蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

西瓜の味


バガテルop106

今日も今年10回目の海水浴から帰ってきました。毎日のように少し昼寝をして、午後から1時間だけ海水浴に行くのです。そして帰りには逗子池田通りのウララ果物屋さんで大きな三浦西瓜を買ってきて食後にいただきます。げに、西瓜ほど美味しい果物は、ありません。

その定番に加えて、到来物の甘い甘い桃だの甲州葡萄などもどんどん食べていると、家の外ではニイニイ、アブラ、ミンミン、それに時折は関西から北上してきたクマゼミもやってきて、小さな庭のまわりでいつまでも恋の混声合唱を繰り広げています。

うちの中には1台もエアコンはないけれど、涼しい風が陋屋に吹きわたり、東の窓一面に2階まで這いあがった天青と沖縄雀瓜が強い日差しを遮ってくれます。

世間ではちかぢか政権が交代するとか、元アイドルがジキルとハイドだったとか、地震が明日やってくるとか、そのうちに世界が終焉するとか、ラチもなくラアラアと騒いでいるようですが、いったいそれがなんだというのでしょうか? われらは生きる間は生きており、死ぬるときにはみな死ぬのです。

後で振り返ったときに、恐らくはあのときがいちばんだったと思えるような人生の小さな夏休み、平穏無事で格別なことが何ひとつ起こらないこのささやかな仕合わせを、朝な夕なにじっとかみしめているところです。


♪西瓜ほどおいしい果物はないいずれは君にも分かるでしょう 茫洋