冬去りて春来たりなば夏遠からじ 蝶人

佐々木愛子全歌集

ある晴れた日に第294回 一昨日は私の母愛子の命日でしたので、その冥福を祈るために生涯アマチュアの歌詠みであった彼女の全歌集をここに採録しておきたいと存じます。母の霊よ安かれ! つたなくて うたにならねば みそひともじ ただつづるのみ おもいの…

夏目漱石の「三四郎」を読んで

照る日曇る日第770回 購読している朝日新聞がさきの「こころ」に続いて日々連載していたのでなんとなく再読することになってしまったが、止せばよかったと後悔することになってしまった。なんというか、読物としてほとんど詰らなかったのである。 むかし…

斉藤斎藤著「渡辺のわたし」を読んで~「これでも詩かよ」第130番

ある晴れた日に第293回 友達の友達は友達 友達の友達は友達なので斉藤斎藤はFB友達 友達の友達は友達なので鈴木志郎康はわが偏愛の極私的詩人 友達の友達は友達なので横山リエは「新宿泥棒日記」 友達の友達は友達なので今井アレクサンドルはやぶれかぶ…

プルースト著岩崎力訳「楽しみと日々」を読んで

照る日曇る日第768回 「失われた時を求めて」の作者が20代前半に書いた短編小説&エッセイのアマルガム&ブリコラージュ本で、アナトール・フランスが序文を寄せています。 昔から「栴檀は双葉より芳し」なぞと申しますが、マア少しは後年の大傑作を連…

父と子~「これでも詩かよ」第131番

ある晴れた日に第292回 お 父 さ ん 僕 を 怒 っ た お父さんは耕君を怒ったり注意したりしないよ 注 意 し た り し な い で ね けふもまたお父さん怒ったり注意したりしないでねという息子 蝶人

鎌倉十二所を歩く その6 七曲ケ谷の巻

茫洋物見遊山記第173回&鎌倉ちょっと不思議な物語第335回 前々回に取り上げた「三郎の滝」のうえに七曲ケ谷(ななまがりやつ)という谷戸が広がっている。 「三郎の滝」となって流れ落ちる渓流を七曲川と称するが、その名の通りくねくねと蛇行する小…

田村隆一著「田村隆一全集4」を読んで~「これでも詩かよ」第129番

照る日曇る日第767回 1992年の「ハミングバード」という詩集の中に 「亀が淵ブルース」という一篇がある。 ここで田村隆一さんは、永福寺の旧蹟を歌っている。 永福寺というのは廃寺である。 奥州征伐で義経や藤原氏一族など数万を殺戮した頼朝が、怨…

鎌倉十二所を歩く その5 「太刀洗の水」の巻

茫洋物見遊山記第172回&鎌倉ちょっと不思議な物語第334回 「三郎の滝」の少し手前には「太刀洗の水」が竹筒からちょろちょろ流れている。 これは「鎌倉五名水」のひとつで、その上の岩山から湧き出てくる二種類の清流が合体したもので、台風のために…

鎌倉十二所を歩く その4 「三郎の滝」の巻

茫洋物見遊山記第171回&鎌倉ちょっと不思議な物語第333回 朝夷奈切通の麓には高さ5メートルほどの三郎の滝が落ちている。ふだんはあまり水量がないが、嵐の折には轟々と音をたてて大量の水が滝つぼめがけて落下し、朝夷奈峠の脇を流れる渓流と合体し…

池辺三山述滝田樗陰編「明治維新三大政治家」を読んで

照る日曇る日第766回 夏目漱石を東京の朝日新聞に招聘した編集主幹の池辺三山が49歳で死ぬ間際に中央公論の名編集者滝田樗陰に語り下ろした幕末維新の立役者論です。 先輩である同時代人の大隈、山県、井上、ちょっと下がって原敬、犬養毅、後藤新平、…

すべての言葉は通り過ぎてゆく 第20回

西暦2015年如月蝶人狂言畸語輯&バガテル-そんな私のここだけの話op.193 国際政治の過酷な打算の犠牲となってまたしても散った若い命。無辜の民を無慈悲に殺戮するイスラム国の相次ぐ蛮行に抗議する。2/1 邦人が誘拐されていること、その解放交渉が秘密…

鎌倉十二所を歩く その3 鑪ケ谷の巻

茫洋物見遊山記第170回&鎌倉ちょっと不思議な物語第332回 鑪ケ谷と書いて「たたらがやつ」と読む。 たたらとは「たたら製鉄」のことで、我々の祖先は遅くとも縄文時代の末期に、土製の炉に木炭と砂鉄を装入して鉄を作り出す技術を身につけていた。 本…

おフランス映画を2本みた

フランシス・ベベール監督の「ルビーとカンタン」をみて bowyow cine-archives vol.782&783 ジャン・レノとジェラール・ドパルデュー共演によるフレンチコメディですが、それほど笑えないのは、ドパルデュー演じるアホ莫迦男の実在感があまりないせいかもし…

鎌倉十二所を歩く その2 十二所神社の巻

茫洋物見遊山記第169回&鎌倉ちょっと不思議な物語第331回 祭神は天神七柱、地神五柱の十二柱。境内には山の神、疱瘡神、宇佐八幡、地主神がありここ十二所の鎮守である。 かつては熊野十二所権現社といわれ、弘安元(1278)年の創建とされる。もとは…

ブライアン・デ・パルマ監督の「ファム・ファタール」をみて

bowyow cine-archives vol.781 ヴィクトリアズ・シークレットのモデルをしていた主役のレベッカ・ローミンはエロッぽくていいが、全然ファム・ファタールというタイプではないね。 どういうわけか坂本龍一が劇伴を担当。ラヴェルの「ボレロ」を変奏したり苦…

ドロンの映画を2本みて

bowyow cine-archives vol.779&780 ドゥッチョ・テッサリ監督の「ビッグ・ガン」をみて アラン・ドロン扮する殺し屋が、足を洗おうとしたが許されず、妻子を殺されてしまったので欧州闇社会の親分たちを屠ってゆくが、ビビった幹部の和解に乗ったのが仇とな…

カエルの歌が聞こえてくるか

鎌倉ちょっと不思議な物語第330回 &バガテル-そんな私のここだけの話op.192 毎年太刀洗の朝夷奈峠の三郎の滝を登った原っぱにあるお玉が池を整備してカエルの産卵の環境を整えているのだが、今年は第一現場で2月14日にそれを見つけた。(写真は第2…

ウディ・アレン監督の「人生万歳!」をみて

bowyow cine-archives vol.778 2009年に久しぶりにアメリカで製作されたニューヨークを舞台にした人世物語です。 主役の初老の元物理学者役のラリー・デヴィッドが冒頭から物凄く長い台詞をらくらくと喋るので、もしかするとこいつはだいぶ肥ったがウデ…

岩田宏著「岩田宏詩集成」を読んで~「これでも詩かよ」第128番

照る日曇る日第765回 最新版かぞえ唄 一つとせ 人は一人で生まれ来て 一人静かに死んでゆく 二つとせ 二人で一人の仲良しも 死ぬときゃ別々に死ぬんです 三つとせ みんないくさに行くときも 断固拒否する人もいた 四つとせ よしなよしなと言われても つい…

アンドリュー・V・マクラグレン監督の「ワイルド・ギーズ」をみて

bowyow cine-archives vol.777 78年製作のイギリス映画で、リチャード・バートン、ロジャー・ムーアなどの元海軍OBが止せばいいのに一旗挙げようとアフリカくんだりまで行って、人質にされていた某国の大統領をいったん救出するのだが、結局大統領も大勢…

T・E・ロレンス著「完全版知恵の七柱第2巻」を読んで

照る日曇る日第764回 ご存知「アラビアのロレンス」の熱砂の実録大冒険の第2弾なりい。本巻では有名なデビッド・リーンの映画のクライマックス、アカバへの奇跡の大進撃のくだりが叙述されているが、実際はあんなかっこいいものではなかったようだ。 対…

井上ひさし著「井上ひさし短編中編小説集成第4巻」を読んで

照る日曇る日第763回 「新釈 遠野物語」と「浅草鳥越あずま床」に加えて単行本未収録の後者の続編のおまけつきであるが、なんといっても「新釈 遠野物語」の変幻自在な空想力と構想力の妙に感嘆讃嘆させられる。 佐々木鏡石のカタリを柳田國男がまとめた…

中上健次著「中上健次集三」を読んで

照る日曇る日第762回 このインスクリプト版第3巻では、河出書房版の「中上健次」にも収録された「鳳仙花」を柱に、単行本「水の女」を併録している。 「水の女」は「赫髪」、「水の女」「かげろう」「鷹を飼う家」「鬼」という表題のついた5つの短編から…

日本文学全集「中上健次」を読んで

照る日曇る日第761回 本巻の大半は「鳳仙花」で、あとは「千年の愉楽」、「熊野集」からの数編をオマケにつけたものであるが、本命のグリコの「鳳仙花」のセレクトは大正解で、これはもしかすると著者の最高傑作ではないだろうか。 というのも「岬」「枯木…