蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

ジョン・ギラーミン監督「タワーリング・インフェルノ」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.51

1974年にワーナーとフォックスが制作し、ジョン・ギラーミンに監督させた2年前の「ポセイドン・アドヴェンチャー」に続くパニック大活劇映画です。

サンフランシスコに完成したばかりの超高層ビルが火災になって爆発し、まるで地獄の炎のように激しく燃え盛ります。その業火を、貯蔵されている水タンクを破壊していっきに消化をはかるところがこの映画の最大の見所です。

主演はビルの建築家のポール・ニューマンと消防隊長のスティーヴ・マックイーンで、お互いに立場の違う2人が英雄のように超人的な活躍をして被害を最小限にとどめようとするのですが、それでも多くの犠牲者を出してしまいます。

事故の原因は主に電気系統の施工ミス。そのほか建築家が指定した安全防災対策を建築施工主のウイリアム・ホールデンとその娘婿のリチャード・チエンバレンが業者からわいろをとるために盛大に手抜きしていたのが致命傷になったのですが、この種の欠陥工事はいまでも世界中で行われているのではないでしょうか。

そもそもガラスと鉄でできた超高層ビルをサンフランシスコや東京のような地震多発地帯におったてるのはこの映画の中でマックイーン隊長が警告する以前の大問題で、いくら森ビルの会長が偉そうなことを言っても、いずれ関東大震災並みの大地震がやってくればなんとかヒルズもなんとかタワーもたちまちタワーリング・インフェルノになるに違いありません。金に目がくらんでせっせと天に伸びるバベルの塔が絶対に安全なんて、どの神様にも請け合ってくれないでしょう。


ガーシュインがラベルなんかに学ぶものはなかったように君も 茫洋