蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

ジョン・ギラーミン監督の「ナイル殺人事件」を見て


闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.120


 名探偵ポアロがナイル川に浮かぶ豪華客船で起こった連続殺人事件を、私にはどうもいまいちよく分からない独特の推理とロジックで解き明かすお話ですが、まあそんなことはどうでもよくて、これは大スタア特別出演による風光明媚なエジプトの観光旅行映画というところでしょうか。

 ピーター・ユスチノフ扮するポアロは、僚友デヴィッド・ニーヴンと協力してベティ・デイビス、ミア・ファーロー、ジェーン・バーキン、ロイス・チャイルド、ジージョジ・ケネディなどいずれも一癖ある怪しい面々の内偵を進めますが、今回はなんと3名の女性の殺害を許したところで遅まきながらの謎解き登板となるのです。

 いずれにしても同じアガサ・クリスティ原作の「オリエント急行殺人事件」に比べるとそうとう作品の出来栄えが落ちるのが残念です。なおわが偏愛のジェーン・バーキンが、英国人の癖にガンスブールの仏語の洗礼を受けた奇妙なアクセントの英語を喋っていますが、彼女はこの映画の中ではフランス人の女中役なので、わざとそうしているのだと思います。


          連休やB級映画の愉楽かな 茫洋