蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

西暦2011年卯月 茫洋狂歌三昧


♪ある晴れた日に 第90回


一匹の大蛇の上の花見かな

この桜見せてあげたし二万人

非国民と言われし人の花見かな

わが庵に咲くやこの花オオシマザクラ

上野にて桜咲く日に母逝きたり

憂いつつタンポポの道を歩みたり

気前よくCD買うのも国のため

四月馬鹿慎太郎も馬鹿都民も馬鹿

人間はカッコつけたら終わりです

        *

四月は残酷な季節

朝はコーヒーとトースト、昼は「笑っていいとも」を見ながら生協の関西風キツネうどん、夜は肉じゃがとご飯とみそ汁とデザートにイチゴを食べて、寅さんの映画を一本見てからお風呂に入り、「いろいろあったけど、今日もなんとか一日終わったね」などと言いながら、親子三人枕を並べて朝の七時までぐっすり寝ていたかったという声も確かに聞こえた。

私には今日もいろいろあってそれなりに楽しかったが、そのいろいろが突然無くなる日が誰にも訪れると改めて知った。

しかし波一つない海岸には大きく傾いた一本の松の木だけがしきりにそよいでいるだけ。神の不在は、いつまでも続くのであるか。やはりこの世には神も仏もないのであろう。

四月は残酷な季節。太陽が宙天に達した頃、カワナゴの大群が少女たちの黒髪の林を潜り抜けていく。

        *

どの指導者もこんなもんだよ俺たちのその薄っぺらさにちょうど見合って

一票を投じた党の無様さは我等自身の無様さでもある

声高に時の政府をなじる人君ならもっとうまくやるだろ

あほばかは東京都に最も多しまたぞろあほばか都知事を担ごうとする

「慎太郎」ではなく「錆びたナイフ」と書け東京都民よ

なにゆえにあのげじげじむしにいれあげるとうきょうとみんのあんぐはてなし

わが講義欠席にして帰国する留学子女に語る言葉なし

脳味噌いっぱい花が咲くオレンジスイカバナナ咲く

きことわとはきこちゃんととわちゃんがとわにあいしあうはなしです

銀行に勤めておりしこの私利子を間違えうろたえる夢

闘牛に突き殺されし夢見たりビゼーの「カルメン」を聴きし夜

モーツアルトはパン、バッハはごはん、ベートーヴェンは肉、サティはワサビ

サティって何者なんやよお分からんわとぶつぶつ言いながら弾いてるからこーゆ録音になるんじゃチッコリーニ 

死地に乗りゆくあほばか兄弟てんで恰好よく死にたいな

聖地につき犬の散歩禁ずという霊園糞が嫌なだけなのに噴

天も照覧カズ一撃みちのくに届けダンスダンスダンス

イナックスの修理の人が掻き出す耕君が捨てし硬貨の数々

小説なんかより思想書を読むんだと言うておりし先輩東京高裁長官となりき



平尾由希仙台に去りて四月尽 茫洋