蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

2011-04-01から1ヶ月間の記事一覧

西暦2011年卯月 茫洋狂歌三昧

♪ある晴れた日に 第90回 一匹の大蛇の上の花見かなこの桜見せてあげたし二万人非国民と言われし人の花見かなわが庵に咲くやこの花オオシマザクラ上野にて桜咲く日に母逝きたり憂いつつタンポポの道を歩みたり気前よくCD買うのも国のため四月馬鹿慎太郎も馬…

メットのエド・デ・ワールト指揮「ばらの騎士」を視聴して

♪音楽千夜一夜 第194夜2010年1月19日にメトロポリタンオペラで上演されたシュトラウスの代表作をビデオで視聴しましたが、あまり景気のいい話は書けそうにありません。というものこのオランダの指揮者の音楽がリヒアルト・シュトラウスをまったく自…

ホロビッツ爺の「独グラモフォン全集」7枚組を聴いて

♪音楽千夜一夜 第193夜 春って曙なら、ホロビッツって、顔も演奏も古狸だと思う。ここにはその古狸がソニーから移籍して晩年に入れた7枚のCDが収められているが、どれもこれも不作為という名の作為に満ち満ちており、それが嫌になるとしばらく離れていた…

クララ・ハスキルの「デッカ・エディション」全11枚組を聴いて

♪音楽千夜一夜 第192夜心が乱れて落ち着きを失いそうになった日にはクララ・ハスキルのモーツアルトを聴くと、かなり効き目があるから不思議だ。そこには慌てず急がず、ゆっくりと己の信ずる道を歩んでいくおばあさん、酸いも甘いも嚙分けた媼の熟成の音が奏…

ダグラス・サーク監督の「翼に賭ける命」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.119ウイリアム・フォークナーの原作だというので期待して見た1957年製作のハリウッド映画でしたが、出来はいまいち、今二、今三ということでさっぱりでした。主演はお馴染み大根ロック・ハドソン。新聞記者に扮し…

「田村隆一全集」第3巻を読んで

照る日曇る日 第426回&ある晴れた日に第89回 深い海の底で、もう一度桜を見たいねという声がした。朝はコーヒーとトースト、昼は「笑っていいとも」を見ながら生協の関西風キツネうどん、夜は肉じゃがとご飯とみそ汁とデザートにイチゴを食べて、の寅さんの…

新国立美術館で「シュルレアリスム展」を見て

茫洋物見遊山記第55回 パリ・ポンピドゥセンターに腐るほど在庫しているシュールリアリズム、ではなくてシュルレアリスム関連の絵画やドローイングや参考資料などがずらずら並んでいましたが、一等面白かったのはパリ・フォンテーヌ街にあったアンドレ・ブル…

ジョン・マッデン監督の「恋におちたシェークスピア」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.118 監督や主演俳優についてはヒロインのバルトロウの乳房の尖り方が美しいという以外に格別言うべきことはないが、「未来世紀ブラジル」や「太陽の帝国」の脚本を書いたトム・ストッパードの卓抜な思いつきがことのほ…

シュテンファン・ルツオヴィスキー監督の「ヒトラーの贋札」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.117 第2次大戦中に強制収容所のユダヤ人たちが動員されて大量のポンド紙幣を捏造する話。まさかと思ったが、実話でこの映画にも登場する印刷工の手記が原作になっている。この原作者はもう少しでドルに成功するところ…

メトの「カルメン」新演出ビデオを視聴して

♪音楽千夜一夜 第191夜2010年1月16日にNYのメトロポリタンオペラで上演されたビゼーの「カルメン」のライヴを視聴しました。まず表題役のエリーナ・ガランチャの演技と歌唱が素晴らしい。2幕では盗族仲間と見事なダンスまで踊ってのけますが、舞台…

佐々木恵介著「天皇の歴史03天皇と摂政・関白」を読んで

照る日曇る日 第425回 本巻では9世紀半ばの文徳天皇から11世紀半ばの後冷泉天皇までのおよそ200年間の摂関政治の時代を取り扱っているがなかなか面白かった。ひとつは「望月のかけたることも無しと思へば」と歌った藤原道長も結構苦労を重ねていること…

サンソン・フランソワEMI全集全36枚組を聴いて

♪音楽千夜一夜 第190夜フランソワなどというても10人が8人は知らないだろうが、それでよいのである。1924年に生まれ1970年に卒然として逝ったこのドイツで育ったフランス人の飲んだくれピアノを聴けば、やれホロビッツ、やれポリーニ、やれアルゲ…

ロイヤル・フィルの「グレート・クラシカル・マスターワークス」全30

♪音楽千夜一夜 第189夜新宿や渋谷や池袋の駅構内のワゴンセールの目玉商品として1枚250円で叩き売られていたのがこのCDですが、このたび1枚102円という爆発的廉価で全国発売されることになりました。すでに「パート2」の30枚組もどかどかネット販売され…

吉川真司著「天皇の歴史02聖武天皇と仏都平城京」を読んで

照る日曇る日 第424回 いったん天智から天武に移行した王権が、文武、聖武、幸謙・称徳を経て光仁からその子桓武天皇に移った時点で、平城京は7大寺を拠点とする仏都に転化せしめられ、政治経済の拠点は長岡京を経て平安京に定着することになりました。本…

ノーマン・ジュイソン監督の「アメリカ上陸作戦」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.116 1966年に製作された「ロシア人がやって来た」という原題の所謂ひとつの爆笑コメディです。1966年という年はベトナム戦争開始の翌年でありいわば冷戦の真っただ中なのに、米ソ両国の政治的対立ではなく、両国民の等…

ダグラス・サーク監督の「心のともしび」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.115 いかれぽんちの大金持ちの青年(ロック・ハドソン)が、水上スキーで暴走・転覆して死にかけるが心臓に持病を持つ慈悲深い医師備え付けの救命呼吸器のお陰で九死に一生を得る。ところがまさにその同じ時間に、医師…

カルロ・マリア・ジュリーニ指揮の「ブラームス選集」を聴く

♪音楽千夜一夜 第188夜1960年代のブラームスの録音を集大成したEMIの超廉価盤CD5枚組です。この洒脱なイタリアの指揮者は、1978年からロサンジェルスフィルの常任になって超スローテンポのベートーヴェンの交響曲やヴェルディの「ファルスタッフ…

仏エラート・クラシック「理想の大全集」全100枚を聴いて

♪音楽千夜一夜 第187夜 バッハからベートーヴェン、ショパン、ヘンデル、モーツアルト、ラベル、ヴィヴァルディ、ワーグナーまで主にエラート・レーベルの忘れられた名盤、銘盤を収めた1枚100円を切った豪華超廉価100枚組CDです。私が大好きなモーツア…

大津透著「天皇の歴史01神話から歴史へ」を読んで

照る日曇る日 第424回 歴史上実在したと確認できる本邦最初の大王はワカタケルであり、この人物が「記紀」の伝える雄略天皇であることは教科書なんかにも書かれている。しかしワカタケルのような、かつて大王と呼ばれた統治者が、その前代の卑弥呼や倭の…

♪ある晴れた日に 第88回

なにゆえにあのげじげじむしにいれあげるとうきょうとみんのあんぐはてなし ぼうよう

村上春樹著「夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです」をざっと読んで

照る日曇る日 第423回 なるほどなあと思いつつスラスラ読めてあとにはなにも残らない1997年から2009年に行われたインタビュー集だ。ガス抜きのペリエを飲んだときのような晴朗さと爽快さはいかにもこの作家ならではの持ち味だが、きっと苦いオリ…

朝吹真理子著「きことわ」を読んで

照る日曇る日 第422回せんだってこの著者の「流跡」という小説、のような女学生の駄作文を読まされて酷評した私でしたが、これはなかなかの佳作だと思いました。まずタイトルがよろしい。ずーっと「きことわ」という奇妙な言葉と語感が妙に気になって仕方…

イーストウッド監督の「ペールライダー」を観て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.1151985年製作の西部劇で、題名は新約聖書ヨハネ黙示録第6章第7節に基づいている。すなわち、「第4の封印を解き給ひたれば第4の活物の「来たれ」と言うを聞けり。われ見しに、視よ、青ざめたる馬あり、之に乗る者の名…

日経広告研究所編「基礎から学べる広告の総合講座2011」を読んで

照る日曇る日 第421回 毎年夏に、日経さんが、当代の広告専門家講師による高額会費のセミナーを開催しているのだが、年末になるとそれを要領よく1冊にまとめた本が出るので愛読している。基礎からなどと遠慮して銘打っているが、年年激しく変化するメデ…

エロール・モリス監督「フォッグ・オブ・ウオー」を観て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.115フォードの社長就任5週間後にケネディ大統領に請われてアメリカの国防長官に就任し、ジョンソン大統領に仕えてベトナム戦争を指導し、1968年〜81年まで世界銀行の総裁を務めたマクナマラのロングインタビューが2003…

ルービンシュタインの「ブラームス選集」を聴いて

♪音楽千夜一夜 第185夜 このソニーの1枚298円の廉価盤9枚組には2つの協奏曲をはじめソナタ、カルテットなどブラームスのピアノ曲の大半が収められており、文字通りの巨匠ルービンシュタインの名演奏をこころゆくまで享楽することができる。 ルービンシュタイ…

イーストウッド監督の「ミリオンダラー・ベイビー」を観て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.114 はじめは歯牙にもかけなかった31歳のボクシング大好き貧乏娘を手塩にかけて育て上げ、とうとう世界チャンピオンに手が届いたその瞬間に、予期せぬアクシデントが起きて、そこから物語はぐんぐん深まる。しがない…

チッコリーニの「サティのピアノ作品集」全5枚組を聴いて

♪音楽千夜一夜 第184夜サティは不思議な作曲家で、モーツアルトやバッハやベートーヴェンばかり聴いていると猛烈にこの人の音楽、のよおなものを耳にしたくなるときがある。パンやご飯やそばやパスタばかりでなくてたまには山葵を口にしたくなるよおなもん…

吉田司著「カラスと髑髏」を読んで

照る日曇る日 第420回 「世界史の闇の扉を開く」という副題がついていますが、これは文字通り東西の世界史を、古代から現代まで牛若丸のように、ここと思えばまたあちらと縦横無地に飛び回って、私たちの立場を再確認しようとするサーカスの空中ブランコ…