蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

文化学園服飾博物館にて「ヨーロピアン・モード展」を見る


茫洋物見遊山記第58 回&ふぁっちょん幻論第63回


これぞ欧州200年モードの決定版。18世紀のロココ時代から、モーツアルトの時代のローブ・ア・ラ・フランセーズ、19世紀の英国のデイドレス、20世紀前半のイブニングドレスを経て、1969年のマリークワントのエプロンドレスまで全時代の女性のファッションを一堂の元に俯瞰できます。

特に興味深いのは1910年代の曲線的有機的アールヌーボーが1920年代に突如アールデコの直線的鋭角的モダンへのルビコン渡河的に豹変するところ。服飾史におけるアールヌーボー時代は1900〜1910年、アールデコ時代は1910〜1920年というわずか2decadesで区分されるそうですが、胸は豊満に、ウエストはぎゅっと絞り、横から見ると大きなS字型フィットアンドフレアが、ウエストを絞らないシンプルなミニドレスへと180度、いやそれ以上の路線転換を遂げる。これほど短期間に女性の服飾のありようが激変したことは古今未曾有だったのではないでしょうか。そしてこの構造改革の延長線上に、シャネルのあの見事なビジネスウイメンズスーツが誕生したのです。

また先日の英国ロイヤルウエディングの記憶もわれらの耳目に新しいところですが、本展の歴代ウエディングドレスの特別展示も見ごたえあり。来たる6月11日まで開催中です。(日曜祭日は休み)


傷ついた脳を持って産まれし少年をペロペロ舐めてムクよ癒せ 茫洋