蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

2011-02-01から1ヶ月間の記事一覧

西暦2011年如月 茫洋狂歌三昧

♪ある晴れた日に 第85回 口を「あ」の形にして死んでいった少年その少年に僕はムクをひどいめにあわせやがってと怒鳴ったもう生きていても仕方がないのと母親が言うエイハブの胸に迫りし白き牙明日はわれらの胸にも迫る現代より古代が優れるもの多し文化文明…

メータ指揮「リゴレット・イン・マントヴァ」をみて

音楽千夜一夜 第182夜これは2010年の9月4、5日にイタリアのマントヴァで開催された「ライヴフィルム・プロジェクト2010」というイベントで、ヴェルディのこの作品ゆかりの中世都市の王宮などを舞台に、オペラの同時録画が収録されたのである。指揮者は…

マゼール、スカラ座、ゲオルギューの「椿姫」を視聴して

音楽千夜一夜 第181夜07年7月に行われた公演のライヴを視聴しました。指揮者もオケも当代一流、ヴィオレッタには死せるゲオルグ・ショルティに見出されたアンジェラ・ゲオルギュー、アルフレードにはラモン・ヴァルガスという組み合わせ。しかも演出はリ…

リチャード・シッケル監督の「クリント・イーストウッドの真実」をみ

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.1002010年にクリント・イーストウッドへのインタビューを軸としてビデオ収録されたスマートな作品回顧録。ローハイドの時代からダーティハリー、許されざる者、硫黄島、グラントリノ、09年のインビクタスまで、…

デ・シーカ監督の「ひまわり」をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.99 ヴィットリオ・デ・シーカ監督がお馴染みソフィア・ローレンとマルチエロ・マストロヤンニを起用して1970年に映画化した涙なしには見られない戦争悲話の決定版です。いきなりマンシーニの主題歌が鳴り響いて黄…

カジャー・ドナルドソン監督の「リクルート」をみて  

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.982003年にロジャー・ドナルドソン監督が撮ったアメリカ流の就職活動映画である。この映画のタイトルは、英語で原義は新兵とか兵隊志願というのが転じて、入社志願や志願者を指すようになった。同名の企業がわが国…

デ・シーカ監督の「ああ結婚」をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.971964年に名匠ヴィットリオ・デ・シーカ監督が映画化した「イタリア式結婚」という原題の映画です。誰と誰が結婚するかというと、ナポリの娼婦ソフィア・ローレンが超色男のマストロヤンニと結婚するのです。どこ…

ルイ・マル監督の「恋するシャンソン」をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.961997年にアラン・レネが撮った「この唄知ってる!?」というタイトルの、レネらしい風流な一作。アニエス・ジャウイ、ジャン・ピエール・バウイ、サビーヌ・アゼマ、アンドレ・デュソリエ、ランベール・ウイルソ…

イェジ・アントチャク監督の「DESIRE FOR LOVE」をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.95ショパンを主人公にした映画の試写会があるというので拝見させていただきました。原題は「愛の欲望」というのですが、邦題では「ショパン愛と哀しみの旋律」となっていて、今年3月に銀座のシネスイッチで公開される…

ヒッチコック監督の「サイコ」をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.941960年制作のヒッチのかなり怖いサスペンス映画。母親との関係がゆがんでいた二重人格的なアンソニー・パーキンスがジャネット・リーを襲うシーンは緊迫感が漂うが、このシャワー殺人の場面を映像だけで見てもそ…

カーティス・ハンソン監督の「LAコンフィデンシャル」をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.931997年制作のワーナー映画でロサンジェルス市警内部の乱れに乱れた内情を内側から検証するような警察・犯罪・ギャング映画である。日本の警察や検察も腐敗堕落の極に達しているかに見えるが、ここで描かれている…

クリント・イーストウッドの「パーフェクトワールド」をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.921993年にクリント・イーストウッドのメガフォンと助演、ケヴィン・コスナーの主演で映画化された問題作品です。この映画の主題は親子のパーフェクトな関係、あるいは理想的な父親像について考えてもようよ、とい…

マリオ・バルガス=リョサ著「都会と犬ども」を読んで

照る日曇る日 第408回 はじめはちっとも面白くないガキ小説かと文句を言いながら読んでいましたら、終わりごろ、全体の4分の3くらいから俄然面白くなってきて、最後は「さすがノーベル賞作家だけのことはあるなあ」と脱帽の一冊でありました。著者はそ…

クリス・マルケル監督の「ラ・ジュテ」をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.911962年制作のフランスのSF映画です。舞台は第3次世界大戦後のパリ。あらすじはこれもウイキペディアからまるごと引用すると、「廃墟と化し、戦争を生き延びた数少ない人類は、勝者の支配者と敗者の奴隷に別れ…

イングマール・ベルイマン監督の「秋のソナタ」をみて

イングマール・ベルイマン監督の「秋のソ闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.90 母と娘はどうしてこれほどまでに憎み合わなければならないのか、とつくづく思わされるベルイマンの1978年制作の本作品です。国際的に著名な歌手を演じるのは大女優イン…

世界文学全集「短篇コレクション2」を読んで

照る日曇る日 第407回池澤夏樹選手が独断と偏見で選んだ全集短編の第2弾です。1回目は期待外れの内容でがっかりさせられましたが、今回は全19編のうち2本も当たりがありましたから、まずまずと言うべきでしょうかねえ。しかし出来栄えの良し悪しはど…

文化学園服飾博物館で「アンデスの染織」展をみて

茫洋物見遊山記第53回&ふぁっちょん幻論第62回 アンデスといえば私のカボチャ頭には、新宿南口でよく見かける汚らしい身なりの楽団が演奏している「コンドルは飛んで行く」やマリオ・バルガス=リョサやインカやナスカ文明くらいしか思い当たりませんが、こ…

スピルバーグ監督の「ジョーズ」をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.89避暑客でにぎわう海水浴場に現れた巨大な孤影ひとつ。スピルバーグは、すでに人肉の旨みを知った人喰い鮫に立ち向かう3人の男たちの死力を尽くした戦いを壮絶に描きます。警察署長のロイ・シャイダー、鮫研究員のリ…

鎌倉国宝館で「肉筆浮世絵の美」展をみる

鎌倉ちょっと不思議な物語第239回&茫洋物見遊山記第52回 新春恒例の氏家浮世絵コレクションがことしも展示されています。氏家浮世絵コレクションというのは、多年にわたり肉筆浮世絵の蒐集につとめてきた氏家武雄氏と鎌倉市が協力して昭和四九年に鎌倉国宝館…

山本薩夫監督の「荷車の歌」をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.87「新宿の母」は占い師ですが、「ニッポンの母」といえばこの大河映画で主演している望月優子をおいて他にありません。この日本を代表する大女優は、実家の縁を切られても、単身で夫、三国連太郎の元に飛び込んだ少女…

スカラ座のロッシーニ「ランスへの旅」を視聴して

音楽千夜一夜 第180夜2009年4月14日に行われたオターヴィオ・ダンドーニ指揮ミラノ・スカラ座の公演のライヴです。ランスの旅館に宿泊しているオーストリア、フランス、スペイン、ロシアなど世界の国々から集まった男女が、ランスで行われる戴冠式に…

レヴァイン指揮メトの「ホフマン物語」をみて

音楽千夜一夜 第179夜 オッフェンバック作曲の「ホフマン物語」は、私にはさして面白いオペラではありません。以前ヘスス・コボス指揮パリオペラ座の公演ビデオを視聴したときには怒り狂ってテレビ画面に向かって「ブウ!」を連呼し続けた私ですが、メト…

ヒッチコック監督の「海外特派員」をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.85 1940年に製作されたこの映画は、私にはてんでわけのわからぬ映画です。いまにも戦争が始まりそうだが、確実な情報がとれない。衝撃の事実を現地でつかんで来い、と命じられて、NYの新聞社から欧州に特派され…

山本薩夫監督の「箱根風雲録」をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.861952年に製作された箱根用水の工事をめぐる虚虚実実、波乱万丈の物語です。タカクラ・テルの原作を山本薩夫が監督した本作では、いまどき珍しい人民史観による反権力の闘争が感動的に描かれています。箱根用水は…

ガイ・ハミルトン監督の「クリスタル殺人事件」をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.84おなじみアガサクリステイ原作の1980年制作の殺人謎解き物です。老嬢ミス・マープルが我々の予想もしなかった名推理で真犯人を上げるのはいつもことですが、注目すべきは大スター役で出演しているエリザベス・テ…

ジョン・カサベテス監督の「フェイシズ」をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.83 1968年制作のモノクロ映画の内部に、この時代の自由とアナーキーと人間の孤独がずっしりと刻印されている優れた作品で、ここに後年の名作「壊れゆく女」の源泉がある。 最初は愛し合っていた男女の間にいつのま…

ヒッチコック監督の「疑惑の影」をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.821942年に製作されたこのモノクロ映画は、当たり前のことながら人間うわべだけで信用してはいけないよ、という教訓を地でいくような話です。実際は恐ろしい凶悪犯人である叔父役には、「第3の男」のジョゼフ・コ…