蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

2009-02-01から1ヶ月間の記事一覧

西暦2009年茫洋如月歌日記

♪ある晴れた日に 第53回愛国のマーチに胸は高鳴りて今宵さんざめくブラスの祭典 あやしくも胸揺るがすは極彩のジンタブラスの猛き咆哮 わが庵にはじめて咲きたる梅の花二輪なれども姿うるわし 待ち待ちてついに咲きたるむめの花二輪に添いて妻と楽しむ果樹…

牧原憲夫著「小学館日本の歴史・文明国をめざして」を読んで牧原憲夫

照る日曇る日第231回明治7年1874年7月、に尊敬すべき父兄の遺体を平然と火葬する仏教徒に怒り狂った神道派の要請を受けて、同年7月、明治政府は「火葬禁止令」を布告すると、火葬派の仏教徒のみならず多くの国民からの反発が高まった。著者によれ…

梅原猛著「うつぼ舟1 翁と河勝」を読んで その2

照る日曇る日第230回著者が梅棹忠夫、上山春平などと打ち合わせが終わって、京都・祇園のお茶屋で四方山話に興じていると、突然酔っぱらった吉川幸次郎が部屋に乱入してきた。偉大なこの中国文学者は、酒が入ると荒れる傾向があったが、その日はなにやら…

梅原猛著「うつぼ舟1 翁と河勝」を読んで その1

照る日曇る日第229回日本書紀によれば秦の始皇帝の子孫と伝えられる秦氏は、応神天皇の14年に百済より渡来し、優れた養蚕技術で仁徳天皇の御代に素晴らしい絹織物を生産したために「波陀」、雄略天皇の時代には、「うずまさ」の姓をたまわり、現在広隆…

提案と回答と感想 その2

バガテルop90 ○提案鎌倉市の「障がい者計画」への要望1「障がい者自立支援法」と合わせて市の障害福祉計画の見直しを!「障がい者自立支援法」は、障がい者を無理やり自立させようとして施設から追い出そうとしたり、収入のない障がい者に従来よりも経費負…

提案と回答と感想 その1

バガテルop89○提案拝啓 松竹本社殿 貴社築地歌舞伎座建て替え問題についての提言 このたび貴社が、1950年に竣工した吉田八十八設計の第四期の建物を、一九二四年 竣工の岡田信一郎設計の壮麗な桃山様式のお手本(第三期)に土台を戻して、通算第 五期の新歌…

永井荷風、西洋料理を論ず

ふあっちょん幻論第40回 メンズ漫録その18 断腸亭主人紳士洋装論最終回 ゼントルメンともあろう人物が、洋服に憂き身を窶しても料理にはてんで構わないのはまことにおかしい。そもそも西洋料理の出来栄えは、コンソメ、吸い物を味わえば、そのすべてがわか…

永井荷風いわく、「画工・詩人・音楽家・俳優などは方外の者なり。」

ふあっちょん幻論第39回 メンズ漫録その17 断腸亭主人紳士洋装論その8 仏蘭西では、画工・詩人・音楽家・俳優などは「方外の者」とみなされ、礼儀に拘捉せざるも之を咎むる者なし。されば、この仲間の弟子には自ら特別の風俗あり。頭髪を長く伸ばし、衣…

愛犬ムクを悼む歌  没後7周年の夜に

♪ある晴れた日に 第52回 OH!アデュー 人語をはじめてに口にして 老犬ムクは いま身罷りぬネンネグー 阿呆ムク 可愛ムク 処女のムク 盲目のムク いま昇天す鎌倉の 山野を駆けし細き脚 そのマシュマロの足裏を ぺろぺろ舐めおりここで跳べ ザンブと飛び込…

永井荷風いわく、「赤靴は欧米ともに夏にのみ使用す」

ふあっちょん幻論第38回 メンズ漫録その16 断腸亭主人紳士洋装論その7 ハンケチは晒し麻白を上等とす。熱帯植民地はかならず驟雨があるので、欧州では外出時に傘を携行するのである。ヘルメット帽は雨には傘となり、炎天には空気が通いて涼しく、熱帯に…

永井荷風いわく、「肌着を人目にさらすなかれ」

ふあっちょん幻論第37回 メンズ漫録その15 断腸亭主人紳士洋装論その6 永井荷風またいわく。メリヤス(ニット)肌着は褌(ふんどし)と同様、いかなる場合にも人目に触れてはならない。ホワイトシャツの袖を捲り上げても、肌着は出すな。シャツは米国で…

荷風いわく「鳥打帽はパリの新聞売りのためのものだ」

ふあっちょん幻論第36回 メンズ漫録その14 断腸亭主人紳士洋装論その5永井荷風またいわく。帽子は洋服に合わせること。鳥打帽は銃猟、航海旅行用、そしてパリの新聞売りのためのものだ。黒の山高帽が普通である。米国の東部の都市では晴雨ともに風の勢…

荷風いわく「日本製は中国に劣る」、と。

ふあっちょん幻論第35回 メンズ漫録その13 断腸亭主人紳士洋装論その4 永井荷風いわく。洋服仕立ては日本より中国に限る。とりわけお薦めしたいのは帝国ホテル前のシナ人洋服店である。銀座の「山崎」などは糸を惜しみ、なおかつ高い。縫い目、ボタンの…

断腸亭主人の紳士洋装論その3

ふあっちょん幻論第34回 メンズ漫録その12断腸亭主人、荷風散人いわく。洋服の手本は西洋である。しかし色白の西洋人に似合っても、黄色の日本人には合わない色柄が多い。例えば英国人が着るキツネ色の外套は、日本人には似合わない。 日本人には黒・紺…

断腸亭主人の紳士洋装論その2

ふあっちょん幻論第33回 メンズ漫録その11 日露戦争以来10年、学生とも軍人ともつかない一種の制服姿の男どもが東京に跋扈するようになった。ドイツ陸軍かぶれの金ボタン、立襟の制服に辟易したものである。それはともかく、銀行などの夏服は白立て襟の…

永井荷風の紳士洋装論その1

ふあっちょん幻論第32回 メンズ漫録その10 日本人洋服の着始めは、旧幕府仏蘭西式歩兵の制服であった。その頃、人々はこれを「膝取りマンテル」などといった。御一新となり、岩倉公らの西洋視察(明治4-6年)後、文官の大礼服もでき、上級役人は洋服を着…

メンズ漫録その9 ヤングジャパンとメンズスーツ

ふあっちょん幻論第31回 日本におけるスーツ受容の歴史の特徴とは、?前回の明治天皇家の事例でみたように、 あくまでも「上」からの指令で着せられたこと。?軍服の機能性をウリに官吏の権威を振りかざして大衆化していったこと。?従ってなかなかTPOまで手が…

メンズ漫録その8 明治皇后の衣服改革

ふあっちょん幻論第31回 明治19年、天皇は病気がちで執務と行幸を怠ったが、その代理を洋装で務めたのが皇后だった。宮廷の旧来の類型を打破して、皇后が初めて洋装で公衆の面前に登場したのは同年7月30日に華族女学校に行啓し、卒業証書授与式に出席した時…

世界のオケのライブを聴く

♪音楽千夜一夜第57回「レコード芸術」の1月号をぱらぱら見ていたら、世界各地のラジオ放送を無料でポッド・キャスッティング聴取ができるようになったという記事が出ていた最近バイロイト音楽祭やベルリンフィル、メトロポリタンオペラのライブや過去の放…

滋味ある演出

バガテルop88なぜだか最近NHKと仲良くしている富士テレビが、「風のガーデン」に続けて山田太一脚本の「ありふれた奇跡」というドラマをやっている。自殺未遂の三人の男女を中心に展開する愛のドラマだが、前回は脇役の二人の女性の間でこんなシーンがあ…

鉄腕アトムと坂本選手と谷川選手

バガテルop87なぜだかNHKで「鉄腕アトム」の番組をやっていた。いろんな人がいろんなことを述べていたが、坂本龍一が、「手塚治の最大の特徴は曲線の美しさにあると思う」というので、またまたそんな出まかせを、でももしかするとホントかなあ、と半信半…

メンズ漫録その7

ふあっちょん幻論第30回このようにして洋服は、大元帥陛下の軍服を頂点に、軍国主義と官僚主義の2つに跨って新しい権威の象徴となった。最初に洋服になじんだのは、官吏、インテリ、富裕層だった。彼らは、昼は燕尾服(テイルコート)、夜はフロックコート…

メンズ漫録その6

ふあっちょん幻論第29回 明治5年11月12日、文武百官の大礼服は、正服は洋服、祭服だけは衣冠束帯と改められた。そしてこの決定を待っていたかのようにして、ちょうどこの年に岩倉使節団が海外に旅立つのである。翌明治6年以降、明治天皇は死ぬまでのお…

メンズ漫録その5 天下分け目の洋服論争

ふあっちょん幻論第28回1868年に明治維新で、封建国家日本はいちおう近代国家に生まれ変わった。短時間にこの国を文明開化するためには、とりあえず欧米をコピーしなければならない。憲法はドイツ、軍隊は英国、財政とマナーはフランス、そして洋服は英国…

桐野夏生著「女神記」を読んで

照る日曇る日第228回次々に新しい活動の領域を開拓している気鋭の著者によって、「古事記」の解体と再構成、語りなおしが敢行された。ここでは「古事記」における神話的な伝承と言葉が、現代にも通底する男と女、女と男のかかわりあいの生々しい対立とぎ…

平川新著「開国への道」を読む

照る日曇る日第227回小学館の日本の歴史もそろそろ大詰めに近づいた。今回は19世紀の江戸時代を取り扱っている。 本書ではまず西欧、ロシア、米国などが日本に押し寄せてくる環太平洋の時代のなかにあって、露西亜との北方領土画定のせめぎあい、大黒屋…

オッフェンバックのオペレッタ「ジェロルスタン大公妃殿下」を視聴し

♪音楽千夜一夜第56回オッフェンバックのオペレッタ「ジェロルスタン大公妃殿下」を衛星放送で観劇しました。これはパリのシャトレ座における04年12月のライブです。シャトレ座といえば昔パリ管の指揮者で売り出し中だった、まだ若手か中堅時代のダニエル・…

メンデルスゾーンの代表的作品「MENDELSSOHN THE COMPULETE MASTERPI

♪音楽千夜一夜第55回毎度おなじみ超廉価のソニーBGMグループの全30枚組オムニバスを聴き終えました。なんでメンデルちゃんなのかといいますと、今年は彼の生誕100周年にあたるのでこういう記念盤がぞろりと発売されるのです。有名な「イタリア」と…