蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

ある晴れた日に

「ああ、中央線の空を飛んであの子の胸に突き刺され!」
と、いまさっき友部正人が叫んでいたね。

ちょうど20年前の昨日も東京は晴れていた。

その日、渋い2枚目俳優のケイリー・グラントが82歳で死んだ。

ちょうどその日、同じ英国生まれの女優ジェーン・バーキンが来日していて、私は帝国ホテルに滞在していた彼女からそのニュースを聞いたのだった。

ジャパンタイムズを両手で握り締めた彼女は、猛烈な勢いで、フランス語ではなく英語で彼女とグラントとの思い出について語ってくれた、ようであったが、残念なことにどういうエピソードであったのか私の貧弱な語学力ではまるで理解できなかった。

彼女の名前はBirkinなのに、私が間違えてホテルのレシートにVirkinとサインしたのを見ると、彼女は何度も「ヴウワーキン」と発音しながら、ミックジャガーそっくりの顔をして、私を横目で見て首を振った。
ことを思い出した。