蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

2015-09-01から1ヶ月間の記事一覧

西暦2015年長月蝶人花鳥風月狂歌三昧

ある晴れた日に 第333回 海岸に漂える三歳の男児の映像が世界を動かす コンクリートの森戸橋に幣下がり神社の祭り近付きにけり 今朝もまた隣の犬が啼いているわんわんわんわんワンワンワワン 鎌倉の市の花は竜胆だというけれど市内のどこでも見たことがな…

デヴィッド・フランケル監督の「プラダを着た悪魔」をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.912&ふぁっちょん幻論第96回&バガテル―そんな私のここだけの話 op.214 なぜか名物ファッション誌の名物編集長のアシスタントに採用されたファッション音痴の女子大生が猛烈なしごきに耐えながら悪戦苦闘する話。 …

SVIATOSLAV RICHITER THE COMPLETE ALBUM COLLECTIONを聴いて

音楽千夜一夜第348 回 名ピアニスト、リヒテルの全集というてもRCAとSONYに録音したものの全部なので18枚しかないが、その中には彼が西側にデビューした1960年のカーネギーホールでのライヴ録音が含まれていて聴きごたえがある。 恐らくリヒ…

Les Petits Riens ~三十五年はひと昔 蝶人五風十雨録第5回「八月三十日」の巻~バガテル-そんな私のここだけの話 op.213 1981年8月30日 日曜 台風、沖縄に来襲。強風吹く。耕君最後の夏休み。いよいよ新学期だね。 1982年8月30日 月曜 再度…

新潮日本古典集成新装版「萬葉集五」を読んで

照る日曇る日第817回 シリーズの最終巻は本編の巻一七、一八、一九、二〇の4巻を収録していますが、これらは基本的には編者大伴家持の個人歌集を軸にしたいわば「私的」なもので、それまでの作品がおもに「公的」な作品であったことと際立った対照をなし…

是枝裕和監督の「奇跡」をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.911 父母の離婚で福岡と鹿児島に別々に住んでいる兄弟が、九州新幹線の開業日に登りと下りがすれ違う瞬間に願いをすれば叶えられるという噂を信じて実行するおはなしを映画にしたもので、いかにもスポンサーのJRらし…

ロマン・ポランスキー監督の「おとなのけんか」をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.910 子供が喧嘩して一方が他方を傷つけたので、その両親が被害者の両親を自宅に訪ねるところから映画は始まる。はじめはお互いに紳士的友好的な雰囲気だったが、もののはずみで子供の喧嘩はどこへやら、大人同士がお互…

谷崎潤一郎著「細雪」を読んで

照る日曇る日第815回~「これでも詩かよ」第157番 日本が中国を遮二無二侵していた頃に、 そうして手痛いしっぺ返しを喰らうておった頃に、 大阪と芦屋に四人の美しい姉妹が住んでおりました。 一番下のこいさんは、とびっきりのモダンガール。 おっと…

新潮日本古典集成新装版「萬葉集四」を読んで

照る日曇る日第815回 巻第十三、十四、十五、十六を収めた本書は、正直申していささか退屈であった前巻はとはうって変り、編集も作品の切れ味も鋭くなってまことに読み応えがあります。 とりわけ遣新羅大使らの旅立ち、その苦難に満ちた道行き、行くもの…

続 もう二度と見ないであろう映画たち

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.905、906、907、908、909 ○ロバート・ムーア監督の「名探偵登場」をみて ポアロやミスマーブル、サム・スペードなどの有名な名探偵が招待された館で殺人事件が起こる。さて犯人は誰かというサスペンスドラマずら。 ピ…

もう二度と見ないであろう映画たち

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.900、901,902,903,904 ○エドワード・ドミトリク監督の「アルバレス・ケリー」をみて 牛飼いのウィリアム・ホールデンと南軍兵士リチャード・ウィッドマークの宿命の対決と男の友情てか。北軍と南軍の両方から2500…

ドナルド・キーン著「ドナルド・キーン著作集第十二巻明治天皇上」を読んで

照る日曇る日第814回 定評あるキーン選手の評伝です。 それが渡辺崋山であろうが、足利義政だろうが、今回のように偉大なる明治天皇であろうがまったく変わりがなく、膨大な資料や史実の富士山を徹底的に掘り下げ、その人物と彼が生きた時代の具体的な姿…

映画漫評ずら

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.895、896、897、898、899 ○ジョン・リー・ハンコック監督の「しあわせの隠れ場所」をみて 超富裕層の白人夫妻が超貧乏人最下層の黒人を救済する間にじんかんのほんとうの幸福について思い当たる機会を得、あまつさえそ…

映画短評ずら

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.890、891、892、893、894 ○レニー・ハーリン監督の「ロング・キス・グッドナイト」をみて 兎のように臆病な主婦がじつは政府公認の凄腕殺し屋だったあ、という意外なドンデンガエシであるが、映画の世界ではよくあるこ…

古川映子(玉萌)句集「萌Ⅱ」を読んで

照る日曇る日第813回 小生のミク友である「アート」様より頂戴した句集「萌Ⅱ」を、謹んで拝読いたしました。 年の夜の湯浴みのわが身いとおしむ ふと気づく光は春を含みけり 天の青満開の花待ちており 70代の記念に御作りになった102ページの書物に…

ギュンター・ヴァント指揮ベルリンフィルの「ブルックナー交響曲集」を聴く

音楽千夜一夜第347 回 このコンピレーションでは4番、5番、7番、8番、そして最後の交響曲9番と作曲者の代表作が全部収められています。 名人ヴァントによるブルックナーはもはや入神の域に達しているからそれが何番であろうが変な話だが安心して聴い…

川喜多記念映画館でアーサー・シュレシンジャー監督の「真夜中のカーボーイ」をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.889& 鎌倉ちょっと不思議な物語第355回 邦題の「カーボーイ」じゃなくて正しくは「カウボーイ」ですね。 なんか水野晴郎という人の勝手な思いつきでそうしたようですが、下らない冗談は顔だけにしてほしかった。 映…

新潮版・青木、井出、伊藤、清水、橋本編「萬葉集三」を読んで

照る日曇る日第812回 本卷では萬葉集の巻第10から12までが収録されている。 天平18年に急遽越中へ赴任することになった大伴家持が、その前年に大車輪で編纂したと解説されているが、それまでの巻と異なって心に深々としみこむ歌がなかったのはなぜ…

谷崎潤一郎著「谷崎潤一郎全集第20巻」を読んで

照る日曇る日第812回 「細雪」の下巻と「磯田多佳女のこと」「都わすれの記」「月と狂言師」等を収めているが、「疎開日記」のなかで谷崎潤一郎と永井荷風の2人の文豪の出会いが2度にわたって触れられているのが興味深い。 最初は昭和19年3月4日に…

鏑木清方記念美術館で「秋の情趣展」をみて

茫洋物見遊山記第188回 鎌倉ちょっと不思議な物語第354回 鏑木清方の旧邸に建つ美術館で、清方の多彩な表現を楽しむ「秋の情趣展」を鑑賞しました。今回は「孤児院」という珍しい題材の大きな日本画に接してちょっと驚きました。制作されたのは明治3…

鎌倉国宝館で「仏像入門展」をみて

茫洋物見遊山記第187回 鎌倉ちょっと不思議な物語第353回 残念ながら去る6日の日曜日に終ってしまったのだが、この夏休みのお子様向けと思われた展覧会は、仏像のあれやこれやを知りたい大人にも非常に為になる有意義な展覧会であったずら。 会場には…

夏目漱石の「それから」を読んで

照る日曇る日第811回 朝日新聞に連載されていた「それから」が昨日で終った。 漱石は、著者は前作の「三四郎」のそれからを描いた続編であると広告していたが、実際に書かれたのはまったく違う話だった。 主人公の代助は熊本生まれのとっぽい元大学生では…

神奈川県立近代美術館で「鎌倉からはじまった。PART2 1951-2016」をみて

茫洋物見遊山記第186回 鎌倉ちょっと不思議な物語第352回 鎌倉館の最後の1つ手前のさよなら公演を見物してきました。本館はすべてが館蔵品ですが、この会場で何回も目にした高橋由一の「江の島図」や青木繁の「真・善・美」、関根正二の「少年」、「村…

新潮日本古典集成新装版 西行著「山家集」を読んで

照る日曇る日第810回 西行著はちと変だが、まあ俗名佐藤義清、出家してからは西行を名乗った中世有数の歌人の和歌をスクープしたのが山家集であることは間違いなかろう。 これを読んで分かるのは、西行がいわゆる諸国一見の僧であって、京大和、伊勢、高…

鈴木志郎康著「どんどん詩を書いちゃえで詩を書いた」を読んで

照る日曇る日第809回 敬愛する詩人の最新版を拝読いたしました。 鈴木さんの詩はとっつきやすく、すらすらどんどん読めて、なおかつ意味内容が胸にまっすぐ飛んでくるのがなによりうれしい。 とかく現代詩というと最初の行からして格調が高く、しかし何回…

岡本喜八監督の「日本でいちばん長い日」をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.888 8月15日の天皇の詔勅が出される前後の政治的混乱、というより陸軍若手強硬派によるクーデター未遂事件を扱っている。 帝国陸海軍が国家を聾断し、血迷って開始した“大東亜戦争”であったが、結局天皇の「聖断」…

中上健次著「中上健次集五」を読んで

照る日曇る日第808回 中上健次というと蓮実重彦、江藤淳、奥泉光などの作家や評論家諸氏が手放しの大賛辞を贈って褒め称えているんだが、彼らのその論拠を読んでもてんで理解できないのは、思うにその尊崇と跪拝が都会的な青白きインテリゲンちゃんたちの…

すべての言葉は通り過ぎてゆく 第26回

西暦2015年葉月蝶人狂言畸語輯&バガテル-そんな私のここだけの話op.212 ふたつ文字牛の角文字すぐな文字ゆがみ文字とぞ君は覚ゆる 後嵯峨天皇第二皇女、悦子内親王 こいしく この愚かな「国賊」めらが。靖国の神様ですら、「違憲違憲、もう戦争法案な…

なにゆえに第18回~西暦2015年葉月蝶人花鳥風月狂歌三昧

ある晴れた日に 第332回 なにゆえにアメリカの敵まで敵にする集団自衛権は戦争の素 なにゆえに図書館は発作的に休むミンミンゼミが痙攣的に鳴くので なにゆえに今年の夏はかくまで暑いおてんとうさまが戦争法案に怒ってる なにゆえに中国朝鮮を死ぬほど懼…