蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

2015-02-01から1ヶ月間の記事一覧

西暦2015年如月蝶人花鳥風月狂歌三昧

ある晴れた日に第288回 障がいのある息子と並んで剃られている土曜の朝の小林理髪店 担当者はどんどん変わるが君だけは同じ所に立っていた40歳の障がい者 家中の窓に垂らしたカーテンは白き秘密を外に漏らさず 腹違いの従兄妹の娘がやって来て御機嫌よ…

伊藤大輔監督の「切られ与三郎」をみて

bowyow cine-archives vol.776 歌舞伎で有名な「与話情浮名横櫛」を伊藤大輔が1960年にダイジェストして映画にしたもの。「いやさ、お富」とすごまれるお富役を若き日の淡路恵子が演じている。 主役の与三郎はなぜか一部の女性に熱狂的な人気を死後もな…

トム・グライス監督の「軍用列車」をみて

bowyow cine-archives vol.775 昔から潜水艦と鉄道を主役にした映画に駄作はなかったが、これもまあその範疇に入れてやってもいいかもしれない。 驀進する蒸気機関車の上でチャールズ・・ブロンソンとかジョン・ベンソンとかが組んず解れつの大活躍を演じる…

マキノ雅弘監督の「昭和残侠伝 死んで貰います」をみて

bowyow cine-archives vol.774 マスオさん「健さんはいつもどおり演技の出来ない健さんだったけど、ハンサムだけど許せる。それより恋人役の藤純子が終始ぶりっこの猫ねで声で喋るのがどうにも妙な感じだったね」 カツオ「だけど、ラストの大立ち回りは大迫…

紫上奇譚~「これでも詩かよ」第127番

ある晴れた日に第287回 私は諸国一見の放浪者だったが、野原で捨てられて泣いていた女の赤ちゃんを拾って育てた。食うや食わずの毎日だったが、彼女はすくすくと育っていつのまにか美しい少女になっていた。 降っても照ってもいつも私は彼女と一緒だった…

ケビン・コスナー主演・監督の「ワイルドレンジ 最後の銃撃」をみて

bowyow cine-archives vol.773 牧童仲間のロバート・デュヴァルとケビン・コスナーが放牧を阻む大牧場主に戦いを挑む話であるが、主演兼製作兼監督のコスナーのメガフォンの切れが悪過ぎて、途中で大いにダレてしまう。 クライマックスの銃撃戦はそれなりの…

梅原猛著「親鸞「四つの謎」を解く」を読んで

照る日曇る日第760回 「親鸞の出家の謎」、「法然入門の謎」、「親鸞結婚の謎」、「親鸞の悪の自覚の謎」、という四つの謎を彼なりに解いてゆくという趣向が、まるで数学の問題を解いてゆくようなスタイルになっていて、最後に「証明終り」などと記してあ…

チャン・イーモウ監督の「単騎、千里を走る。」をみて

bowyow cine-archives vol.772 高倉健が主演した2005年製作の日中合作映画で、おしもおされぬ大家となったチャン・イーモウが監督している(日本撮影分はお馴染み降旗康男だが、あまり好きではないので無視することにする)。 なんで高倉扮する老主人公…

石井輝男監督の「網走番外地」をみて

bowyow cine-archives vol.771 およそ半世紀ぶりに再見した高倉健の網走刑務所脱獄物語なり。 前半はいろいろな罪状で網走刑務所に収監された人々の囚人生活が描かれるが、なんといっても嵐寛寿郎の“八人殺しの鬼寅”が圧倒的な存在感を示す。 後半は、安倍徹…

ヒドラ~「これでも詩かよ」第125番

ある晴れた日に第286回 持っていた自転車の鍵を、東京駅の新幹線乗り場の改札口の機械に挿入したとたん、私は新大阪の駅に到着していた。 電車から降りて無人の改札口を出たところで、前を行く白いチョゴリを着た若い女が幼女と共に道端の渓流に飛び込む…

チャールズ・シャイア監督の「アイ・ラブ・トラブル」をみて

bowyow cine-archives vol.770 同じシカゴの新聞記者をしているニック・ノルティとジュリア・ロバーツが特ダネをとろうと命懸けで取材活動をしているうちに愛するようになり、ついにメデタシメデタシになってしまうお話。 ニック・ノルティがホームレスをや…

池広一夫監督の「若親分喧嘩状」をみて

bowyow cine-archives vol.769 大正時代の始めに、元海軍士官の市川雷蔵がヤクザになって敵のヤクザを皆殺しするお話なり。 その背景には陸海軍の対立やクーデターの陰謀、それらを影で操る不良米国人実業家が暗躍しているという訳が分かったようなてんでチ…

作曲家の肖像~「これでも詩かよ」第126番

ある晴れた日に第285回 フリュートをくるくる回しながら 「これ1本でどんなBGMでも生録音致します。どうぞなんなりとご用命ください」 と云って、真鍋理一郎氏は破顔一笑した。 東京文化会館に行くと、武満徹夫妻の姿をよく見かけた。 作曲家は普通の…

井上ひさし著「井上ひさし短編中編小説集成第3巻」を読んで

照る日曇る日第759回 著者の過ぎ越しと戯作者への脱皮を江戸時代の黄表紙作家、十返舎一九のそれとを現代黄表紙仕立てで重ね合わせた「手鎖心中」、戯曲「たいこどんどん」の原作「江戸の夕立ち」、「たそがれやくざブルース」を柱に、「さよならミス・ラ…

山本周五郎著「季節のない街」を読んで

照る日曇る日第758回 冒頭の「街へ行く電車」を読んでいるうちに、黒澤明監督の名作「どですかでん」の記憶が鮮やかによみがえりました。 「どですかでん」というオノマトペは、一度聞いたら忘れられなくなるほど魅力的ですが、この本を読んでその意味が…

きさらぎ、きさらぎ~「これでも詩かよ」第124番

ある晴れた日に第284回 きさらぎ、きさらぎ、寒さの極まり さんさん、さんがつ、ややに近付く ひさかたの 春の待たるるそのあした 妻とふたりで 朝夷奈峠 おたまじゃくしの 卵を求めて うろうろ、うろうろ、鵜の目、鷹の目 草の根かきわけ 探したけれど …

ジャックの豆の木~「これでも詩かよ」第123番

ある晴れた日に第283回 金曜日の朝、渡辺派がいよいよ私を粛清しようとしている気配を察知した私は、急な坂道を駆けのぼった。 追い詰められた私たちは、階段を登ろうとしたが、その階段は途中で終わっていたので、階段のたもとまで下って、階段の左の脇…

ドナルド・キーン著「ドナルド・キーン著作集第11巻」を読んで

照る日曇る日第757回 「日本人の西洋発見」と「渡辺崋山」の2冊を収めている。 「日本人の西洋発見」は初めて読みましたが、江戸後期の蘭学をはじめとする西洋の科学技術、政治経済、宗教、思想、文明文化との接触を本多利明(寛永3年―寛保3年)を主軸…

夢は第2の人生である 第23回 

西暦2014年神無月蝶人酔生夢死幾百夜 日本百名山に次々に挑戦していたが、いよいよ富士山を征服しようといつものようにヘリに乗り込み、頂上から縄梯子を伝って降り立ったのだが、待てよこれは「登頂」ではなく「降臨」ではないかと思い当たり、すべてを…

ドン・シーゲル監督の「真昼の死闘」をみて

bowyow cine-archives vol.768 かの有名なハイヌーンそっくりの邦題で見るのをやめようかと思ったが、意外にもクリント・イーストウッドとシャーリー・マックレーンの凸凹コンビが新鮮で最後まで楽しく鑑賞することができた。 イーストウッドはいつも通りだ…

金子兜太著「他界」を読んで

照る日曇る日第756回 俳句の大家、金子兜太翁もこの本のなかで、「他界」すなわち「異界」すなわち「来世」、すなわち「あの世」はあるという。 おそらくそれは彼のトッラク島における凄絶な戦争体験からきているのだろうが、もしそれがほんとなら大変だ…

すべての言葉は通り過ぎてゆく 第19回

西暦2015年睦月蝶人狂言畸語輯&バガテル-そんな私のここだけの話op.191 しかし少し考えてみると、この国にお目出度いことはあっても、目出度いことなど何ひとつないのだった。1/3 晦日から新年にかけて大切にしていた手袋や万歩計を失くす。失せ物占い…

すべての言葉は通り過ぎてゆく 第18回

西暦2014年師走蝶人狂言畸語輯&バガテル-そんな私のここだけの話op.190 織田信成っていいキャラクターだな。解説で泣くのも悪くないしCMの漫画顔もいい。すっかりファンになってしまいました。12/1 なんでも「ダメよ~、ダメダメ集団自衛権」という…

西部劇2連発!!

ゴードン・ダグラス監督の「鷲と鷹」をみて bowyow cine-archives vol.766 筏渡しのリー・ヴァン・クリーフが、強盗のウオーレン・オーツと戦って最後は2人で決闘するというバカみたいな噺。せっかくいい役者を使いながらこのくだらなさはどうだ。監督がア…

ジョージ・コストマス監督の「トゥームストーン」をみて

bowyow cine-archives vol.765 またワイアットアープとクランクトン一家の決闘噺かと馬鹿にしてみていたら、出てくる役者はみないまいちだけど、なかなか面白かった。 OK牧場の決闘も、その後長く続いた両陣営の対立とその終焉もだいたい史実に忠実に追って…

アンドリュー・デイヴィス監督の「沈黙の戦艦」をみて

bowyow cine-archives vol.764 1992年製作のアメリカ映画なりい。 どこが「沈黙」なのかわけのわからん邦題だが、Under Siegeというタイトル通り、極悪人トミー・リー・ジョーンズ一味に乗っ取られ、乗員全員が人質に取られた戦艦ミズーリの危機一髪を、…

なにゆえに第11回~西暦2014年睦月蝶人花鳥風月狂歌三昧

ある晴れた日に第282回 なにゆえにベーム、バーンスタインは振らなかったのウイーンフィルのニューイヤーコンサート なにゆえに降誕祭によく似合うバッハのオルガン小曲集「オルゲンビュヒライン」 なにゆえに自公に票を入れるのか自分の首を自分で絞める…

わが指揮者列伝~「これでも詩かよ」第121番

ある晴れた日に第281回 ムラビンスキーはムラムラさせる ホロビッツはホロホロさせる トスカニーニは凸撃隊長 フルトヴェングラーは振ると面食らう カラヤンは真昼間から眼をつぶる クライバーは暗いCRYバア セルはなんにも売らない モントーはもっともら…