蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

ジャン=ジャック・アノー監督の「セブン・イヤーズ・イン・チベット」をみて

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bowyow cine-archives vol.653

 

 

最近どんどん耄碌してきて、これはてっきりベルトリッチの映画ではないか、それにしては劇伴音楽がないなあと思って見物していたのだが、別の監督の作品だった。

 

しかしもう少し眺めていたいヒマラヤ山脈の絶景をわずか数秒でカットしてしまう贅沢さはなかなかの思い切りで、おそらく莫大な製作費がかかったことだろう。

 

原作はかのアイガーを初登頂したオーストリアの登山家らしい。国の威信を賭けて争うオリンピックやw杯のごとき登山映画かと思って眺めていたら、後半は彼が若きダライ・ラマの付き人となって、さながら父親のような役割を果たす思いがけない展開となる。

 

そして最後は「悪辣非道な中華帝国」が、平和な小国チベットを蹂躙する、という血なまぐさい国際政治の世界に突入するのであるが、原作者とダライ・ラマが現在もなお親しい友人であるというクレジットを読んで、どこかほっとした気持ちになるのは私だけではあるまい。

 

主人公のブラビの演技も、後半だんだん快調となり、彼が息子との絆を回復して共にヒマラヤの高峰を征服する場面はやはり感動的である。

 

 

なにゆえに同じイタリアンが今日休むお向かい同士のお店なのに 蝶人