蝶人戯画録

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横浜銀行由比ヶ浜支店跡を訪ねて


茫洋物見遊山記第70回&&勝手に建築観光第45回&鎌倉ちょっと不思議な物語第250回&


鎌倉文学館ツアーの途中で、窓や外装に施したアールデコ風のデザインが印象的な、古くて懐かしい小さなビルジングに出会いました。ちょうど芥川龍之介が亡くなった昭和二年に建てられた横浜銀行由比ヶ浜支店です。昭和一二年に死んだ中原中也もきっとこの銀行を利用したことでしょう。

このビルは大佛様に向かう道など五本の交差する場所に立っていて有名な長谷の六地蔵もこの近所にあり、この界隈のちょっとしたランドマークの役割を果たしています。

私のなけなしの貯金はぜんぶ横浜銀行に預けてあります。こんなお洒落なオフィスなら、駅前からざわざわここまで足を運んでも利用しても構わない、とさえ思うのですが、残念ながら現在はその名も「ザ・バンク」というバーに姿を変えてアルコールを一滴たりとも口にすることを医師から禁じられている私には無縁の存在と化しているのはちょっと残念でした。

鎌倉でお洒落な銀行といえば、お洒落とは無縁なビジネスを展開している三井住友銀行が、最近若宮大路にモダンな外装の支店を開設したのですが、よくよく見ればそれは倒産したラルフローレンの直営店。おされと言わんよりは、弱肉強食を地でいく買収劇の残骸なのでした。


鎌倉では生き残れなかったねラルフローレン 蝶人