蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

カーティス・ハンソン監督の「LAコンフィデンシャル」をみて


闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.93

1997年制作のワーナー映画でロサンジェルス市警内部の乱れに乱れた内情を内側から検証するような警察・犯罪・ギャング映画である。

日本の警察や検察も腐敗堕落の極に達しているかに見えるが、ここで描かれているそれはそんな生易しいものではない。絶対の正義と立身出世を求めて仲間を売ることも辞さない警官もいれば、赤塚不二夫の漫画に出てくる警官のように、かっとなると見境なしに発砲する兇暴なお巡りもいる。極めつけは気に入らない警察官を極秘で暗殺したりする私設テロ組織の長で、こいつがロス市の権力と癒着してよろしくやっているという構図は、恐らく50年代の現実を相当程度に反映したものだろう。

ともかくどいつが正義でどいつが悪なのかすらよく分からないまま、やたらドンパチ銃弾が飛び交い、いちおうの正義の味方がいちおうの悪の権化を背中から撃ち殺して一巻の幕となるが、このあとのロス市警はどうやって組織と市民の信頼を取り戻せたのかが非常に気になって来る「万人が万人の敵である」というホッブス流を地でいくような拳銃無宿哲学教訓映画である。

出演はケビン・スペーシー、ラセル・クロウなどでキム・ベーシンジャーが色っぽいところを見せている。

三人の鼾は全然違う 茫洋