蝶人戯画録

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永井荷風いわく、「画工・詩人・音楽家・俳優などは方外の者なり。」


ふあっちょん幻論第39回 メンズ漫録その17 断腸亭主人紳士洋装論その8


仏蘭西では、画工・詩人・音楽家・俳優などは「方外の者」とみなされ、礼儀に拘捉せざるも之を咎むる者なし。

されば、この仲間の弟子には自ら特別の風俗あり。頭髪を長く伸ばし、衣服はビロードの仕事服にて襟飾りの長きを風になびかし、帽子は大黒頭巾のごときを冠る。

冬も外套を着ず、マントーを身にまとう。眉目清秀なる青年にてその姿ややみすぼらしきが雪の降る夜なぞ胡弓入れたる革靴を携え、公園の樹陰を急ぎ行く姿なぞ見れば、何となく哀れに、また末頼もしき心地せらるるなり。かかる風俗巴里ならでは見られぬなり。


あまでうす曰く、これさながら「ラ・ボエーム」の一場面のごとし。

♪悴む手われもまたミミのマフにて温まりたし 茫洋