蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

西暦2010年霜月茫洋狂歌三昧

kawaiimuku2010-11-30


♪ある晴れた日に 第82回



青山の高級マンションのバスの中白き骨となりし美人モデルよ

千人の魔女連行し拷問したりガンビアのジャメ大統領

2つのアジアが遊曳する地政学的亜細亜と観念的亜細亜

芸術の価値とは内蔵する真善美の深さと大いさで測られる

政治家の使命とは国民の利害から遠ざかって普遍の正義に殉ずることである

凡庸の価値を知らない人は非凡の価値も理解できない

振りさけ見ればいがぐり右目に落下して棘とげ刺さりし小関少年今頃どこでどうしているか

ガーシュインがラベルなんかに学ぶものはなかったように君も

美しい日本は心でひそか思うもの「美しい日本」などと大書する恥ずかしさ

ランボオが海の彼方に見つけた永遠をラング=ゴダールの「オデッセイア」に見る 

N響の下らぬ演奏に熱狂す見知らぬ人のうらやましくもあるかな

どんな下らなき映画にもひとつ二つはとりえがあるもの

正論を清く正しく吐く人のなぜかそれほど美しくはなし

いくらお前が完膚無きまでに論破したつもりでも論理で人は変わらないよ

屁の如き指揮者どもが今日もわれらの魂を汚辱している

あえて付点を打たず音の泉を溢れさせたりクライバー

生きながら死んでゆく日々わたしも日本も

精神を病める美女ヴァージニアを玩具と弄ぶ商魂醜し

その夏の日少年はアイスを嘗め嘗め御仏を見上げた

あほかそれがどうしたせやったらわいにどないせえちゅうねん

お母さん今日シャンプーしてくださいなとひげそりしてもらいながらいう息子

さりとてという言葉が嫌いなりさりとてなすすべはなけれど

なのでという言葉が嫌いなり首のない人間を見る心地して

秋冷霜に堪え咲き誇るなり薔薇一輪

馬齢なら俺だけで十分じゃと茫洋いい

裏銀の裏を見せつつ飛びにけり

今は昔烏瓜色の頬したる少女ありき

平成に虚点をうがつ男かな



鮠三尾ひしと寄りあう寒さかな 茫洋