蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

2009-01-01から1ヶ月間の記事一覧

西暦2009年茫洋睦月歌日記

♪ある晴れた日に 第51回 ブルーベリー、苺無花果林檎ジャム数々あれど柚子が大好き何事のおわしますかは知らねども胸に満ち来る光一筋われもまたソウル・トレインに乗り込んで、世界の果てまで旅立ちたし武士は義に女は恋に死すべしと元禄の掟ついに定まる…

ロドリゴ・ガルシア監督の映画「美しい人」を見る

照る日曇る日第226回衛星放送で先日やっていた05年公開のアメリカ映画です。タイトルが妙に気になったので、ほんとに美しい人が出てくるのかと期待していましたら、ホリーハンターとかシシースペイセク、とどめにグレン・クローズまで登場します。これ…

これが歌舞伎座?松竹は、歌舞伎座建て替え案を白紙撤回せよ

勝手に建築観光33回 「新しさを求めて意味不明の新しさに迷う」のではなく、「古きをたずねてその新しさをふたたび見出すこと」。これが私たちが心の中でひそかに求めている現代建築のあるべき姿ではないでしょうか。だからこそ辰野金吾設計の当初案を復元…

松竹は「石原都知事案による歌舞伎座建て替え」を中止せよ

勝手に建築観光32回東京築地の歌舞伎座では、いま異例のさよなら公演を行っています。 1924年に建てられ、米軍機による空襲で被災し、50年に改修され、02年に国の登録有形文化財に指定されたこの由緒ある建物については、私もこれまでこの日記で再三…

T・Eロレンス著・田隈恒生訳「完全版 知恵の七柱1」を読んで

照る日曇る日第224回デビッド・リーンの名作「アラビアのロレンス」の主人公T・Eロレンスは、あの映画の冒頭の印象的なシーンで見られるように、1935年5月19日、不慮のオートバイ事故で46歳で急死した。彼の自伝であるこの本は、すでに全3冊…

メンズ漫録その4 本邦初のパタンナー

ふあっちょん幻論第27回 1853年にペリーが来日すると、「毛唐柄」(唐桟(細番の綿糸で平織りにした縞織物、紺+浅黄、赤の羽織りや着物に使用)や「唐人仕立て」が流行するが、幕府は百姓・町人の異国風衣装を禁じた。しかし部分的には国防強化のため軍…

メンズ漫録その3 南蛮服から日本の服へ

ふあっちょん幻論第26回 西欧は洋服の本場であるが、では日本のメンズモードはどのように移植されたのだろうか。16世紀の中葉に宣教師たちが渡来すると、南蛮服、えびす服、紅毛服による洋服受容がはじまった。「南蛮服」のアイテムとしては、「合羽」(…

メンズ漫録その2 フランス革命とスーツの誕生

ふあっちょん幻論第25回 1789年のフランス革命では国王・貴族・僧侶以外の第3階級=市民階級が台頭した。彼らはバスティーユ監獄を襲撃し、ルイ16世とマリー・アントワネットを処刑し、国民公会による共和制政府を樹立した。この蜂起の主役たちをドラクロア…

ふあっちょん幻論第24回

メンズ漫録その1 日本の武士と西欧貴族の美学日本の武士の本質は「葉隠」がいみじくも喝破したように死ぬことにあり、潔く戦って潔く死ぬための文武の修業、具体的には剣術と切腹の稽古、そして生涯の経綸を一瞬で総括するための最低限の文化である辞世を遺…

希望と絶望

バガテルop86オバマさんが米国の第44代大統領に就任しました。なかなか立派な演説で、とりわけ最後の段落の美辞麗句を駆使した呼びかけなどは感動的ですらありましたが、ああいう原稿は彼自身が書いたのでしょうか、それともゴーストライターが書き下ろ…

京都思文閣とわたし

バガテルop85むかしたった1年間だけ京都で下宿していたことがある。左京区の田中西大久保町という叡電前や百万遍や出町柳や高野に近いところだが、そのすぐそばに思文閣という骨董屋があったと知ったのは、四半世紀の時間が経過して偶然この会社のカタログ…

アーサー・ウェイリー・佐復秀樹訳「源氏物語2」を読んで

照る日曇る日第223回ウェイリーによれば紫式部はこの物語のすべての登場人物の年齢や地位や境遇を一瞬たりとも忘れることなく各帖を整然と記述しているという。物語のディテールではなく、その壮大な時間的・空間的な全体構造をきちんと押さえてからこの…

掘田善衛著「掘田善衛上海日記」を読む

照る日曇る日第222回敗戦直前の1945年3月24日、当時27歳の「心からやりたいということ、心から何事かをなしたいという欲求がさらにない」一人の若者は、松岡洋右の息子の仲介で日本を飛び出し、「上海客死」の覚悟で欧州をめざした。しかし当時欧…

エルサ・モランテ著「アルトゥーロの島」、ナタリア・ギンズブルク著

照る日曇る日第221回前者は少年の継母への淡い初恋を軸にした偽ビルダングスロマンであるが、どこがイタリアを代表する女流作家らしいのか理解に苦しむ。こうしたテーマでは中勘助などのわが国の少年文学のほうに1日の長がある。私はそぞろ下村湖人や山本…

佐藤賢一著・小説フランス革命「バスティーユの陥落」を読む

照る日曇る日第220回ヴェルサイユで打ち上げられた烽火は平民の町パリの要塞で大爆発を遂げ、それが7月14日の革命として結実した。この小説の冒頭で大活躍するのは、ミラボーの陰謀によって暴発した弁護士デムーランである。パレ・ロワイヤルの行進か…

佐藤賢一著・小説フランス革命「革命のライオン」を読む

照る日曇る日第219回そもそもの始まりは王国の財政難だった。貴族が課税に抵抗したためにフランスの国政が混乱し、1788年、貴族の傲慢な居直りを背景に高等法院と政府(財務長官ネッケル)は決定的に対立した。翌年の8月8日、国民の声に押されて魔…

加藤廣著「謎手本忠臣蔵」を読んで

照る日曇る日第218回「此間の遺恨、覚えたか」と叫びながら、浅野内匠頭はなぜ上野介に刃傷に及んだか。「此間の遺恨」とは何か。著者は主に五代将軍綱吉とその僚友側用人柳沢吉保の視点をつうじてこの松の廊下刃傷事件を解明しようとしている。元禄14…

最終回「自閉症の人たちのための防災ハンドブック」 

バガテルop85 家族の方へ 災害後の助言by日本自閉症協会会長・石井哲夫氏のアドバイス「子供さんにもよりますが、高機能で生活行動の自立した子供さんの場合は、まず不安が取れず興奮しているわが子の気持ちをいやすことを考えてください。そのためには傍…

第5回「自閉症の人たちのための防災ハンドブック」

バガテルop84 12君が海や川のそばにいたら ・津波で突然水が増えてくるので、海岸や川岸から離れよう ・海岸で強い揺れに襲われたら、いちばん恐ろしいのは津波。避難の指示や勧告を待つことなく、安全な高台や避難場所を目指す13学校・職場と確認しておくこ…

第4回「自閉症の人たちのための防災ハンドブック」

バガテルop838駅では ・線路には絶対に下りてはいけません。危険! ・駅員さんのいうとおりにしよう9電車やバスの中では ・吊皮やボールにつかまろう。勝手に外には出ない ・運転士さんのいうとおりにしよう10遊園地・公園では ・乗り物の中にいたら、しっか…

第3回「自閉症の人たちのための防災ハンドブック」 

バガテルop824地震のとき外にいたら ・落ちてくるもの、看板・ガラスなどから逃げる ・カバンなどで頭を守る ・切れた電線にさわらない ・電柱・ブロック塀・自動販売機やマンホールから離れる5君が学校にいたら ・あわてて飛び出さず先生のいうとおりにしよ…

続「自閉症の人たちのための防災ハンドブック」 

バガテルop81自閉症の人たちは、もし災害にあったら・落ち着いて身を守りましょう ・1人でいてもあわてないこと。必ず助けが来ると信じよう ・お家の人といっしょだったら、お家の人のいうとおりにしよう ・いっしょにいる人と離れないようにしよう こんな…

自閉症の人たちのための防災ハンドブック 

バガテルop80 ○災害が起きたら、自閉症の人たちはこうしよう?まず落ち着くこと 深呼吸を3回くらいして助けを待とう?危険から体をまもろう?人を呼ぼう?安全なところへ連れて行ってもらおう ○災害が起きたら、家族はこうしようA災害が起きたら、親がまず落ち…

川上弘美著「どこから行っても遠い町」を読んで

照る日曇る日第217回道路の左端に江戸時代に建立された馬頭観音と右かなざわ道と書かれた道路標識が立ち並んでいて、この一帯が古代から幹線道路として重要視されたかすかな面影を伝えていた。鎌倉石でできたその二基の標識のすぐ隣に立っている一軒の魚…

網野善彦著作集第5巻「蒙古襲来」を読んで その5

鎌倉ちょっと不思議な物語第161回&照る日曇る日第216回 蒙古襲来後、鎌倉幕府では頼朝恩顧の御家人と北条一族ゆかりの得宗御内人との対立がきしみはじめ、それが幕府の執権政治のみならず天皇家や朝廷の権力闘争、さらには中世の社会構造にまで大きな…

ベルンハルト・シェリンク著「帰郷者」を読んで

照る日曇る日第215回 この小説には多くの人物が登場するが、そのうちの多くの者は長い旅行や召集されて出かけた戦争から帰国して懐かしい自宅の戸を叩くと、出迎えた妻の背後に見知らぬ男が怪訝な顔をして突っ立っているのだった。すべては「帰郷者」とい…

初夢

バガテルop79嵐の中を疾走するシカゴ行きの夜行列車に乗ってどこか比較的大きな駅に着いた。プラットホームに停まった蒸気機関車から野生の獣の荒い息のように白い蒸気が噴き出ている。どうやらこの駅でしばらく停車するようだ。私はホームの端にある改札口…

秋山駿著「忠臣蔵」を読む

照る日曇る日第214回大阪城崩壊から80年を閲し、原城の反乱の記憶も次第に遠ざかると血なまぐさい硝煙にかわって美服に薫じられた上方流のかぐわしい香の匂いが人々を魅了するようになる。華麗なる元禄文化の開幕である。そこで権力者は、血を血で洗う戦…

高橋源一郎著「いつかソウル・トレインに乗る日まで」を読んで

♪照る日曇る日第213回驚いたことには高橋源ちゃんの小説にはほとんど駄作がなく、おまけに駄作であったとしても必ずそれが現今の文学に対する鋭い異議申し立てになっている。そしてそれは今回も例外ではない。なんせ「生涯初の、そして最後の」、と銘打た…

青い空には雲がある

♪ある晴れた日に 第50回記念 青い空には雲がある 雲の上には光がある 光の彼方に夢がある京都には百万遍がある 鎌倉には十二所神社がある 綾部にはてらこがある 百貨店には屋上庭園がある サーカスにはブランコがある リーマンにはボーナスがある カレンダ…