蝶人戯画録

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ブリジット・バルドーの「気分を出してもう一度」を見て


闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.42

ミシェル・ボワロン監督のどうしようもなく下らない1959年のコメデイ作品。ゆいいつの取り柄は当時売り出し中のBBの軽やかなマンボのステップとキュートな美貌と肉体を拝めることくらいか。

しかし当時は次元の低いどたばたやお笑いやスリルトサスペンス?を振りまいてよしとするこの種の映画が、世界の映画界の主流であり常識だった。そしてこの「映画はこうしたもの」という旧態依然たる常識を果敢に打ち破ったのが、バザンやトリュフォーゴダールロメールなどのヌーヴェルバーグだった。

1963年に製作されたゴダールの「軽蔑」と、本作におけるBBの描かれ方の違いに驚かない人はいないだろう。
ある意味ではそんな映画革新運動の絶好の標的あるいは反面教師となった点でのみ歴史的な意味を持つ映画といえるかもしれない。

原題は「VOULEZ-VOUS DANSER AVEC MOI?」。これを「気分を出してもう一度」と意訳した映画配給会社のセンスは素晴らしい。


どんな下らなき映画にもひとつ二つはとりえがあるもの 茫洋