蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

カジャー・ドナルドソン監督の「リクルート」をみて  

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.98

2003年にロジャー・ドナルドソン監督が撮ったアメリカ流の就職活動映画である。

この映画のタイトルは、英語で原義は新兵とか兵隊志願というのが転じて、入社志願や志願者を指すようになった。同名の企業がわが国にあるが、この会社の創業者は本邦初の求人広告会社をつくったときに、あえてこの軍隊用語を使用したのであるが、当時もいまも平和ボケの帝国人民は、戦争とは無関係にこの言葉を平和利用して使っている。

映画の主人公は、あら懐かしやアル・パチーノ。彼はなんと影の軍隊CIAの新人採用教育係という一風変わった役柄で登場し、ほとんどパソコンメーカーのデルに採用が決まりかけていた優秀な新卒のコリン・ファレルを、国家の正義のためというご大層な美名でひっこ抜くのである。

 でもデルとCIAなら、普通はデルを選ぶのではなかろうか。私は富士通だが。素人たらしのアル・パチーノは、なんなく世間知らずの若者をリクルートしてファレルを精鋭に養成するのだが、ここから映画は思いがけないどんでん返しとなって、あれよあれよのクライマックスに突入する。

 音楽はだめだが、脚本がよく練られているので、2時間をそれなりに楽しませてくれるB級映画のB映画である。


もう生きていても仕方がないのと母親が言う 茫洋