蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

2011-11-01から1ヶ月間の記事一覧

ある晴れた日に 第101回

西暦2011年霜月 蝶人狂歌三昧 ゆく秋や横須賀線はみな昼寝夕焼けやカバヤキャラメルなめたいな鎌倉では生き残れなかったねラルフローレンしょうぐあいしゃのむすこをもつきみがしょうぐあいしゃになってしょうぐあいしゃのははをかいぐおしているのはし…

チャップリン監督・主演・音楽の「ライムライト」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.173 1952年製作のアメリカ時代最後の作品です。この映画を見る度に感動するのはライムライトの主題音楽です。プロでもかけないこのメロディを、本来は素人の茶プリンがよくも作曲できたもんだ、といつも感心します…

是枝裕和監督の「誰も知らない」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.172 両親が離婚して彼らが扶養を放棄した子供たちはそれだけでとても不幸だ。そんな悲劇は世界中どこにでもあるだろう。とりわけアフリカやアジアの途上国では。と思ったら、富裕国であるはずの日本の首都圏でも実際に…

パーヴェル・ルンギン監督の「ラフマニノフ ある愛の調べ」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.171&♪音楽千夜一夜 第231回 2007年のロシア映画で、ピアノの達人にして作曲家のラフマニノフの半生を扱っています。父母の離婚、恩師への愛憎、揺れ動く女性関係、アメリカ亡命後の過酷な演奏旅行、作曲ができない…

丸谷才一著「持ち重りする薔薇の花」を読んで

照る日曇る日第467回博学才知の文学者がものした最新作を、その思わせぶりな題名に誘われて読んでみましたら、なんのことはない私の好きなクラシック音楽の世界の話で、しかも東京カルテットに似たさる弦楽四重奏団の内幕、四人のメンバーの離合集散や栄光と…

クリスチャン・デュゲイ監督の「ココ・シャネル」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.170&ふぁっちょん幻論第65回 孤児院、修道院で育った彼女が悪戦苦闘しながらデザイナーとして女性として自立し、15年間のブランクを経て戦後初のコレクションの失敗にもめげず2回目のショウで見事カムバックし、8…

さらにばかばかしいことを書いてみたくて

バガテルop150 こないだ朝から舌が痛くて痛くて仕方がないのであんぐり開いてみたら真ん中にオデキのようなものが出来ていた。てっきり舌ガンではないかとおそれおののいた私は早速中原中也が死んだ清川病院の隣にあるT耳鼻咽喉科まで自転車を飛ばしてかけ…

もっとばかばかしいことを書いてみたくて

バガテルop149朝パソコンをあけてみるとこんなメールが入っていた。「実は私たち、お互いに別の母親を持つ腹違いの姉妹でして、幼少から複雑な家庭環境にストレスを感じ、次第にお互いを性的に癒すようになりました。その関係はもう十年以上にも及ぶのですが…

ばかばかしいことを書いてみたくて

バガテルop148プロ野球の日本シリーズがとうとう終わってしまった。落合ドラゴンズにも勝たせたかったが今回は選手層の厚い軟弱銀行が実力相応だろう。しかし監督力ではあきらかに俺流の方が上であった。大洋ホエールズを裏切って軟弱銀行に身売りした内川が…

ステーブン・ソダーバーグ監督の「アウト・オブ・サイト」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.1691998年に製作されたイケメン脱獄犯と超美人FBI捜査官が一目惚れ、追いつ追われつしながら超楽天的な結末に至るというこのいかにもなハリウッド映画が、なんと全米批評家協会監督賞を授与されているというの…

「グレート・チエンバー・ミュージック〜偉大なる室内楽集」を聴いて

♪音楽千夜一夜 第230回これイタリアの放送局からオンエアされたアスコーナ、ルガーノ、ボローニャにおける室内楽のライブ演奏を10枚組のCDに収めた1枚100円弱の超廉価盤です。 グリュミオーとハスキルはかねてから定評がある名コンビですが、モーツ…

椎名誠著「そらをみてますないてます」を読んで

照る日曇る日第466回この人をマガジンハウスのパーティで見かけたのはいつのことだっただろうか。鍛え抜かれた巨大な体躯とは裏腹なその優しげな風貌の持ち主が入って来ると、当時の社長の木滑氏とブルータスの石川編集長がいそいそと駆け寄り、その肩を抱く…

商標と「鎌倉エキスト」

広告戯評第16回&鎌倉ちょっと不思議な物語第251回&バガテルop147横須賀の歯医者さんへ行く途中、鎌倉駅のホームで駅に付属している小さな商業施設の看板が目に入りました。鎌倉EKIST(エキスト)という名前ですが、これは悪いネーミングではありません。恐…

ハルモニア・ムンディ盤で「18世紀音楽輯」を聴く

♪音楽千夜一夜 第229回またしてもクラシック愛好家に悲報が齎されました。とうとう英EMIが倒産してソニーに身売りし、CDの販売権はユニバーサルグループを傘下に持つ仏ビベンディに叩き売られたそうですが、昔から耳目になじんできたレーベルの解体は、私…

川上未映子著「すべて真夜中の恋人たち」を読んで

照る日曇る日第465回人気作家による最新作はなんと恋愛小説です。といっても正攻法というよりはちょっと設定に変化球を投げていて、内気で内向的な校正専門家の若い女性が、年上の自称高校物理教師にだんだん惹かれていく顛末をじわじわと描きます。だから光…

中野雄著「指揮者の役割」を読んで

照る日曇る日第464回&♪音楽千夜一夜 第228回 欧州の三大オーケストラ、すなわちウイーン、ベルリン、コンセルトヘボウを中心に指揮者に課せられた役割について論じる著者の言葉は、夥しいライブの鑑賞者、世界の楽壇との交流、そして長年にわたるレコード企…

アンドレイ・ズビャギンツェフ監督の「父、帰る」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.168こちらは2003年に製作されたソ連ならぬ現代ロシアのカラー映画ですが、コッダックのフィルムを使っていながらモノクローム調の映像が素晴らしく透明で見事に調律された照明と相俟って独特の映像空間を造形する…

アンドレイ・タルコフスキー監督の「サクリファイス」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.1671987年に製作された偉大な偉大な監督の遺作です。第3次世界戦争の勃発で人類滅亡の危機に直面した主人公の恐怖と絶望、そして精神の危機からの自己犠牲による劇的な転生を描いている、といえばなんだかもっと…

横浜銀行由比ヶ浜支店跡を訪ねて

茫洋物見遊山記第70回&&勝手に建築観光第45回&鎌倉ちょっと不思議な物語第250回& 鎌倉文学館ツアーの途中で、窓や外装に施したアールデコ風のデザインが印象的な、古くて懐かしい小さなビルジングに出会いました。ちょうど芥川龍之介が亡くなった昭和二…

芥川龍之介の借屋跡を訪ねて

茫洋物見遊山記第69回&鎌倉ちょっと不思議な物語第249回 由比ヶ浜の下宿の後で芥川が居を構えたのは若宮大路をはさんで遠く離れた由比若宮(元八幡神社)の傍らでした。由比若宮は鶴岡八幡宮の前身で、前九年の役で奥州を鎮定した源頼義は、康平六(1063)…

高浜虚子旧居を訪ねて

茫洋物見遊山記第68回&鎌倉ちょっと不思議な物語第248回&勝手に建築観光第44回&茫洋広告戯評第15回 若き日の芥川龍之介の下宿からほどちかいところになんと高浜虚子の旧居がひっそりとたっていました。虚子の死後は次女の星野立子さんが住んでいたようで…

芥川龍之介の下宿跡を訪ねて

茫洋物見遊山記第67回&鎌倉ちょっと不思議な物語第247回 恒例の鎌倉文学館の文学散歩で学芸員の方のガイドに導かれて、秋の半日をそぞろ歩きました。自転車から転落して腕の骨を折った細君は無念の欠席です。今回はまず江の電由比ヶ浜駅から芥川の下宿跡を…

リンダ・ハッテンドーフ監督の「ミリキタニの猫」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.166最初はNYのソーホーでうろつく中央アジア系のホームレスの話かと思ったのですが、この段ボールにうずもれた一画で妙な絵を描き続けている薄汚れた爺さんがなんとジミー・ツトム・ミリキタニ(三力谷勉)という純…

四方田犬彦・石井睦美著「再会と別離」を読んで

照る日曇る日第462回 一人の男と一人の女が出会えば、光と闇の中でさまざまな記憶がはぐくまれ、二人の間にはいくつもの時間が音を立てて流れはじめる。これは五〇歳代の真ん中までてんでに漂流し続けてきた二人の作家が、来たるべき再会を前にして、彼らの…

小倉慈司・山口耀臣著「天皇と宗教」を読んで

照る日曇る日第461回「天皇の宗教」と聞かれれば、そりゃあやっぱり神道でしょう。なんたって国家神道というくらいだから、ものすごく格調高いんじゃないか、と思うのですが、実態はそうでもなさそうです。私はときどき正月二日に鎌倉宮の正式参拝に訪れて、…

崔洋一監督の「クイール」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.165京都府亀岡市を舞台に盲導犬のクイール君が大活躍するお話ですが、崔洋一監督の演出はクールと言うか、さっぱり燃えないというか、観客が期待するお涙頂戴のペット感動物語に走らないところが、妙に印象に残りまし…

鎌倉国宝館で「鎌倉×密教」展を見る

茫洋物見遊山記第66回&鎌倉ちょっと不思議な物語第246回 秋風薫る八幡宮の傍らにある国宝館で「秘仏光臨」「鎌倉ゆかりの密教尊像が一堂に集結」と銘打たれた特別展に行ってきました。どうでもよいことですが、最近は大小を問わず展覧会のタイトルやキャッ…

シャルル・ミュンシュ指揮「後期ロマンチック作品集」を聴いて

♪音楽千夜一夜 第227回ワーグナー、チャイコフスキー、ドヴォルザーク、マーラー、リヒアルト・シュトラウスを天才指揮者ミュンシュがボストン交響楽団をドライヴして聴かせる7枚組のCD。どれも素晴らしく聴きごたえがあるが、特に凄いのがマーラーの歌曲…

リチャード・ブルックス監督の「熱いトタン屋根の猫」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.164 まるで熱いトタン屋根の上の猫のようにおのれの性欲を向こう三軒両隣に発散しているエリザベス・テイラーは耀くように美しい。猫どころか荒野を疾走するピューマのように自分の欲望をまっしぐらに貫こうとする動物…

アーネ・グリムシャー監督の「理由」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.163ショーン・コネリーが主演する1995年製作のミステリー・サスペンス映画である。私は年々記憶力がはげしく減退しているので、前に見たことをすっかり忘れてまた見てしまうことが多いのだが、映画の半ばを過ぎて…