蝶人戯画録

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これが歌舞伎座?松竹は、歌舞伎座建て替え案を白紙撤回せよ


勝手に建築観光33回


「新しさを求めて意味不明の新しさに迷う」のではなく、「古きをたずねてその新しさをふたたび見出すこと」。これが私たちが心の中でひそかに求めている現代建築のあるべき姿ではないでしょうか。

だからこそ辰野金吾設計の当初案を復元しようとしている東京駅のやり方は多くの人々から支持されていますし、数々の由緒ある建物を破壊した悪評高い三菱地所もかつて壮麗さを誇った三菱1号館をそのまま再建しようとしています。
東京駅の傍にある中央郵便局をなんとかそのままの形で残したいと願う私たちの思いもこれと同じです。

だとすれば、このたび松竹が、1950年に竣工した吉田八十八設計の第四期の建物を、一九二四年竣工の岡田信一郎設計の壮麗な桃山様式のお手本(第三期)に土台を戻して、通算第五期の新歌舞伎座立ち上げをめざしたことは、歌舞伎座のみならず、銀座と東京の建築のあるべき姿に照らしてもっとも賞賛に値する勇気ある決断でした。

 このようなよき企てが、都知事の個人的かつ一方的な意見で圧殺され、日の目をみなくなることはとても残念ですし、もしそうなれば銀座、東京のみならず日本全体の大きな文化的損失だと思います。

 以上の観点から、松竹本社は昨日マスコミ発表された都知事推薦の現行案を廃棄して、もう一度当初の案に戻り、あの素晴らしい歌舞伎座建て替え案を再検討していただきたいのです。心ある市民は必ずや松竹オリジナル案を支持することでしょう。