蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

鉄腕アトムと坂本選手と谷川選手


バガテルop87

なぜだかNHKで「鉄腕アトム」の番組をやっていた。いろんな人がいろんなことを述べていたが、坂本龍一が、「手塚治の最大の特徴は曲線の美しさにあると思う」というので、またまたそんな出まかせを、でももしかするとホントかなあ、と半信半疑で「リボンの騎士」の表紙を見てびっくり。
そのすらりと伸びた騎士の足の描線の官能的なまでにデリケートな美しさに三嘆。坂本選手はさすがだと思った。それから手塚治はおそらく美脚フェチだったろう。

せっかく褒めた後ですぐくさすのもなんだが、その坂本選手があまりにも早すぎる自叙伝のようなものを新潮社の「エンジン」に連載しているのはいかがなものか。
鈴木編集長のいつもながらの「目のつけどころのシャープさ?」には敬服するが、こういうものは死ぬ間際の日経の「私の履歴書」か、死んでから第三者が書くものだろう。そうではないかね、坂本君。

それにしても「鉄腕アトム」の主題歌は素晴らしい。これをすこし音程をはずしながら手塚治が歌っている画面を見るとなんだか泣けてくる。作詞は谷川俊太郎だが、これは彼のこれまでのどんな詩よりも素晴らしいと思うのは、私だけだろうか。

紅白の梅を咲かせた古家かな 茫洋