蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

鎌倉国宝館で「薬師如来と十二神将」展を見る

茫洋物見遊山記第44回&鎌倉ちょっと不思議な物語第231回

鎌倉の大町の辻薬師堂に置かれてきた薬師如来と十二神将像の補修が終わったことをことほぎ、それらを一堂に集めた展覧会がひらかれています。14年の歳月をかけて修理された仏像たちはこころなしか嬉しそうな顔をしてわたしたち見物人を睨みつけておりました。

展示品のうち覚園寺の「十二神将立像」など4件10点が国県重要文化財に指定されています。インド、中国、そしてわが国の仏教や民間信仰、十二支などの諸宗教思想が混淆されてデザインされた護教の守護武将たちは、思い思いの姿勢でおのれの献身のほどを見せつけていますが、建築物としての価値や完成度は、平安、鎌倉、南北朝、江戸時代と下るにつれて下がってくるようで、芸術の進化が時代と比例しないことのよき見本となっています。

しかしさらに屁理屈を拡大して、現代美術や最新の超高層ビルジングなどまるで無価値で、美術も書も芸術も建築も古いものほど値打ちがあるとすれば、ではその古さの優位性や芸術的価値をどこまでさかのぼれるかという話になりますが、とりあえずは縄文の土器や出雲大社で行き止まりということになるのでしょうか。

それはともかく江戸より室町、室町より鎌倉とあきらかに品が下る十二神将像を眺めながら、今日の私たちの時代との隔離隔絶を思ったことでした。

*同展は11月23日まで開催中。

芸術の価値とは内蔵する真善美の深さと大いさで測られる 茫洋