蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

2015-10-01から1ヶ月間の記事一覧

なにゆえに第20回~西暦2015年神無月蝶人花鳥風月狂歌三昧

ある晴れた日に 第338回 なにゆえに毎日殺人事件が起こるのか毎日殺人を報道するので なにゆえに右肩右腕の激痛が治らぬ天は右翼を見放しつつあり なにゆえにいきなりリクエストだけ送るつけるなにか一言書きなさいよ なにゆえに夜ともなれば星を見上げる…

村上春樹著「職業としての小説家」を読んで 

照る日曇る日第825回 この本は著者が初めて書いた「自伝的なエッセイ」です。 いちおう小説家を志望する若者たちへの小規模な座談というスタイルをとっていますが、その中には著者がどのようにして突然小説を書こうと思い立ったのか、「ど素人」の青年が…

国立劇場で「通し狂言伊勢音頭恋寝刃」の千穐楽をみて

茫洋物見遊山記第190回 久しぶりの歌舞伎を息子と一緒に半蔵門で鑑賞いたしました。 演目は近松徳三の手になる「伊勢音頭恋寝刃」でこの劇場ではなんと53年振りの公演だそうです。 寛政8年5月、伊勢国古市の遊女屋」油屋で地元の医者、孫福斎が仕出か…

家族の肖像 その7~「これでも詩かよ」第160番

ある晴れた日に 第337回 「お父さん、虫歯の英語ってなあに? 「虫歯、虫歯の英語かあ、バッド・トゥースかな」 「バッドトース」 「そうじゃないよ。バッド・トゥース」 「バッド・トース」 「お母さん、よろしくお伝えください、ってなに?」 「ごきげ…

ジョー・ジョンストン監督の「オーシャン・オブ・ファイヤー」をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.936 原題は「ビダルゴ」で、その名のアメリカの野生馬ムスタングにまたがった西部のカウボーイが愛馬ともども、なんとアラビアの大砂漠で大活躍するという血沸き肉躍る人馬一体の感動的な友愛物語です。 西部劇と「ア…

西部劇2本立ずら 

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.934、935 ○ジョン・フォード監督の「モホークの太鼓」をみて 1939年製作の「カラー」映画ずら。 西部開拓時代の若い夫婦、ヘンリー・フォンダとクローデット・コルベールが助け合いながら逞しく生き抜いていく愛と…

池澤夏樹編「河出版日本文学全集08」を読んで

照る日曇る日第824回 「日本霊異記」と「発心記」を伊藤比呂美、「今昔物語」を福永武彦、「宇治拾遺物語」を町田康が現代日本語にしているが、伊藤と町田のが断然面白い。 なるほど古典の翻訳は10年ごとにやり直せと言われるだけのことはあるなあ。 町…

偶には嫌いなミュージカル映画をみるずら

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.932、933 ○ウィリアム・ワイラー監督の「ファニーガール」をみて オマー・シャリフがイケメンであることは間違いないとして、問題はバーブラ・ストライサンドが、彼が言うように、美人であるかどうかだが、その歌唱力…

「神奈川県立美術館鎌倉館&別館」にて最後の展覧会をみる

茫洋物見遊山記第189回 &鎌倉ちょっと不思議な物語第356回 鎌倉からはじまった。PART3を見物しました。もう何回もみた作品が並んでいてとても懐かしかったのですが、高村光太郎の「上高地風景」という油絵や、島崎藤村の息子、鶏二の「風景」、内田魯…

スタンリー・キューブリックvsサム・ペキンパーずら

○スタンリー・キューブリック監督の「フルメタル・ジャケット」をみて 前半は鬼軍曹にしごかれる新兵たち、後半はベトナムに送り込まれた彼らが戦争の本当の悲惨さに直面する話に分かれている。 前半のような光景はこれまで何回も映画化されてきたが、ここで…

夢は第2の人生である 第28回 

西暦2015年弥生蝶人酔生夢死幾百夜 時代はますます閉塞し、すべての人民は投獄された。われわれは牢に入れられたまま労働し、生活することになったのだが、権力者たちの圧政と暴力によって完膚なきまでに打ちのめされ、もはや抵抗する気力すら喪っていた…

オードリー・ヘプバーンが出る映画2本ずら

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.928、929 ○テレンス・ヤング監督の「暗くなるまで待って」をみて 原題は「WAIT UNTIL DARK}だからこの邦訳は素晴らしい。すべからくかくありたいものなり。 初々しい盲目の人妻ヘプバーンが悪漢相手に命懸けの暗闇の…

クリスチャン・デュゲイ監督の「ヒトラー」をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.927 2003年にアメリカとカナダの放送局が共同制作したテレビ映画で前半の「わが闘争」は少年時代からミュンヘン一揆まで、後半の「独裁者の台頭」はナチス政権の成立から1934年の「長いナイフの夜」までを比較…

「ザビーネ・マイヤー管楽アンサンブル・ボックス」を聴いて

音楽千夜一夜第349回 ザビーネ・マイヤーをバイエルン放響から引き抜いてベルリン・フィルに入団させようとしたのは亡くなったカラヤンだったが、当時の団員全員の意思で否決された。その理由は楽団の管楽に必要とされる「厚みと融合性に欠ける」というこ…

岡井隆著「暮れてゆくバッハ」を読んで

照る日曇る日第823回 病気や手術をされたときいていたので大丈夫なにかなと案じていたのだが、いきなり 天に向き直立をするぼくの樹よお休みなさいな 夜が来てゐる などという元気な声が聞こえてきたので、驚くやらびっくりするやら、(同じことか)。 そ…

井上ひさし著「井上ひさし短編中編小説集成第12巻」を読んで

照る日曇る日第822回 シリーズの掉尾を飾るのは「言語小説集」と「東慶寺花だより」「イソップ株式会社」の3篇であるが、なかでは作者が晩年を過ごした鎌倉を舞台にした歴史物の「東慶寺花だより」が思いがけない贈りものか。 江戸時代の縁切り寺として…

おふらんす映画ずらずらずら

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.924,925、926 ○ジュリー・デルピー主演・脚本・監督の「パリ、恋人たちの2日間」をみて ヴェネチア旅行を終えた男女がNYに帰る途中ヒロインの実家があるパリに滞在したおりのすったもんだをエスプリとユーモアたっ…

いくつかの日本映画ずらずらずら

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.920、921、922、923 ○相米慎二監督の「ションベン・ライダー」をみて いたずら中学生の周辺でヤクザがでてきて誘拐事件だの追跡事件だの殺人事件だのがなんの必然性もなく次々に惹起するスクリュウボール無茶苦茶回転…

五つの歌~「これでも詩かよ」第159番

ある晴れた日に 第336回 一、長男が小学生の時に作った愛犬ムクの歌 ムク ムク ムク ムク ムクは いぬだ お 二、同じ頃に長男が作った夏休みの歌 あ、どこ行くの、あ、どこ行くの こ、と、し、の、夏休み 三、私が小学生の時、近所の中学生の永井真さんと…

2本のドイツ映画をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.918、919 ○独映画「ビヨンド・サイレンス」をみて ドイツ映画にはたとえそれが娯楽物であっても、ハリウッドと違って根が生真面目で、ドンくさいけれどいつまでも心に残るような作品が多いような気がするのは、それぞ…

河出版「日本文学全集第21巻」を読んで

照る日曇る日第821回 最近の河出書房新社の文芸物は次々に新手の企画を打ち出していて、老舗の講談社の低迷ぶりと好対照をなしているようだ。 池澤夏樹の個人編集による日本文学全集もその主力のひとつで、本21巻では、かつて朝日と読売のベトナム特派…

三隅研次監督の「大菩薩峠」 をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.915、916,917 市川雷蔵が主演する1960年公開のこの映画は、後年の「眠狂四郎」のキャラクター、型形の先駆をなすもので、刀さばきまでうりふたつである。いわれもなく辻斬りをしたり、人妻を凌辱したりする主人公…

ベトナム戦争の映画をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.913、914 マイケル・チミノ監督の「ディア・ハンター」をみて アメリカの田舎の山奥で鹿を撃っていた男たちが、ベトナムくんだりまで引っ張り出されて敵国人を無闇に撃ち殺すのだが、その敵に捕えられると自分で自分の…

谷崎潤一郎著「谷崎潤一郎全集第19巻」を読んで

照る日曇る日第820回 本卷の大半はすでに詩による感想文をしたためた「細雪」なので、ここでは述べないが、巻末には源氏物語の翻訳に関するコメントや泉鏡花、北原白秋、今東光、旧友の左團次に関する発言などアトランダムな「雑纂」が収められている。 …

井上ひさし著「井上ひさし短編中編小説集成第11巻」を読んで

照る日曇る日第819回 本卷に収録されているのは、「ナイン」「グロウブ号の冒険」そして単行本未収録だった「嘘」「親銭子銭」「空席」「「質草」「紙の家」であるが、特に感銘を受けた作品はなかった。 強いて挙げれば著者が離婚前後の事情を素材にデッ…

新潮日本古典集成「竹取物語」を読んで

照る日曇る日第818回 あの有名な竹取物語であるが、ちゃんと読んだのは初めてだったが、よく出来た小説だなあ、といたく感嘆しました。 竹取の翁が竹筒の中で蛍のように輝くかぐや姫を発見するところ、蝶よ花よと愛され、だんだん大きく可愛らしくなって…

Les Petits Riens ~三十五年もひと昔

蝶人五風十雨録第6回「九月三十日」の巻&バガテル―そんな私のここだけの話 op.216 1981年9月30日 水曜 くもり 長男の運動会のために会社を休む。障がい児なれど学友に混じってさほど目立たず見事に溶け込んでいる様子に感嘆。50メートル走も完走…

リベンジ~「これでも詩かよ」第155番

ある晴れた日に 第335回 1939年1月15日、前頭4枚目の安藝の海に敗れて連勝記録を69で止められた横綱双葉山だったが、翌年5月場所では見事全勝優勝を果たし、安藝の海には、その後一度も負けなかった。 リベンジ、リベンジ、リベンジするぞ。 …

すべての言葉は通り過ぎてゆく 第27回

西暦2015年長月蝶人狂言畸語輯&バガテル―そんな私のここだけの話 op.215 政治家は引退しますと誓った男がその舌の根も乾かないうちに新政党を立ち上げるという。こういう恥知らずの嘘つきを市長に奉る大阪市民は、己が虚仮にされていることに気付かない…

なにゆえに第19回~西暦2015年長月蝶人花鳥風月狂歌三昧

ある晴れた日に 第334回 なにゆえに猛暑転じて秋となる日本の輪廻を回転すべく なにゆえに隣の犬は朝から吠えるワンワンワンワンワンワンワワン なにゆえにエンブレムエンブレムエンブレムもっと大事なプロブレムがあるだろう なにゆえに今年は胃検診がな…