蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

ポール・ハギス監督の「クラッシュ」を見て

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闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.548

 

老いた父親の介護に明け暮れ、他民族の進出がアメリカ人の職場を奪っていると確信する警官マット・ディロンが、救ってしまうのは昨日自分が職務を違反して暴行を加えた有色のインテリ女性。

 

その人種差別主義が嫌でペアを離れた若き警官が、ふとしたはずみで殺してしまうのは、チンピラ盗人の黒人。そこから打ち出の小槌のように繰り出されてくるのは、おのれの出世と引き換えに大事なものを失おうとするロス市警のエリート刑事、妻を凌辱から救えなかった自分を憎み、そのプライドを取り戻そうとあがく黒人映画監督、ささいなことから鍵修理職人を殺そうとして天使に救われたペルシア人……。

 

アメリカの白人や黒人、中国人やイラン人、アフリカ人、プエルトリコやメキシコ人などの混血……、生きるさまざまな民族や混血人たちの間に起こる「衝突」を重層的に描くことによって、この映画は人種のるつぼでもある魔都ロサンジェルスの見知らぬ明日を指差そうとする。

 

 

 

1クラス39名の学生が向かい居る私の最後の試験問題 蝶人